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 心細いなんて思ってない。

 2人を巻き込んだらダメだ。これは私が解決すべき問題。



 さあ、反撃の始まりだ。

 向かう先は1つだけ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「哲」

「なに」

「何で渚に意地悪するんだよ」

「してないけど」

「だって!!!」


 日浅の拳が壁をたたく。


「仕方ないじゃん」

「何がだよ!」

「ハルには本当に感謝してる。だけど」

「哲?」

「サガシモノが見つかるかもしれないから」



 掴み損ねたあの手を今度こそーーー









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 








「何つう顔してんだよ」

「!!!」


 驚いた。

 扉から出るとすぐ目の前に鳥木先生が立っていたから。

 しかも仁王立ちにしかめっ面で。こわい。こわすぎる!!!


「情けねえ顔だな」

「元々こういう顔です」

「そうかよ」


 否定してください。


「あの、行くところがあるので失礼します」


 あの子に。

 今すぐ聞きたい。



 鳥木先生を横切り、向かう。




「どこに行く?」




 つもりだった。掴まれた腕と連動して動きが止まってしまう。


「先生には関係ないです」

「ある」

「ないです」

「私の忠告を覚えてるか」


 忠告…。



『ここの奴等は教師も含めて信用するな。信じられるのは自分だけだ。自分だけは自分のことを絶対に裏切らないからな』




「他人を信じるな、ですか」

「そうだ。覚えてるのに守らねえとはお前も中々の悪ガキだな」

「信じてないですよ」

「秘密だ」


 え?


「お前は、この学園の秘密そのものだ」

「…何のことでしょうか」


 もしかして、私が女だってことは教員の鳥木先生にも共有されてる?

 だとしたら、こんなところで鳥木先生こそ不用心過ぎる。誰に聞かれるかも分からないこんな場所で。


「私はお前の味方をしたい。だけど私のことも信じるな。他の奴も。特に」

「鳥木先生?」


 後方から聞こえてきた声に鳥木先生の体が跳ねた。だけど一瞬でいつもの表情に戻り、


「早川…。なんだ監視か?」


 怪訝な声で問いかけた。


 早川先輩?何でこんなところに…? 

 だけど私の質問は問いかける必要がなくなった。


「何でこんなとこにいんだよ」

「可愛い後輩を迎えにきたんですよ」

「…後輩?」

「そうです。吹奏楽部の後輩くんですよ」

「お前本当に昔からあいつの金魚の糞だな」


 あいつ?

 こいつ、ではなく?

 いや待てよ。昔からって何?


「…先生こそ、もう少し女性らしくなった方が良いですよ。その男らしさはいつか身を滅ぼします」

「うるせえな」


 よく分からないけど面識があるみたいだ。

 早川先輩は一組だし、バスケ部にも所属していない。接点があったことに驚いた。

 担任の先生って年度ごとにシャッフルされたりするのか?


「あの、早川先輩と鳥木先生はお付き合い長いんですか?」

「いやそうでもない」


 なんだそれ。


「お前どっか行けよ。今こいつの指導してっから」


 シッシッと早川先輩を手で追い払う仕草をする鳥木先生。


「生徒にそういうことするのってどうなんですかね」

「おまえ気にしねえだろ」

「いや、というか日向に用があるんです」

「知るかよ。後で向かわせる」

「…わかりました。部室で待ってる。日向」


 いやいやいや!!まて!私の意志を聞いてないぞこの人たち!!?尊重!意思の尊重を所望します!


「いや!今聞きますから!」

「先生が命令してくる。仕方ないだろ」

「それこそいつも言ってる生徒会の権限とか使ってくださいよ!!!」

「…は?」



 鳥木先生の低い声が静かに響いた。


 温度が下がったかのような錯覚を覚えた。二人の纏う空気が、明らかに変わった。




 私なんか不味いこと言った?







「…生徒会?」




 ああ、これ。



 何かまたややこしいことに巻き込まれてる感じだ。

 慣れってこわいね。直感が作用するようになってきた。もう少し早いタイミングで作用してくれ。

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