7-3 依頼
お兄ちゃんとの生活を初めて数ヶ月ぐらいが経った。お金が無いわたしはお兄ちゃんの泊まっている宿に相部屋させてもらっている。
お兄ちゃんはわたしに生活費を稼ぐ手段として冒険者を薦めてくれた。さらにわたし一人では不安があるからと、一緒に依頼を請けてくれる。
請ける依頼は、薬草集めや小動物の狩りなどわたしでも出来るようなものを上手く選んでくれる。おかげで少しずつ冒険者の仕事に慣れていくことができた。優しいお兄ちゃんにとっても感謝です。
ほんとうはいろんな事をやってみたかったけど慣れるまでは我慢しなきゃ。でも、それは別としてお兄ちゃんと一緒に過ごす日々はとても楽しかった。
一人っ子だったわたしは兄弟にあこがれていた。それがこんな形でお兄ちゃんが出来るとは思っていなかった。もちろん本当のお兄ちゃんでは無いけれど、それはほら、重要なことじゃない。わたしにとってはあたらしい家族だった。
わたしはドジだからいつも失敗ばかりしている。それをみてお兄ちゃんは迷惑そうな顔をするけれど、結局いつもわたしを庇ってくれていた。わたしはそれが嬉しくて、それで十分だったのだ。
冒険の依頼は冒険者ギルドで請けて、その報告もそこでしている。朝一番でギルドに行って出来そうな依頼を探す。依頼があったらそれをやるし、やれそうな依頼が無いときは、街を散策したり、広場に行って冒険に必要なことをお兄ちゃんから教わった。
そうやって何度もギルドに通っているば、何度も出会う人もいるし、気がつけば仲良くなっている人もいる。
その中の一人がカイロウさん。
カイロウさんはお兄ちゃんよりもさらに年上で、ベテラン冒険者だって感じ。請ける依頼も私たちがやる物より難しそうなものを選んでいる。
でも今は一人で冒険しているらしくて、複雑なものは出来ないって言っていた。
そんなある日のこと。きょうの依頼が終わって宿屋の食堂で夜ご飯を食べていたとき。カイロウさんがふらっと宿にやってきた。
私たちの姿を見つけると同じテーブルに座って食事を注文する。
「あいかわらず仲がよろしいことで」
「そうなんです。もう頼りっぱなし。速く立派な冒険者にならなきゃ」
「なぁに。リリーさんならすぐ立派な冒険者になれますぜ。俺の目に狂いは無いからな」
「それで。俺らになんか用なのか?」
お兄ちゃんちょっと不機嫌な感じ。ご飯に嫌いなものでも入っていたのかな。カイロウさんが来たのには驚いたけど、みんなでご飯食べた方が楽しいのに。
「お兄ちゃん。ご飯は楽しく食べようよ」
「おっ。良いこと言うねぇ。イェルムさんよ、ご飯は楽しくだぜ」
「やっかい事に巻き込まれるのがいやなんだよ」
「そんな怖い顔するなって。いい話なんだからよ」
「いい話って何ですかー?」
「おい、こいつの話は聞くなって」
「いいじゃない。聞くぐらい」
「そうそう。聞くだけならタダだからな」
「チッ。仕方ねぇ。聞くだけだからな」
「話が早くて良いねぇ。おーい、エールをくれ」
カイロウさんはお酒を頼むと、それを飲みながら話し始めた。
何でも簡単な割に高額な報酬が貰える仕事があって、それの手伝いをしてほしいって事だった。
頼まれた品物を別の所まで運ぶだけ。ただ、目的地がちょっと遠いので時間が掛かるし、依頼主は急いでいるらしくて出発は明日だって事ぐらい。
お兄ちゃんは街から出るのがいやなのかやる気無かったみたいだけど、わたしは新しい街に行けると思ったから、それをやりたかった。
イロイロ話し合った結果、お兄ちゃんと一緒にこの依頼を請けることになった。報酬とか細かいことはカイロウさんとお兄ちゃんに任せてある。
わたしはただ新しい街のことに思ってワクワクしていれば良かった。




