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TRPGリプレイ小説 「国境を越えて」  作者: えにさん
第四章 隠された牙 【キース】
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4-4 接近

 ターゲットが一つの依頼を請けた。隣国へ品物を密輸する内容だ。

 いろいろ障害はあるかも知れないが、ターゲットが街から長期間離れるメリットは大きい。もちろんこの依頼の中でチャンスがあるとは限らない。しかし可能性は低くないし、不慣れな隣国で行動するとなると、それだけでチャンスが増えることだろう。

 そう考え、そして同じ依頼を請けることにする。結果、簡単に許可が出た。素性の知れないものを雇うとは。いや、今回のように密輸となると逆に扱いやすいのかもしれん。

 密輸など素性の良い者が受ける仕事では無い、か。

 どちらにしても、都合の良いように事は推移している。後はジックリその時が来るまでまで待つ。それだけだ。


 暗く小さな部屋の中で、自身の装備を細かくチェックする。もちろん常日頃から道具は最良の状態を保つよう、細心の注意を重ねているが、今回のように周囲の目がある中で行動する以上、その間は隠し持っている装備のメンテナンスが出来なくなる。

 いざその時になってから道具の不備で失敗しないよう、一つ一つ丁寧に確認し、それぞれの場所に仕舞っていった。


 定刻通りに集合場所に到着する。集まったメンバーは、予想していたより多かった。これだけ人数がいると纏まりにくいのだが、それを承知で集めたらしい。

 毒をもって毒を制す。今回の依頼には裏切り者がいる可能性が高いのだろう。これだけ人がいれば裏切り者も複数になる。そうすればそれらが互いに牽制し合い、結果として裏切りが成功しなくなる。それを狙っているのかも知れない。


 実際こちらとしてはやりにくくなっている。しかし、もとより今回良いタイミングが来るとは思っていない。そう言う意味で焦りは無かった。とにかく気配を押さえ自分の真意がバレないようにしなくてはならない。

 当然のことだが、メンバー全員の能力をチェックする。身のこなしや外見だけでもさまざまな事を知ることが出来る。出来れば戦闘の一つもあって貰えるとさらに判るのだが…。それはおいおいだな。これだけの人数を護衛に雇うって事は、襲撃を前提にしているからだろう。

 ある意味予想通り、メンバーはそれぞれ独自に雇われている。幾つかのグループに分かれて行動しているからこちらを気にかける者はいない。気にはしているのだろうが、積極的に話しかけてくる者はいなかった。


 運搬していく道中は今のところ何の障害も無かった。道は狭かったがそれを広げる役と運搬する役が決まっていて、ただ見ていれば良い。

 もしも何らかの襲撃があった場合はすることもあっただろうが、人にしろモンスターにしろ襲撃らしき事は無かったのだ。

 そして、今のところ行動するチャンスは巡ってこなかった。まぁ、何も起きていないのだから、当たり前のことだが。


 やがて一行は山間の道を移動していく。崖の上に何人かいることに気づくが、今はまだ何もしない。


「右壁上方に気配。確認します」


 ふむ。思っていたより速く気づいたな。何人かが弓をかまえるのとほぼ変わらずに、頭上から矢が降りかかる。

 狙いは馬車と、弓で応戦した者。それならここで無理する必要は無い。襲撃者からの死角を見つけスルリと移動する。

 襲撃者の数が少ない。まずは小手調べという意味合いなのか。この数ではこちらを焦らせるくらいしか役に立たない。


「この場所で戦うのは分が悪い。頭上に注意しつつ前進する。この先に少し開けた場所がある。そこで迎え撃とう」


 良い考えだとは思うが、それに追従出来る者がどれだけいるのか? 結局移動は遅々として行われず、弓の打ち合いが続いていた。


「僕たちがしんがりをつとめます。皆さんは先に行ってください」


「リーブ。この角度と距離ではこっちの弓は当たらないわ」


「それは判っているよクーナ。しかし相手が好きに射かけられないよう、多少の反撃が必要なんだ。大丈夫。向こうも射角が悪いし人数も少ない。焦らず対処すればなんとかなる」


 自身を狙っている襲撃者はいない。それは気配でわかる。偶然でも良いからターゲットに矢が当たらないだろうか。それにタイミングを合わせて致命的な一撃をかぶせる。現在の位置、角度なら誰にも気づかれずやれる。

 だが、そんなことにはならない。ターゲットの能力を考える。これだけの距離があれば不意打ちでも無い限り、躱すことは用意だろう。実際かなり余裕を持って、矢の軌道から体をそらせている。

 しばらく掛かりそうだな。もう少し様子を伺うことにしよう。などと考えている間に戦闘が終わった。投石による攻撃が襲撃者に強いインパクトを与えたようだ。戦意を失いちりぢりに逃げ去っていった。

 弱い。あの程度の強さなら今の二倍、いや三倍の戦力が必要だった。だが・・。あっさり戦闘が終わったのは、投石のおかげだ。それが無ければ長引いていた。


 なるほど、襲撃者の人数はこちらの倍以上いるに違いない。後退しながら戦闘を継続させ、あるいは断続的な仕掛けによって消耗させる狙いだったのだろう。それが予想外の損失を受けたことで撤収した。そんなところだ。

 たしかにあの威力、脅威を感じる。もとより戦う気は無いが、何かの偶然にターゲットを庇うとも限らない。注意は必要、だが、問題ない。

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