貴賓
気づけばあれから、二日が経った。
シャンティの行方は、いまだに掴めないままだった。父からは「余計なことをするな」と釘を刺され、独自に動くこともできず、ナッシュはただただ苛立ちを募らせながら日々を過ごしていた。
(シャンティ……)
頭からシャンティのことが離れず、仕事に集中出来ない自分を無理矢理律し、表向きは、いつも通りの団長として振る舞っている。
そんな朝、詰所に出勤するなり、ナッシュは思いがけない命令を受けた。
「団長、本日は通常業務ではなく、王座の間への出頭が言い渡されています」
副団長のルイが、いつになく硬い表情で告げてくる。
「王座の間? 何の用件だ」
「他国からの貴賓が来訪されるとのことで、主だった騎士団長・魔術師団長は、揃って出迎えに立つようにとの王命です」
寝耳に水の話に、ナッシュは思わず眉をひそめた。
「聞いてないぞ、そんな話」
「急遽決まったことのようです。お陰でどこもスケジュール調整で大変みたいですよ、かく言うここもですけど」
「だろうな。」
「じゃ、後はやっときますんで、早速行ってくださいね」
釈然としないまま、ナッシュは正装に着替え、王座の間へと向かった。
広間には既に、騎士団の各隊長、他の魔術師団の幹部たちが集まっていた。次兄のラルロも、騎士団副団長として、涼しい顔で列に並んでいる。
「兄上も、聞いていたんですか」
「いや、俺も今朝知らされたばかりだ。まぁ俺は討伐中の団長のただの代理だが。」
ラルロは短くそう答えるだけで、それ以上の詮索を許さない空気を纏っていた。
ナッシュは列の中に加わりながら、内心で苛立ちを募らせていた。こんなことをしている場合ではない。今この瞬間にも、シャンティがどこかで不安な思いをしているかもしれないというのに。
(くだらない…)
これほど大掛かりな出迎えが必要な、貴賓が誰であろうがどうでもよかった。こんなことなら通常業務のほかがまだマシだ、そんなことを思いながら、整列を命じられると、じっとその場に立ち尽くしていた。
周囲の空気は、いつになく張り詰めている。単なる社交的な訪問にしては、警備の数も、居並ぶ顔ぶれも、あまりに物々しかった。
(さっさと終わらないもんか…)
膨れ上がる疑問と苛立ちを押し殺しながら、ナッシュは正面の大扉が開かれる瞬間を、ただじっと待ち続けていた。




