俺は魔法使い
「なんで、残ったんだ」
じいさんは悲しそうな声でそう言った。
「ここが好きだったから……」
俺はあることが頭に浮かび、慌ただしく手が動く。
「もしかして、俺が邪魔だったか? だから、町に行けばいいって」
「違う。俺は罪を犯した」
「今は今。過去は過去じゃないのか」
じいさんは、握りこぶしを作っていた。
「町に行けば魔法が使えたかも知れない」
「確かに」
「こんなところにいるべきではない。彼も言っていただろ」
じいさんは何を悩んでいるのか目を泳がせた。
「何度もこの家に戻ってしまった時、俺のせいだと、はっきりそう思った。罪人はこの森から出られないから、その効果がかかってしまったとそうわかった。だからこそ、せめて彼が来るまでは安全な場所を提供しようとしたんだ」
なんで、じいさんがここまで俺を離したいのかよくわからなかった。
「俺が魔法を使いたいって思ったのは、1人で生きていけるからだ。自分で火が出せれば電気、ガスを必要としない。水が出せれば、生きて行けるし天候によって作物が左右されることも少なくなる。人間は支え合わないと生きていけない。そんなこと言うけど、いつでも人間はいがみ合う。そんなのは嫌だ。それなら、1人で生きれればいいってそう思ってた。だから、魔法が必要だってそう思ってただけだ。どうやら、この世界の魔法は期待外れだし、町に行く必要はない」
ここまで話してもじいさんは納得して無さそうだった。固く握られたこぶしはまだ体の横にある。
「じいさんと暮らしてて初めて支え合うってことを知ったんだ。まあ、じいさんは俺がいなくても済んでたんだから何言ってんだって思うかも知れないけど。だから——」
じいさんの手を取る。
「ここに居させてください」
少し握った手が緩んだ気がした。
「お前の、お前のその言葉が魔法だな。こんな俺と暮らすために言葉を尽くすなんて」
それから、じいさんの頬が緩んだ。
「お前が飽きるまでここにいていいぞ」
それから、2人で笑った。
俺はここに、住み続けている。ちょっと変わったことと言えば、本を仕入れた。魔法の本だ。俺にも工夫したら何か作れそうで、今は木の束を楽に運ぶ手袋を作ろうとしている。
俺のそばにはじいさんがいる。
俺はこの世界で魔法使いに成れたんだ。
他人から見たらひどく退屈かも知れない。でも、俺には魔法のように輝いている日々だ。
明日はどんな魔法ができるか、今からワクワクする。




