35 智朗、再びのエレベーターでアクション2
ドガガガガ! ギャリリリリ! キバン! ガギン!
ドゥルルルルルル! モニュ! バシーン!
ガリガリガリ! バルルル! バシュ! ピチャ!
非常に騒々しい。
これは俺と尾崎大佐の戦闘音である。
尾崎大佐の超振動軍刀による斬りつけと、チハからの砲撃で息をつく暇もない。
バール+5とトーワちゃんの盾+5で応戦しているが、怪人である尾崎大佐の剣戟を防ぐのは骨の折れる作業であり、隙を狙ってチハが砲撃してくるので非常に不利な状況である。
シュッ!
俺はチハからの砲撃だけでも無効化しようと上の階段へと跳躍した。
すると尾崎大佐はチハを見て口を開いた。
「チハ」
「承知しましたー」
バシュ!
何をするつもりかとチハの様子を見れば、キャタピラからスパイクが突出した。
ゴガガガ! バガン! ガララ
壁を走った上、下からの体当たりで階段を破壊し、俺への射線を確保するチハ。
カッコイイ。
キバン!
「ぐわー」
壁を走るチハのカッコよさに見惚れた俺は砲撃を防ぐのが少し遅れた。
体勢の崩れた俺に対し、いつの間にか俺より上に移動していた尾崎大佐の軍刀が襲い来る。
ギャリイイイ!!
「ぐうう!」
バシッ!
何とかバール+5で防御し、尾崎大佐の体を押し返すことに成功した。
尾崎大佐は回転し、壁から階段へと移動したチハの上へと降り立った。
ピチャ
……なんだ?
俺の顔、マスクとサングラスの隙間に、何か液体が付着した。
指先で拭う。液体に色は無い。これはどこから来た液体だ?
見れば尾崎大佐の軍服が何らかの液体で湿っていた。
体液の分泌。怪人。攻撃。
まずい。
俺はすぐさま自身の状態確認を行った。
状態:被逃走阻害
逃走阻害は山羊の特性だ。山羊は特性を発動しっぱなしのようだ。見た所、他に状態異常は受けていない。
ということは、これは攻撃では無かった?
尾崎大佐は怪人であるし、何らかの体液を分泌してそれを攻撃に使ってきてもおかしくないと思い、焦ったのだが。杞憂であったか。
「……」
「……」
様子を伺うが、何故か尾崎大佐もチハも動かない。
やはり攻撃か。
皮膚への接触で状態異常を引き起こすものでないとすれば、この液体自体に殺傷性能があるのかもしれない。だが痛みや皮膚の溶解が見られないことから、酸ではない。
「クン」
液体をぬぐった指先を臭ってみる。
「……!」
何故かその時、尾崎大佐の体がビクリと揺れた。
強い刺激臭。
これは……、アンモニア?
「ぬう……」
アンモニアは生体において有毒であるが、俺の状態を見る限り、毒性を利用した攻撃では無さそうである。アンモニアには様々な用途がある。主に化学肥料として使われ、工業用としての用途も広く、樹脂、染色用、医薬品、有機合成に用いられたりする。
果たして、尾崎大佐はどんな使い方をするつもりであろうか。まさか肥料として俺に与えたわけではあるまい。
待て、アンモニアは水溶液として使用されることが多い。匂いはアンモニアだが、この液体には他の成分も混じっているのかもしれない。
ここは味も見ておこう。
舌がしびれたりすればそれが毒であるとわかる。
そして、もしこれが毒であったとしても、俺には高い毒耐性がある上に、治療スキルもある。
何故か尾崎大佐もチハも動こうとしないし、これで相手の攻撃方法をひとつ知れるのは大きい。
「……」
マスクを持ち上げ、指先を口に運ぶ。
キバン!! ドガァ!
「ぐわー」
もう少しで舐められるというところでチハの砲撃。
「止めろー」
バルルル!!
チハが気の抜けた声で抗議しつつ、後部にある機関銃で攻撃してくる。
シュバッ!
チハの声を聴き、思い出したかのように動き出した尾崎大佐が跳躍し、襲い掛かってくる。
「ッ! ッ! ッ!」
ギャリ! ギャリ! ギャリ!
「うおおおお!?」
尾崎大佐からの、これまでになかった執拗な攻撃。尾崎大佐の顔は無表情ながらも、強い殺気を放っているように感じられる。
明らかに、尾崎大佐は俺が液体を舐めるのを止めようとしている。
この液体の正体を知られては困る何かがあるらしい。
ひょっとして、後の攻撃の布石だったのだろうか。
何か別の液体と混ぜることで殺傷能力を持つ液体なのかもしれない。
警戒された時点で最早布石とはならないと思うのだが。
しかし、こうまで抵抗されては仕方が無い。
絶対に舐めてやる。




