25 智朗、男心をくすぐられる。
ゴオオ……
ホームに電車が入ってきた。電車の車体の色は赤く、古いものに見えた。
キィィィ……
プシュウウ
ホームに電車が止まり、俺の居る方とは反対側のドアが開く。
電車にはアタッシュケースを持ったスーツの男達が数人乗っていた。
電車から降りた男達はホームを歩いていく。
電車が去るのを待っていたら男達を見失いそうなので、俺は電車の上を飛び越えた。
隠密スキルは発動しっぱなしなので、多分見つかることは無いだろう。
ツカツカツカ
男達をつけていくと、ホームの終わりに下り階段が見えた。さらに下があるようだ。
男達は階段を下っていく。
階段を下りきり、通路を進んでいくと少し広いところに出た。
そこには大きなシャッターが下りており、その脇に小さな扉と窓口があった。
男達は窓口へと歩き、中にいる警備員にカードのような物を見せた。
すると警備員が扉を開けた。男達が扉へと入っていく。
俺は気づかれないように、扉の上の方を抜けた。
扉を抜けた先にはエレベーターが何基も並んでおり、その内の一つに男達が乗り込んでいく。それに続く俺。
エレベーターはそこからさらに下へと降りていく。
コォォォォ……
風の音が聞こえている。
エレベーターから出るとそこはデパートの吹き抜けホールのようになっていた。
男達はエレベーターから出ると各々の目的地に向かって歩いていった。
上を見上げる。
各階の手すりと太い柱、あとは移動用のエレベーターが見える。各階には通路や扉があり、いくつも部屋があるようなのだが、明かりがついているところは一部で全体的に暗い。
天井は見えており、上方向にはそれほど大きくないようだが、手すりまで移動して下を覗き込むと、同じような作りがずっと下まで続いていた。
「貯水用の大穴みたいだな」
実際それを改造したのかもしれない。
とりあえず、トゥエルヴの本拠地に侵入できたようである。
どうしてくれよう。
ここの天井を崩落させてやろうか。
いや、本拠地とはいえ、ただの一拠点である。
ここを崩壊させたところで、組織は本拠地を移転するだけであろう。
やはり組織の幹部か何かを見つけて俺のいいなりにして、内部から崩壊させるのが良さそうである。
「適当に構成員を捕まえて幹部の居場所を吐かせるか」
***
手すりから手すりへ飛び移りながら下へと降りていく俺。
「この階か」
手すりから床へ降り立つ。
適当に捕まえたレベル1の構成員に聞いたところ、組織の幹部の一人である大西博士という人物が実験室にいるはずとのことであった。
大西博士と言えば確か、イグアナ顔が車の中で話していた人物の名前である。
構成員から奪ったカードを扉の横にある端末に当てる。
ピッ
扉が横に開く。
構成員は実験室のある階は知っていたが、部屋番号を忘れていた。仕方が無いのでこの階の部屋を総当たりである。
「この部屋は……?」
その部屋には床が無く、鉄パイプで構成された通路のみがあり、下の階にある部屋が見えていた。
下の部屋は薄暗く、ゴチャゴチャした機械や垂れ下がったケーブルが見えた。
「おお……」
俺は思わず声を上げた。
いくつもの鉄の塊がゴチャゴチャした機械とケーブルに囲まれている。
その鉄の塊は間違いなく、戦車であった。
俺は戦車に特別詳しいわけではない。
だが男子たるもの、戦車にはどうしても魅了されてしまう。
メタルがマックスしてしまうのだ。
何故こんなところに戦車が、という疑問はあったが、俺は下の階に降りて戦車を観察することにした。
「ほお……、へえ……」
キャタピラも、主砲も、副砲も、装甲も、ハッチも、オプションのライトも、その他色々全てが格好良い。恐ろしい兵器であるにもかかわらず、どこか可愛い。
どうして戦車というものは、こんなにも男心をくすぐるのだろうか。
「動いているところが見たいなあ」
ちょっと乗ってみてもバレないかなあ、などと考えながら戦車を見て回っていると、あることに気づいた。
八九式中戦車 秘匿名称「イ号」。
九七式中戦車 チハ。
特二式内火艇 カミ車。
これらは全て大日本帝国陸軍の保持していた兵器である。
「日本軍の特殊軍事組織」
「真の日本を取り戻すのが我々の使命だ」
狙撃特性持ちの鴉と、イグアナ顔と一緒にいた中年男性の言葉が思い出される。
「まさか、本当に日本軍?」




