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妹が魔物化したけど可愛いので元の姿に戻したくない  作者: レイディアンと
第ニ章 人類の味方
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11 智朗、町役場の業務受付時間に憤慨する。そして妹の希望を受け入れる。

 

 ダイアナが武器強化やアイテム作成を行えるのか否かを調査する必要がある。


 今、ダイアナは何処に居るのだろうか?


 俺が去った後、あの場に居た者達はどうしたのだろう?


 悠に聞いてみたいが、あの場に俺は居なかったことになっている。


 その場に居ないと知らないはずの出来事をうっかり話してしまったりしたら事だ。


 質問する際は慎重に言葉を選ばなくてはならない。



「悠、俺が介抱されてる間にいつの間にか怪物達がいなくなったみたいだけど、一体何がどうなったんだ?」


「町を襲った怪物は倒したけど別の怪物が現れて、皆で協力して戦ったけど囲まれて、町役場の人が助けてくれて」


「町役場?」



 なんだそれは。



「うん。環境整備課の人、強くてカッコよくて……」



 ”可愛い”の顔がほわーんとなった。可愛い。


 恐らく悠はダイアナのことを思い浮かべているのだろう。


 町役場の環境整備課?


 ダイアナがジャムと呼んでいたスーツ姿の女性、あの人は町役場の人だったのか?


 ダイアナは何故、環境整備課で働いている?


 わからん。



 とりあえずダイアナの居場所についてはわかりそうである。


 だが今は悠から離れることができない。帰宅後に町役場へ向かうことにしよう。



 しかし、町役場の環境整備課か。


 ひょっとしてこの町に起こっている異変の解決を主導しているのはその人達なのだろうか?


 だとしたら、その人達が勇者達を導いていく立場になる訳だが……。


 なんというか、地味である。


 もっとこう、政府の特務機関とか出てきたりしないのだろうか。こんな事態を想定して作られた機関なぞ無いか。


 ネットニュースになっていないだけかもしれないが、特別対策室とかが設置されたという記事はまだ見ていない。


 恐らく異界化が始まったのはあの大地震からである。あれからまだそれほど日は経っていないので、まだ情報収集の段階なのかもしれない。人がレベルアップして強くなるなど、話を聞いただけでは到底信じられないし、異変を解決しようと動いた人がいたとしても上に話を通せずに困っているのかもしれない。今のところ異界化の影響はこの町にしか出ていないみたいだし、偉い人がそれほど大事とは捉えていない可能性もある。


 でも機動隊は動員されたし、見えないところでは色々動いているのだろう。そう思っておこう。




 ***




「ぬう……」



 俺は既に受付の終了した町役場の前でうなっていた。


 この町の町役場の平日の業務受付時間は十七時までである。


 電話に出なかったりして心配をかけたためか、悠を誤魔化して外出するのが難しく、十七時を過ぎてしまったのだ。


 ええい何故だ、何故役場の業務受付時間は十七時までなのだ。働いている人が何かしら手続きしたかったら、仕事を休んで来るしかないではないか。(今俺は失業中だが)始業終業時間をズラすとかできないものなのか。今は大半の手続きがネットで出来るようになっている? 本当か? どうせそのネットでは手続きできない一部が重要で、結局来るはめになるんだろう? わかっているぞ、それがお役所仕事ってやつだ。


「ハッ!」


 いかん。心の中で愚痴っている場合ではない。今の俺の目的はダイアナの居場所を探ることである。


 隠密スキルを行使して町役場の出入り口を見張るべきだろうか?


 いや、既に建物から出た後かも知れないし、家の方も心配なので出来ることなら早く帰りたい。


「帰るか」


 一旦諦めて家に帰ることにした。






 家に向かって歩きながら町を見回す。


 角ウシガエルが暴れたことで破壊された信号機やガードレールが目に入る。


 それらが元通りに修復されるにはどのくらいかかるだろうか。


 今回のフェスティバロがどんな扱いになっているのか、ネットニュースを調べてみることにした。



『東和町に再び怪物が出没』


『住民達が立ち上がりこれを鎮圧』



 東和町とは、この町の名前である。


 記事内に角ウシガエルを倒している勇者たちの写真が載っている。ダイアナが移っている写真を探したが、ファンタシーゾーン内で発生した戦闘の写真は無いようだ。


「残念」


 呟きながら気になる記事を探す。



『怪物の体から未知の物質を発見』


「ん?」



 ……未知の物質?


 記事の詳細を読む。


 それによると、どこかの研究所が魔物の死体を解剖した結果、未知の物質の発見に至ったらしい。


 プルフェ曰く魔物とは、浸食の影響でこの世界に顕現した異界の生物。別世界の生物なのだから、その体内に未知の物質があっても不思議はない。


 魔物は倒した後解体スキルでバラバラにしたりしているが、未知の物質が含まれていそうな部位などあっただろうか? 魔素を溜め込む器官とかあるなら、それだろうか?


 この発見は現状にどんな影響をもたらすだろう。面倒事が増えるのは勘弁してほしい。


 記事には未知の物質を発見した研究員の名前が載っていた。



独多乃緒どくた のおか、覚えておこう」



 ***



「兄さん」



 家に帰ったら悠が相談したいと言ってきた。


 何やら真剣な顔だったので、姿勢を正して”可愛い”とコタツ机を挟んで向かい合った。



「私、環境整備課の人達のお手伝いがしたい」


「ええ?」


 

 悠の話では、環境整備課の人、ダイアナからジャムと呼ばれていた女性が、勇者達の勧誘を行っていたそうである。何の勧誘かと聞けば、害獣から町を守るための人員集めをしていると言っていたとのこと。


 環境整備課は魔物のことを害獣として扱っているようだ。山で肉食獣が大繁殖して、町に下りてきた時の対応みたいな感じか?


 彼らは魔物を倒すとレベルアップすることは知っていて、既にレベルアップしているであろう勇者達を勧誘し、次のフェスティバロ発生に備えようという考えなのであろう。レベル5以上はファンタシーゾーン内に入れることも知っていて、内部の調査もさせる気なのかもしれない。


 命の危険があるし、人々を守ることを生業としている者がするべき仕事ではあるが、機動隊は既に動員されていて、彼等では角ウシガエルを抑えることが出来なかった。機動隊全員を十分にレベルアップさせれば抑えることも出来るようになるだろうが、それにはまだ時間がかかると思われる。


 ならば既にレベルアップしていて、町を守るために立ち上がった勇者達を頼ろうとするのは理解できる。だが異常事態とはいえ、危険なことをさせるために人を集めるとか、町役場がやって良い事なのだろうか?


 是非はともかく、悠はやる気満々の様子だ。どうしたものか。


 命の危険については俺がなんとかすれば大丈夫だろうが、何かしらの実験に付き合わされたりしないか心配である。



「具体的には何をするんだ?」


「有事の際の呼び出しに応じて欲しいんだって。後、学校が終わってからでいいから町役場に来て欲しいって」


「町役場に行って何するんだ?」


「害獣駆除の指導をするって言ってたよ」



 指導? 戦闘技術でも教えるつもりだろうか?



「休日じゃ駄目なのか?」


「休日も可能なら来て欲しいって」



 怪しい。


 悠の学校の下校時間は大体十六時くらい。そこから歩いて町役場に向かったら着くのは十六時半。下手したら十七時だ。


 十七時以降に仕事して、あまつさえ休日にも仕事しようとするなど、役所の人間のすることではない。



「私には戦う力があるみたいだし、皆を守りたい」



 拳を握る”可愛い”。可愛い。


 悠の意思は固そうだ。ジャムとかいう女性にどんなことを言われたのだろうか?


 町から人は大分減ったが、事情があって引っ越せない者は多いだろう。悠の友人二人を含め、まだまだ町には人が大勢いる。皆を守りたいという意思は尊いし、実際そう思っているのだろう。


 だが、どことなく”可愛い”の顔がほわほわしている気がする。可愛い。


 ダイアナに会う口実というのも意思決定要素の半分くらいを占めていそうである。



「宿題とかは大丈夫か? 時間が足りなくなったりしないか?」


「そんなに遅くならないみたいだし、大丈夫」


「それならいい」


「本当? もっと反対するかと思った」


「早速明日行くのか?」


「うん」


「俺もついて行く」


「え?」


「下校時間に待ち合わせだ」


「う、うん」


「ふわ……」



 あくびが出た。昼に仮眠を取っただけなので、眠気は続いている。


 悠の就寝後、いつもならフラウド探しに行くところだが、止めて寝ることにした。



 ***



 次の日、朝から下校時間まで悠を見守った。


 フェスティバロでの悠の活躍は生徒達に知れ渡っており、英雄のように持ち上げられた”可愛い”は困った顔をしていた。可愛い。


 悠に心無い言葉を投げる者は居なくなり、悠に断りなく写真を撮る者もいなくなった。


 とりあえず悠の今後の学校生活に魔物化関連の憂いは無くなったと思われる。


 これからは悠が学校にいる間なら目を離しても大丈夫だろう。


 問題は下校時間以降である。



 俺は学校を出るとひと気のない所で隠密スキルを解き、何食わぬ顔で校門に向かい、悠と合流。


 そのまま一緒に町役場へと出発した。


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