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ヤオヨロズ──中道録  作者: 隼理史幸
デイブレーカー
28/93

『アップデートが開始されます』?

かなりの間が空いて申し訳ありませんでした。

九龍とミシェルは校舎裏から正面玄関に移動し、そこから二年生の教室が配置されているフロアに向かおうとするなか、唐突にふたりのポケットの中がほぼ同時に震動する。


「メール? クロウも?」


お互いにポケットの中にしまっていた携帯端末を取り出し液晶画面を確認する。すると、一件のメールが受信されていた。


「差出人は…『ヤオヨロズ』の運営!? クロウ、そっちも?」

「ああ。何の報告だ? メンテナンスか?」

「…なんか、ヘンだよ」


訝しむミシェルに、今一つ合点がいかない様子の九龍が質問を投げ掛ける。


「ヘン? どういう意味だ? コイツはただの流行りモンのゲームじゃないのか?」

「うん。そうなんだけど。コレ、運営が一体何者なのかわかってないんだ」

「はぁ? なんだよそれ。危なくないのこのアプリゲーム?」


そう訊かれたミシェルは携帯をしばらくいじり出し、暫くした後液晶画面を九龍に押し付けるように見せる。


「えっと、なにコレ? 『ヤオヨロズ』の、公式サイト? 特別変なことは書かれてないな」

「うん。それに加えて有志が調べた結果、コイツをインストールしてもコンピューターウィルス感染したり、ってのはゼロだっていうはわかってる。でも…」


ミシェル見せつけていた自分の携帯をまた手元に戻し、サイト内をいじりだす。そしてまたそれを九龍に提示する。


「見てこれ。運営側の報告。こういった要件は全部公式サイトにのみ載っけられてる。だからメールが来るなんてまずあり得ない」

「じゃ、このメールはなんなんだ? 釣りか?」

「わからない。でも気にはなるよね」


数秒の間思考を重ねた後、一瞬だけふたりは目を合わせた後にそのメールを開示する。その内容をミシェルは声に出しながら読み上げる。


「貴方様のアプリ『ヤオヨロズ』の機能が更新されました。これにより、貴方様の使役する偽りの神に嵌められた枷が外れ、その力の一端を示すでしょう。…? なにコレ?」

「俺もだ。どういうコトだ? さっき見た公式サイトにはそれらしい報告はなかったが…。やっぱ釣りか?」

「わからない。取り敢えず、アプリ起動してみる?」


ふたりはメールを閉じ、アプリを起動させる。すると、一件のメッセージが画面に表示されていた。


「『アップデートが行われます』? あのメールはマジだったのか?」

「…兎に角完了するまで待つしかないね」


自動で行われたアップデート完了のパーセンテージが100%になるのを、ふたりはまだかまだかと待ちわびる。


アップデートの進行率を表示するバーを眺めながら、ミシェルはそういえば、という語りだしで九龍に向け訊ねる。


「クロウ、ついさっき迄にいろいろあったから忘れてたけどさ。コイツ、ちゃんとプレイしてる?」


ミシェルは自分の携帯端末のタッチパネルを指で軽く小突きながら訊くと、九龍のほうはやや考え込む素振りを見せながら質問に答える。


「ま、ぼちぼちな。帰りがけとか何気なく、とか。あと日曜に遠出した時にも暇を見つけたらみたいな。収穫は、まあお察しな感じな訳だが」

「あー、まあよくあることさ。1日掛けてかき集めた残滓が全部クソみたいなのだったら何とも言えない気持ちになるよね」


同情ともいえる心境でそう語るミシェルの姿に、九龍は彼女も悲惨な収穫結果を味わったことを察する。


「あと、ちゃんとレベリングも欠かさないでね? 運よくレアモノ手に入れてもレベル1じゃ話にもならないからさ。プレイヤーのレベルと違って戦いをこなすだけじゃ〈カミサマ〉はレベルアップしないからね」

「わーってる。毎回ログインボーナスや戦闘後の報酬とか〈精錬所〉の残滓精錬のオマケでくれる〈意思の欠片〉でレベルを上げるんだろ? やってるよ。レベル10毎にやってくるキャップ解放に必要な条件クリアに手こずっているが」

「ならよし。最大は50だけど頑張ってね。あいつらは曲がりなりにも〈カミサマ〉なんて名乗ってるんだ。信仰なんて曖昧なモノで成り立ってる神様は誰かに覚えてもらわなきゃ存在しないのと同じなのさ。…いや、そりゃ人も変わらないか」


やれやれ、とこぼすミシェルは現在進行形で行われているアップデートの画面をおもむろに眺めていると、また思い出したかのように問いをぶつける。


「暇だからクロウに質問。〈カミサマ〉のスキル編成、ちゃんと考えてる?」

「ああ、まあな。確か〈カミサマ〉ごとの属性と同じ属性のスキルにはブーストがかかり、かつパラメーターも全部で四項目の『力』『魔』『耐』『速』があってそれぞれスキルも各パラメーターを参照するからそれに合ったスキルコーディネートを心がけろ、だっけ?」

「おっけおっけ。ついでに種族毎のフォーススキルとの兼ね合いも考慮に入れよう。おめでとう、これでド素人卒業だ。ハナマルをあげよう」

「そりゃどうも。てか、今日はやけにゲームの話ぶっ込むな?」

「だって今回はテコ入れ兼説明回という主からの啓示を受けたわけだから、是非もないね」

「すまない、何を宣っているのか俺にはさっぱりわからん」


ふたりがそう言葉を交わしているうちに四分ほどの時間が経過しており、アップデートの完了と共にアプリが完全に起動を確認する。

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