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幕間 其の二

 前田ケイが気がつくとそこは真っ暗闇だった。いや、正しく言うのならば目隠しをされているため何も見えなかったというべきだろう。


 彼女は助けを求めようと声をあげようとしたが、猿ぐつわをされていたため無駄な抵抗に終わった。


 いったいここはどこなのだろうか、と彼女は思った。放課後ヤツらにさらわれてからどのくらいの時が過ぎたのだろう? 私をさらったヤツらの目的はいったい何?


 彼女は聞き耳を立ててみる。何も聞こえない……いや、聞こえる! 

 わずかにだが、サイレンのくぐもったような音が聞こえてくる。警察なのだろうか?


 その時だった。サイレンの音に混じって炸裂音が聞こえた。続けざまに銃を乱射するかのような音が間断なく鳴り響く。まるで戦場のようだ。


 ひんやりとした空気のなか、額には汗の玉がにじみ出てくる。脈拍が跳ね上がり手が汗ばむ。彼女は自分が危機的状況にいる事を悟った。


 このままでは殺されてしまう!


 彼女はここから逃げ出そうと必死に体をねじった。だがしかし縛られた両手足は背中でくくりつけられ、逃亡する事は不可能に近かった。それでも彼女はどうにか身をよじり続け、少しばかり移動する事が出来た。


 そうやって移動していると、不意に彼女のおでこの先に何かが触れた。彼女が首を伸ばしたそれが何なのか感触を確かめる。それは人の肌の感触だった。


 私だけじゃない、他の人もここに捕まっている!


 彼女は猿ぐつわをされながらも懸命にくぐもった声で相手に呼びかける。しかし、相手からの返事はない。それどころか微動だにした様子すらない。


 おかしいと思った彼女は懸命に身をよじると、相手の人の肩であろう部分に頭を載せた。そして頭をゆすって相手に自分の存在を示すも、何の反応も返ってこない。


 彼女は頭をゆするのをやめ再び聞き耳を立てる。聞こえてくるのは遠くからの銃撃音と自分の苦しげな呼吸音だけ。嫌な予感がした彼女はもう一度体をよじり、相手の胸の部分に耳をあてる。すると彼女の頬に冷たい素肌の感触を覚えた。どうやら相手は男性のようで服をはぎ取られているらしい。しかもまるで体温を感じられない。


 おぞましい悪寒を感じながらも相手の心臓の鼓動を確かめてみる——皆無だった。


 死んでいる! これは死んで身ぐるみをはがされた死体だ!


 あまりにも恐ろしい事実にショックを受けた彼女は、むせび泣きだし始めた。

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