38 暴露
ここは、キャンディタフト財団司令室。
財団警備員に拘束されたユキが、
手錠をはめられたままモニターの前へ連行されてきた。
アナベルと対決した後、単身財団本部に乗り込んだ。
そして少女たちの扱いに抗議するも、拘束されていた。
「よく見たまえ、瑞花くん。これこそが、あれらの本来の姿だ」
巨大モニターには、学園での戦闘の一部始終が映し出されていた。
敵に囲まれる少女たち。瞳が燃えるように赤く染まる少女たち。
司令官はモニターから目をそらし、吐き捨てるようにユキに向かって言った。
「あれらはやがて、躊躇なくわれわれにも牙をむくであろう」
「彼女たちが戦わざるをえないようにしたのは、あなたたちではないですか?」
「だが相手が人間だろうとおかまいなく、ああやって攻撃している。
排除する理由を作ったのは彼女たち自身だ。
現場の指揮官に伝えろ。
バーリック部隊が全滅したら、学園ごと吹き飛ばせと」
「みんな、逃げて!」
ユキは拘束された両手を、必死に映像に差し伸べる。
だが無表情な警備員が、ユキを引っ立てていった。
「司令、監視映像に正体不明の通信が割り込んできています」
「いいだろう、繋げ」
『ども、元気だった?』
「毬屋・サンライト・アナベル。今さら何の用だ。
お前の素性はとっくに割れている。マリヤ機関の一員だろ?」
『正解! もうどうでもいいや。
それよりも、今すぐイベリス学園にいる部隊を撤退させて』
「そんなこと、出来るわけなかろう!」
『おやぁ、何故? メンツの問題?
それとも彼女たちに、あんたらの薄汚い裏の顔を知られちゃったから?』
「彼女たちは今や危険な存在だ。
人間にさえ刃を向けることを自ら証明してしまった」
『はぁ、またか』
「なん……だと?」
『またそうやって自分たちのやらかしの後始末を、
立場の弱い者に押しつけて知らんぷりするのって、言ったの。
一番最初のバーリック発生の原因、あんたも知ってるっしょ?』
「あれはナイタブエース社の不祥事だ。
未認可薬を勝手に投与したスタッフがいて」
『違いますぅ。ナイタブエース社が会社ぐるみでしでかしたこと。
表立っては、死体を蘇生させると言っていたみたいだけれど。
実際は人間をバーリック化させる為に研究していた薬物。
だから、隠蔽しなきゃならなかった』
司令官室は、凍り付いたように静まり返る。
司令官は手近なデスクを両手でバンと叩いた。
「う、嘘だ! こいつは嘘をついている!」
『そこでアンドロイドの出番だよ。
ちょうど邪魔な高嶺草介氏を追い出したばかりの
キャンディタフト財団、絶好のコラボ相手だったろうね。
バーリック退治と称して、何も知らない彼女たちに後始末を押しつけた』
止まった時間が動き出したように、室内はざわめきはじめた。
事実を知らないスタッフもいたようだ。
『あららぁ? そこの職員にも知らなかった人がいるみたい。
どうしよう、わたし余計な事言っちゃったかな?
逆らっただの人間を攻撃しただの、
きれい事を並べ立てていらっしゃるけれど、
ナイタブエース社は人体実験をやっていたし、
キャンディタフト財団はそれを支援していた。
これは重大な犯罪だよ。
いつの間にか私設の軍隊なんて持っちゃってさ。
あの中にはアンドロイドもいるの? それとも人間だけ?
すでに警察も政府も動いている。
もうじきそこにお客さんが来るだろうね』
司令官はインカムをかなぐり捨てると叫んだ。
「今すぐ部隊を撤退させろ! そしてここも引き払うぞ」
「司令官、彼女は……」
「なに、小娘のひとりくらい後でどうとでもなる。
それに大事なデータは桜子様のところにある。
撤収だ、急げ!」
次回は、11月6日金曜日23:00に更新予定です。




