1 イベリス学園
『爛漫少女の花道は……』
藍は庭の花を眺めて手を止めた。この続きは、なんだっけ。
つい頭に浮かんだフレーズだが、どこで憶えた言葉なのか思い出せない。
春爛漫、競うように色鮮やかな花々が咲き乱れている。
まるでこの学園の少女たちのようにね。
それはそうと、花びらって風に揺れるスカートの裾みたいだ。
藍自身は自分の名字と同じ、桔梗の花が好きだった。
夏の暑い盛り、ほとんどの花が太陽の熱狂から逃れるように花を終わらせた頃、
輝かしく登場する青紫の星型の花。
心ここにあらず。最近はいつもこうだ。
陽気のせいなのか、自分が今どこにいるのかも忘れて、ついつい思考がグルグルグルグル。
「藍さん、桔梗 藍さん」
我に帰ると、瑞花 ユキ先生がこちらを睨んでいた。
「今は授業中なんだけどな」
そう言うと、頬を膨らませた。とてもじゃないけど教師の態度ではない。
教室にいる他の娘たちは、それを見て笑った。藍もつられて思わず吹き出した。
「すみません、なんか調子出ないんです」
「調子出るとか出ないとか関係ないでしょ、もうっ」
他の娘たちといっても、この教室には藍の他には4人の生徒しかいない。
ここはイベリス学園女子高等学校。
創設者である高嶺 草介氏が、
豊かなウィットとバイタリティを身に付け、
クリエイティビティとパイオニア精神にあふれる、
新時代の担い手にふさわしい女性を育成することを目的に設立した学園だ。
この学園に在籍している生徒は全部で5人。少数精鋭のエリートたち。
その時、館内に警報が鳴り響いた。
『バーリック出現! バーリック出現! これより作戦行動に備えよ!』
生徒達は椅子から立ち上がった。
「行ってきます!」
「帰ってきたら続きをやりますからね」
少女たちはそれぞれの得物を手に出発する。こんなの全然平気だっていう顔をして。
宿題のレポートに挑む時のように。あるいは日課の早朝ジョギングをこなすかのように。
彼女達にとってこれは、日常の一コマに過ぎないのだから。
ここはイベリス学園女子高等学校。
キャンディタフト財団バーリック対策本部によって選抜された、
精鋭達のための学び舎だ。




