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第2話 竜の勇者、最初の任務【1.75/3】または「竜の勇者の仲間たち」

 大司祭の執務室の物々しい扉が、ゆっくりと音を立てて開く。

 大司祭が召集した、手勢の者たちが集まってきたのだ。


 大司祭がかつて召喚し、隷属魔法で従えている『竜の勇者』たちなのだとか。

 あの程度の支配魔法に自由を奪われるなど、たかが知れている。

 勇者は、素直にそう感じた。


「来たよ~」

 妙に緊張感に欠けている、若い男。

 それほど身長は高くなく、身体能力もそれほどではなさそうに見える。

 彼は、上下ともに黒染めの奇妙な衣服をまとっていた。

 我々21世紀の日本人の知識をもってすれば、彼が着ているのは学生服だと分かるだろう。

 顔立ちもアジア人らしく、これから自己紹介によって名前も明らかになるのだが、彼はまぎれもない、21世紀の日本人だ。


「参上しました」

 鎧に身を包んだ、同じく若い男。

 頑強な肉体をしており、大司祭の周囲を守るエリート兵士と同じか、それ以上の筋肉量がある。

 身に着けているのは重鈍な甲冑ではなく、革がふんだんに使われた軽鎧で、下は短パンだ。

 事情に詳しいならば、これは古代ギリシャ風の戦闘装束であり、彼は重装歩兵ホプリテスなのではないかと察しがつく。

 そして、勇者は古代ギリシャに関する知識ももっていたため、唯一彼に関しては、出自について推察できた。

 勇者の故国イラン(かつてのペルシャ)と関係が深い時代のギリシャ風戦闘装束だったからだ。


「……どうも」

 無口な若い女。

 最初に見えた、緊張感のない男と似たような背格好だ。

 この世界においては、女性としてはやや高めの身長かもしれない。

 肉体は平均的だが、自信なさげに猫背になっているためか、実際よりも小さく感じられる。

 上下がつながった、簡素な衣服を着ている。

 我々の目からしてもよくあるワンピースを着ているようにも見えなくもないが、出自を表すほど決定的な証拠にはなりえない。



 緊張感のない男の名は、ユウマ・アツドウ。

 頑強な男の名は、ウダイオス。

 猫背の女性の名は、ノーマ。


 3人からは、それぞれ竜に属する魔力が感じられた。女神によって付与されたであろう、不自然な魔力が。

 そして3人はみな一様に、首の裏に隷属魔法の魔力的な刻印が施されていた。

 ある程度は強制的に命令に従わせつつ、強引に命令違反を犯した場合、すぐさま首を焼き切るのだろう。

 この程度の付与魔法エンチャントを解除できずにいるあたり、彼ら3人は物の役にも立たないな、と勇者は確信した。


 それぞれ自分が授かった『竜の力』を説明している。

 いざ戦闘になればある程度は成果を残すだろうが、いなくても変わらないだろう。


 曰く、竜眼と竜声をもち、戦場を俯瞰し、味方に念話できる。

 曰く、古き竜の牙をくことで兵士を生み出せる。

 曰く、竜の膂力りょりょくと竜火をもつ。


 いずれも勇者がもつ能力を超えてはいない。

 俯瞰視や念話の魔法は使える。だが、それほど必要性を感じない。そもそも翼を生やして飛行すれば、戦場は簡単に俯瞰できる。

 肩から生える蛇を切り落とすと、新たな蛇の頭が生えてくる。それを応用し、斬った頭の側に胴体を生やすことで、蛇人のような兵士を生み出すことができる。

 勇者は騎馬術と槍術に通じた武人であり、極めて精緻な魔法を扱える。竜の膂力と竜火よりも苛烈に戦える。竜そのものに変化することも可能だ。


 3人すべてを合わせたとして、勇者が本気を出すまでもなく、通常時の1/10の実力にも満たない戦力であろう。


 大司祭の、ほかの竜の勇者がファルを刺激してしまうのではないか、という懸念は杞憂に終わった。

 ほかの竜の勇者たちの力と存在は、勇者ファルにとっては無視すべき程度の些末事だったためだ。


 勇者は適当に聞き流しつつ、いずれ訪れる敵との対決に備えた。

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