↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
プロローグ
1/146

転生

「もし生まれ変わるなら――今度こそ、魔法を使える人間に……」


 思えば、救いのない人生だった。

 魔法至上主義の世界で、まともに魔法を使えない人間として生まれた。

 その時点で、俺の人生は決まっていたのかもしれない。

 親から愛されることはなく、学校へ通うことも許されなかった。

 家を追い出された後も、行く先々で差別され、最低限の魔法すら使えない俺に働き口はない。

 まともな食事にもありつけず、飢えを耐える日々。


 そんなある日、俺たちのような浮浪者はまとめて徴集された。

 戦争のために。

 もちろん兵士としてではない。

 魔法兵の盾――ただの肉壁としてだ。


 仲間たちは次々と死んでいった。

 弔われることもなく、朽ちるか、獣の餌になるだけ。

 そして俺もまた、魔法の矢に胸を貫かれた。

 急所は外れていた。

 だからこそ、すぐに死ねなかった。

 冷えていく身体。

 流れ続ける血。

 長い苦しみの末、薄れていく意識の中で、俺は願った。

 ――来世では、魔法を。



 ここは……どこだ?

 見渡す限り、真っ白な空間。

 さっきまで感じていた痛みがない。

 確か俺は、戦場で流れ弾に撃ち抜かれて――。


「いやあ、すまんかったのう」


 不意に声をかけられた。

 振り向くと、そこには老人が立っていた。

 昔、拾った本で見た神様によく似た姿。


「……誰だ、じいさん」

「神じゃよ」


 あまりにもあっさりした返答だった。


「お前さん、ずいぶん辛い人生を送ったじゃろ?」

「……なんで知ってる」


 老人――神は、申し訳なさそうに答えた。


「実はのう。わしら神の間で人生ゲームという遊びが流行っておってな」


 意味がわからないが、ただ嫌な予感がした。


「世界を選び、人を選び、あとはルーレット任せ。止まったマスに応じて人生が決まるんじゃ」

「……は?」

「おぬしは、わしのコマじゃった。ところが運が悪すぎてのう。見事にバッドイベントばかり引いてしまってな」


 頭が真っ白になった。

 つまり俺の人生は――。


「ふざけるな……!!」


 声が勝手に漏れていた。


「どれだけ苦しんだと思ってる。親に愛されず、人として扱われず、孤独に死んだ俺の人生……! それがお前らのゲームのせいだったってか!?」


 怒りで身体が震える。

 だが神は、ただ静かに頭を下げた。


「本当にすまんかった。じゃから償いとして、おぬしには新しい人生を与えよう」

「……新しい人生?」

「次は、おぬしの望む力を持たせてやる」


 怒りは消えない。

 正直許したくもない。

 それでも、あの地獄のような人生のまま終わるよりは、もう一度やり直せるなら。


「おぬしは、何を望む?」


 神に問われる。

 答えは、最初から決まっていた。


「――魔法が使いたい」



 俺は転生した。

 目を覚ますと、そこは死に場所となった魔物の森だった。

 最初は異世界に転生したのかと思った。

 だが違う。

 ここは前世と同じ世界だ。

 赤子として生まれ変わったわけでもない。

 姿形もそのまま。

 まるで死ぬ直前の俺が、そのまま蘇ったようだった。

 ――ただ一つを除いて。


「……魔法が、使える」


 震える声で呟く。

 そして、すぐに試した。


「分析魔法、《ステータス開示》!」


 目の前に半透明の画面が現れる。

 そこには、俺の能力が表示されていた。

 基礎的なステータスは平均以下だった。

 むしろ、下から数えた方が早いかもしれない。


「俺ってこんなに弱かったのか……」


 知りたくなかった現実だった。

 スキルは二つ。


 一つ目は《魔法創造》

 自分だけの魔法を生み出せるスキルだ。

 ただし制約もある。

 死者を蘇らせたり、神を殺すといったような、世界の理を超える魔法は作れない。

 さらに、強力な魔法ほど厳しい制限が課されるらしい。

 例えば、()()()()()()()()()()()なんて規模の魔法は、おそらく実現不可能だろう。


 そして最大の制約。

 魔法を創造できるのは、ひと月に一つだけ。

 今使った《ステータス開示》も、《魔法創造》によって生み出した魔法らしく、次に創造できるまでの残り時間が表示されていた。

 前世にも分析魔法自体は存在した。

 だが見られるのは能力値や属性程度。

 スキルの詳細まで確認できる魔法ではなかったはずだ。

 制約は無し。

 強力な魔法ではないからだろう。


 そして二つ目のスキル。

 《魔力無限》

 魔法を使うために必要な魔力。

 言葉通りそれが無限に使える。

 つまり、魔法が撃ち放題ということだ。


 試しに俺は、近くにいたゴブリンへ《火球(フレア)》を放った。

 爆ぜる炎。

 ゴブリンが悲鳴を上げて吹き飛ぶ。


「はは……」


 自分が魔法を使えている。

 それだけで、笑いが込み上げてきた。

 もっと使いたい。

 もっと、もっと。


 だが使えたのは《火球(フレア)》だけだった。

 前世で独学していた初級魔法が、それしかなかったからだ。

 どうやら、知識のない魔法は使えないらしい。

 他の魔法を覚えるには、使い方を学ぶ必要がある。


 本来なら魔法学校へ通うのが一番早い。

 だが今の俺は既に通える年齢ではなく、そもそも素性の知れない人間を学校が受け入れるとも思えない。


 となれば方法は二つ。

 魔導書を買うか、誰かに教わるか。


 幸い、火球だけでも簡単な依頼ならこなせるはずだ。

 まずはギルドに登録し、金を稼ぐ。

 そう決めた。

 ……もっとも、以前いた町へ戻るつもりはない。

 あの場所には、仕事を求めた俺を嘲笑い、虐げた連中しかいない。

 俺は森を抜け、新しい町を目指して歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。