第7話 恋の解熱剤 7−7
6
ある日、小和は決意した。
キャバクラを、辞めよう。
桐人にふさわしい女性になりたい。
ちゃんとした仕事をして、ちゃんとした生活をしたい。
小和は、店長に辞めることを伝えた。
「小和、本気か?」
「はい。新しい人生、始めたいんです」
店長は、少し寂しそうだったが、応援してくれた。
「頑張れよ」
小和は、派遣会社に登録して、事務の仕事を探した。
そして、大手企業の派遣社員として働くことになった。
派遣先は、IT企業。社員はイケメン揃いだった。
小和の容姿に、何人もの男性社員が言い寄ってきた。
「ランチ、一緒にどうですか?」
「今度、飲みに行きませんか?」
以前なら、こういう男性に惚れていたかもしれない。
でも、今は何も感じなかった。
小和の心は、もう桐人で一杯だった。
小和は、丁寧に断った。
「すみません、今は仕事に集中したいので」
派遣の仕事を始めて一ヶ月。
ある日、小和は会社のエレベーターで、見覚えのある人物とすれ違った。
「桐人さん?」
「小和さん!?」
二人は、驚いて顔を見合わせた。
「桐人さん、この会社に?」
「うん、僕、ここの社員なんだ。開発部で働いてる」
小和は、さらに驚いた。
桐人は、この会社のエリート社員だったのか。
「小和さんも、ここで働いてるの?」
「はい、派遣で事務をしています」
二人は、偶然の出会いに笑い合った。
それから、二人は社内でも時々会うようになった。
桐人は、小和が他の男性社員に言い寄られているのを見て、複雑な気持ちになった。
嫉妬。
桐人は、初めて自覚した。
自分は、小和に惚れている。
7
ある金曜日の夜。
桐人は、小和を呼び出した。
「小和さん、話があるんです」
「はい、何ですか?」
二人は、会社近くの静かなカフェに入った。
桐人は、少し緊張した顔をしていた。
「小和さん……僕、言わなきゃいけないことがあって」
「はい」
「僕、小和さんのこと、好きです」
桐人は、真っ直ぐに小和を見つめた。
「最初は、友達としていいなって思ってた。でも、最近、気づいたんです。僕、小和さんに惚れてる」
小和の心臓が、激しく跳ねた。
「他の男性が小和さんに近づくのを見て、嫉妬してる自分がいた。それで、気づいたんです」
桐人は、少し照れくさそうに笑った。
「僕と、付き合ってください」
小和の目から、涙が溢れた。
「私も……私も、桐人さんのこと、好きです」
小和は、笑顔で答えた。
「キャバクラ辞めたのも、桐人さんにふさわしい女性になりたかったから。ちゃんとした仕事をして、桐人さんと一緒にいたかったから」
桐人は、優しく微笑んだ。
「小和さんは、もう十分素敵だよ」
二人は、手を取り合った。
そして、結ばれた。




