第7話 恋の解熱剤 7-5
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今宵薬局。
店の奥で、「 」は水晶球を眺めていた。
球の中には、小和の姿が映っている。桐人と一緒に笑っている小和。
「彼は、今までの男性とは違います」
「 」は静かに言った。
「誠実で、優しく、地に足がついている。小和さんにはこのような男性が必要なのです」
水晶球の中で、小和が鞄から瓶を取り出している。
「ああ、また解熱薬を使うのですね」
「 」は少し心配そうな顔をした。
「でも、大丈夫でしょう。彼への気持ちは、『盲目の恋』ではなく、『好き』ですから」
今宵は水晶球を布で覆った。
「さあ、小和さん。気づいてください。」
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斉藤と会った翌日。
小和は、また惚れたのかと不安になった。
でも、確かめたかった。
小和は、恋の解熱薬を飲んだ。
今までなら飲んでしばらくすると、猛烈な思いが冷めてしまう。
でも、今回はそんな感じはしない、当たり前だ桐人にそんな猛烈な思いはないのだから。
でも、斉藤に会いたいという気持ちは、変わらなかった。
小和は驚いた。
これは……恋の熱じゃない?
小和は、自分の気持ちを確かめるために、斉藤に連絡した。
「また会えませんか?」
「もちろん。いつにしますか?」
斉藤は、すぐに返信してくれた。
二人は、また会った。
映画を見て、ご飯を食べて、たくさん話をした。
小和は、斉藤といると楽しかった。
そして、気づいた。
今までの恋は、相手のルックスや口の上手さに惚れていただけだった。
でも、斉藤への気持ちは違う。
ただ彼と話していると楽しい、、もっと一緒にいれたら、と思う。
多分これが、「好き」なんだ。
小和は、積極的にアタックすることにした。
それまで今野・斉藤と言っていたのを、小和・桐人と互いに名前で呼ぶようにした。
「桐人さん、私、もっとあなたのこと知りたいです」
「僕も、小和さんのこと、もっと知りたいです」
初めて名前で読みあって互いに照れてしまった。
ウブかよ、と小和は自分の照れ具合に苦笑してしまった。
二人の距離は、少しずつ縮まっていった。




