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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: SHUSAKU
season1【B面】
98/239

15-2 打ち明け話

【15話/B面】Bパート

日は変わり、別の日の放課後――



校舎の西側二階、放課後のチャイムが鳴り響いても、部室には「ある異変」が起きていた。


いつも一番か二番目にやってくるはずの看板娘、静那の姿がなかったのだ。


生一が一番乗りで、後からやってきた勇一が、手際よく窓を開けて換気を行っていた。


「お疲れ」


「うんお疲れ。勇一、静ちゃ~んと、あのアホ来てる?」


部室に入ってきた仁科さんが、不機嫌そうに周囲を見回した


「誰がアホやねん。俺、一応静那の先輩なんやけど。扱い酷くない?」


「あんたはおまけみたいなもんでしょ。数合わせの」


「けっ、扱いひでーの。でも、静那今日来れへんってさ」


生一の言葉に、勇一が勢いよく振り返った


「ええっ!  静那、欠席なのか?  何かあったのかよ。昨日の部活の時、なんだか心ここにあらずって感じだったし……」


「そんなの、口に出さなくても誰にだって分かるわよ。静ちゃん、表情に出やすいんだから」


仁科さんは、生一に詰め寄った


「で、静ちゃん、何の用で欠席なの?」


「俺『アホ』やから分っかりっまとぅえ~ん」


「くっ……じゃあ、藤宮さん」


「ビッグボスと言え!」


「なんでビッグボスとか言わなきゃいけないのよ!

静ちゃんには言わせてるみたいだけど、あんたがボスなわけないでしょ!

何の用か知ってるなら教えてくれていいじゃない。漫画を隠し持ってること、先生にバラすよ!」


「漫画を弱みにしやがった……怖っ、この女」


「生一、俺も知りたいよ。分かるなら教えてくれよ」


「まず何で俺なん?」


「だって静ちゃんが休むこと知ってたでしょ。

それに静ちゃん誰にも言わず無断で休んだりするような子じゃないもん。で、勇一が知らないならもうあんたしかいないじゃない」


「なかなか良い推理だ、ワトソン君」


「ワトソン君って誰よ! いい加減言ってよ!」


仁科さんが苛立っていると、椎原さんが静かに入室してきた


「もう、小春。声が外まで聞こえてるよ。女の子がそんなに怒鳴っちゃダメ」


この一カ月の間、お出かけしたりしてある程度仲良くなったせいか、今では仁科さんの事は下の名前『小春』で呼んでいる。


「あ、ごめん……砂緒里。でも、こいつがいちいち話をはぐらかすから」


「何かあったの? そういえば、静ちゃんは?」


「だからアイツ今日は来ないって話」


「昨日なんだか思いつめた顔をしてたからね……何かあったのかな。」



「「それについては、私から話をさせていただこう!」」


部室のドアが勢いよく開き、小谷野と兼元が、奇麗にハモった声で部室に入ってきた。


「あんたらでもいいわよ。何? 教えてよ」


「おい! その言い方失礼と違うか?まったくどういう頭してんだ」


小谷野が胸を張ったが、仁科さんの目は氷のように冷たい。


「だからさっさと言いなさい言ってんの!」


「どうも乳にばっかり栄養が行ってるみたいで頭が足りてないみたいですなァ」


兼元の失礼極まりない言葉に、仁科さんのこめかみがピクリと跳ねた


「まぁ、小春。ここは、落ち着いて話を聞こう。知っているなら私も知りたいし」


椎原さんが何とかなだめる。


怒りの原因は明らかにあの二人なのに。


「静那ちゃんは……あれは、男ができたんだ!

あぁあ、なんということだ、世界の崩壊か! スゥィ~~ズゥ~~ヌゥア~~!」


小谷野が、ハンカチを噛み締めながらいきなりオペラ歌手のような大仰な口調で叫んだ


「一年生にガタイのいい男の子がいるんだけど、そいつに静那ちゃん、なぜかお熱なんだよ……うううっ」


小谷野はハンカチを取り出して口に咥えたと思ったらその状態で下にグッと引っ張るしぐさを見せた。


どこで知ったのか分からないが、とにかく古臭い。


「お熱って……言い方古っ!」


「そこ!黙らっしゃい!」


小谷野は陶酔し続ける。


「そりゃあ静那ちゃんはお人形のような可愛さと美貌があるよ。リカちゃん人形も真っ青な顔立ちだ。寄ってくる男もさぞいるだろう。でも彼女には私という旦那がいる。

そこは意識して貞操を守り通してくれたと思っている」


「おい、俺が旦那やぞ!このバカゴリラ!」


「何を言う、この下着マニアニマル!」


「すいません。話がおかしくなってるんで~主線部分だけ喋ってくれませんかね?」


ゴミを見るような目で冷めた突っ込みをする仁科さん。


「私という旦那がいるからこそ他の男の口説きには応じない……それは立派だ。

しかし、一昨日由々しき事態が起こったのだ。

嫁が……嫁が自ら進んで私の知らない男をエスコートし、なんと屋上まで連れて行ったのだァ」


「静那が独断で同学年の男子を屋上に連れ出したって……そういう解釈で良いんだな?」


「コレ聞いてそれくら分らんか?

お前、もうちょっと脳みそ頑張ろうや!」


「なッ!」


キレそうになる勇一。


「そして『彼と大事な話がある』なんて言い出すんだ。

屋上で行われるイベントって分かるか!屋上だぞ屋上。屋上マジックがかかってんやで!」


「屋上で何のマジックがかかるねん! アホやろ」


生一が呆れて吐き捨てる


「屋上って言ったら……告白したり、なんかしたり、他にもなんやかんや、お互いが『何か』をするところだろうが!」


「後半ワケ分らん!」


仁科さんが呆れ顔で突っ込むが、勇一の心は穏やかではない


「要するに、愛の告白をするために、静那が屋上にその子を連れ出した可能性があるってことか……」


勇一がここまでの話をまとめようとする。


「そんなん話の初めの方で分かっとこうや。お前話の流れってのに乗り遅れすぎやで!

くらいついてこーい」


「さっきからなんかムカつく言い方だなぁ」


「それで、静ちゃんが告白したっていう証拠はあるの?」


「それが、煙に巻こうとするんだよォ、俺達の事~

旦那なのに! どう思う!?

旦那やのにコレどう思う?

旦那やのに!『私、この男の人とは初対面ですぅ』って! 絶対ウソやん!

女が浮気する時の常套句バスト10には入る言葉やん~」


またハンカチを咥えて下に引っ張る仕草を見せる小谷野。いちいち見苦しい。


あとさりげなく静那の声色をマネするのにもイラッとする一同。


「あんた、なんで嫁とか言うくせに、彼女の言葉を信じてあげられないのよ!

バッカじゃない?静ちゃんはとっさに嘘ついたりするような子じゃないの!

それに『バスト10』って何よ。四六時中バストのことばっかり考えてるから、そんな言葉遣いになるのよ! この、ど変態!」


仁科さんの正論が炸裂したが、椎原さんも少し心配そうな表情を見せた


「確かに、静ちゃんは咄嗟に嘘をつくような子じゃないよ。初対面だと言うのなら、それが本当なんだろうけど……」


「だからって、初対面の相手に一目惚れした線も捨てきれませんやん!」


小谷野と兼元……この2人のケースを考えたら『絶対それはない』とは言い切れない。


「じゃあ……本当に、告白したのかな」


「そりゃ絶対してるやろ。屋上で二人きり、天気は晴れ、二人は出会ったばかり……

しかも、一時前。 条件揃いすぎてると思わんか?」


「なんで時間まで関係してるんだよ!」


「昼休み終わりのチャイムが鳴る前っていうのは、昼休みのクライマックスやろがい!」


「どこ情報だよ、それ……

とにかく話にいちいち自分基準の妄想を入れ込んだりしてややこしくするな!」


勇一は頭を抱えた。


「じゃあ仮に告白したとしよう。それと静ちゃんが今日休みなのとどういう関係があるのよ」


「……実は、その嫁の意中の男、『八薙』っていうやつなんやけど。そいつ、今日学校を休んでんねん。そして嫁も、学校が終わったら急いで下校してた……どうよ!」


「いや……どうよって言われても」


「これ、八薙ってやつの家に心配で駆け込んでいったという仮説は、アリなん違うか? 親が共働きで家に誰もおらん設定やったら……(涙)」


小谷野の妄想は止まらない。だが、仁科さんも少し考え込んでしまった


「その設定というか妄想は置いておくにしても、静ちゃんだったら……あり得るかもね。

その八薙君って子のことが心配で、お見舞いに行ったっていうケース」


「それは無いとはいえないよね。」


ここで部室に、重苦しい沈黙が流れた。


「勇一、その八薙君って子、どんな子か知ってる?」


「西山なら知っているかもしれないけど……俺はよく知らないんだ」


西山は今日は生徒会で欠席だ。


「じゃあ彼についてこれから聞き込みをしませう!」


「待って!バカな事しないの!」


「うちの部員意外と県外勢ばかりだから分かる人間居ないんだよね……ていうかなんで勇一が分からないワケ?もっと人間関係に関心持っときなさいよ」


「そこは……ごめん。でもよく分からないんだよ」


「まったく頼りにならない部長ね」


「まったくだわ……部長失格ね」←(小谷野の声)


「オイコラ!私の声色で真似すんな!気持ち悪いでしょうが!」


「それにどさくさに紛れて俺の事けなすなよな。

……でも俺思ったんだけど。」


俯いた表情に対し、一同が勇一に視線を向ける。


「……そういえば、静那の好みのタイプって、知らないよな。静那にだって、好みは……あるはずだし」


「それはもちろん、旦那である俺し――」「お父さんが大好きだって言ってたから、お父さんに似た、ガタイのいい人が好きなんじゃないかな?」


椎原さんの冷静な推測に、男子陣は一斉に打ちひしがれた


「じゃあ八薙君が静ちゃんのお父さんにどことなく風貌とかが似ていたから一目ぼれしたって線も考えられなくはないよね。ガタイが良いんでしょ。こいつら4人と違って……」


「そんなの……旦那もいるのに!ありえんッ!」


「あのねぇ。人を好きになるのに理由とか無いの!

勇一も一応知っといた方がいいよ。女の子は理屈じゃ動かないってね。

たとえ金持ちでこの人と結婚すれば安泰だって思えても、心までは動かないものなの。だから男から見たら急に気が変わったように見えても、すでに心を動かされていたなんて事はよくあるのよ。

心変わりした時にはもう理屈では変えられない……

本当に女性って男から見て意味分かんない時もあるし難しいって思う。同性ながら感じてる」


「じゃあ、その八薙ってやつにやっぱり……」


「無い……とは言えないよ。静ちゃんも女の子なんだもん。そうならそうで想いを尊重してあげないと」


「お…お…お…俺は一体明日から何を生きがいにしていけば……」


「お前は自宅のタンスに盗んだパンツのコレクションあるやろ。あれで涙でも拭いてろ!」


ここでトンデモ発言が飛び出してきたが、あまり耳に入らない。


勇一は実は少しショックだった。


「(そういえば静那は俺の事……心から信頼してくれている感じだった。

けど……その、恋愛っていう感情ではなかったんだよな……

あくまで信頼できる先輩ってだけであって)」


勇一が本気で落ち込んでいると、背中を仁科さんに「バシッ」と叩かれた。


「恋してたの? 静ちゃんのこと」


少し顔が赤くなる……しかし現実を受け入れたように俯いた後、勇一は答えた。


「……うん。多分……恋だったのかもな。あの子の喜ぶ顔を見るだけで、俺も嬉しかったし。癒やされていたんだと思う。ただの後輩とは思えないくらいいい子だったし」



すると、仁科さんがこらえきれずに笑い出した。


「もう~! マジで落ち込んでるじゃない! 可笑しい~

まだ八薙ってコと付き合ってるかどうかも確定してないのにさ。マジ落ち込んだりして!

ホンット馬鹿!単純!ダメ部長!もう失格!

ま~ダメダメだわこりゃ」


「なんだよ、ひどくないか!? 仁科さん!それに椎原さんまで」


「だって静ちゃんどう見てもあんたと関わってる時が一番いい表情してるもん。

心から信頼してるって感じするし。

あんたは周りがまだ見えてなさすぎなの!

一人いい男が現れたくらいでなに動揺してるのよ!

あんなに信頼した表情向けられてるのにホントバカ!

普段から静ちゃんの事きちんと見てない証拠だわ。だから失格って言ってんのよ」


「な……ななな……俺の嫁のすぐ近くにこんなダークホースが居たとは」


「そもそもあんたたちは嫁失格よ。この前の着替え覗こうとした段階でね」


「俺は見てはいない!」


「はいアウト」


「何でだよ!」


「逆にアウトにならないと思ってるのが不思議よ。

あんたはあんたで婦人服売り場とはいえ公衆の中で堂々と静ちゃんのスカートたくし上げようとしておいて!警察が近くにいたら間違いなく捕まってるからね!!」


椎原さんも、優しく微笑んでフォローを入れた。


「白都君は、静ちゃんに対しては普通に接していればいいと思うよ。彼女、この部活動を立ち上げてくれたこと、本当に感謝しているんだから」


「そんなもんかな……」



勇一が少し表情を持ち直した時、ずっと黙っていた生一がポツリと口を開いた。


「ま、色々話がふくらんでもうたけど、静那は今日屋上で会うた時『八薙君と他校生徒との喧嘩を、天摘先輩と一緒に止めに行くから今日は休みますって伝えてほしい』言うてたで」


全員の動きが、ピタリと止まった。



少しの間が空いた後、全員が生一の方を向く。


「はぁぁぁぁ!?」


「こんのバカァ!それを先に言えよ!まったく!なんか俺すごい恥ずかしい思いしたじゃんかよ!」


「うるせえよ、お前らが勝手に妄想膨らませて打ち明け話してるんが悪いだけやろ」


「この野郎!俺の心配とここまでの尺を返せ!」


「やだね!何が屋上マジックだバカ!屋上は寝るトコだよ!」


「んだと!よくも俺の純情な感情を弄びやがって!てめぇ!」


「なにが『純情な感情』だぁ?んなもん三分の一も伝わってねーよ!御大層に屋上までストーカーしやがってよ」


部室には、いつものような賑やかな(そして少し殺伐とした)罵り合いが戻ってきた。


「生一!じゃあ天摘さんと静ちゃんが八薙君って子を助けに行ったの?」


「ああ、あと天摘ん所の道場の人……大人もいるみたいやから大丈夫やと思うで。

明日は普通に部活来るやろ。天摘も。」


「まったく、あんたは何で部室に来た段階でちゃんと言わないのよォ!ここまでの時間を返せ!」


「話を大きく脱線させた張本人はあのバカ二人組やろ!

まぁええやん。これも立派なディスカッションって事で。勇一部長様の本心も聞けたんやしええんとちゃう?」


途端に真っ赤になる勇一。


「そうやでお前、言うとくけど俺の嫁はやらんからな!『ご都合主義』とか行使させへんぞ!」


「嫁を強奪するようなら、お前を『SSD』の刑に処す。覚えとけ!」


二人は吐き捨てるように勇一に捨て台詞を吐いて、部室から去っていった。


マイヒロインの居ない部室に用は無いというところか……


「……釈然としないな。何だよ、SSDって……」

(※プロレス技の、スタイナー・スクリュー・ドライバー(Steiner Screw Driver)の略称です)


納得いかない勇一に向けて仁科さんがまだ意地悪様な顔で言ってくる。


「まぁいいじゃん、一皮むけたんだしサ。勇一部長!」


* * * * *


後日、話の渦中にあった八薙君は静那からの声掛けもあり、勇一達の部活に顔を出すようになる。

『B面』では、勇一達が立ち上げた部活「日本文化交流研究部」での日常トークを描いています。時々課外活動で外出もします。各話完結ですので、お気軽にお楽しみください。

尚、本編のストーリーとB面の話数は所々リンクしています。こちらを読んでから本編を読み進めていくとより楽しめます。


【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は大いに勇気になります。

現時点でも構いませんので、ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂ければ非常に嬉しいです。

よろしくお願いします。

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