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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season1【B面】
67/231

2-1 虫の声

【2話/B面】Aパート

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【B面】の2話目に入ります。ここで今集っている部員メンバーを簡単に紹介。


■白都 勇一:あまり自己主張をしない物静かな少年。一応部長

■武藤 静那:一年生。戦争孤児として日本に疎開してきたベラルーシ人(本名はシーナ)。白がかったブロンドの髪が特徴。この子がきっかけで勇一が部活を立ち上げることになった

■藤宮 生一:マイペース。昔は関西で暮らしていたが、大人のズルさに嫌気がさして田舎に越してきた

■仁科 小春:都会暮らしの女子高生だったが、縁あって高知へ越してきた…らしい

■椎原 砂緒里:成績優秀な帰国子女。静那に興味を持ち部活に入ってくれた

■西山 憲治:勇一のクラスメイト。生徒会長でもあるためスポット参戦してくれる

ここは1995年のとある高知県にある高校。


舞台は夕方に差し掛かる校舎の東側2階。


その日の授業が全て終わり、ホームルームのメロディが流れはじめる。


放課後に入り、しばらくして一人の女子高生が東側2階の部屋に入ってくる。


この部屋で部活が始まるからだ。




ただし今日も一番乗り…ではなかった。


先に来た人間が隅っこの方で漫画を読んでいた。


その女子高生はまず漫画を呼んでいる人間の元へ行く。


「こんにちは、ボス。」


「おう、漫画の邪魔や。」





「雨ですね~。」


漫画を読んでいる彼に勝手に話しかける。


さすがに目の前の後輩がふってきた話を無視するわけにもいかないと変に律儀な姿勢を見せながら返答するボスこと生一きいち


「まぁな…朝からザーザーうるさいよな~」


「え?ザーザーって言うんですね。雨の音って。」


ここでマンガを手にしていた男は手と視線を止め、その女子高生の方に顔を向ける。


何か食いついた部分があるようだ。



「静那…お前の国の奴って雨の音って無いん?」


「え、あ?ああ。

無いですよ。ただの雑音としか認識してないです。

でも日本の人って“ザーザー”とか声をカタカナで表現しますよね。あれ不思議です。」


「じゃあ川とかの音は?」


「あれも雑音として同じように聞こえますけど?」


「サワサワとか無いん?マジで?でも風は違うやろ。“ピュ~”とか言わん?」


「…言いませんねぇ。全部同じ雑音に感じますよ。」


「ええ?何それ。おまえらの国、もうちょっと耳頑張ろうや。」


「えええ!これ、耳頑張ってないってことなの?」





「なんで静那の国の事を悪く言うんだよ。生一。」


ガラガラッという音と共に部室へ部長である勇一とクラスメイトの仁科さんが入ってきた。



「そうよ。別に音の聞き分けが私たちと違っててもいいじゃない。それが出来るからって日本人が特別凄い訳でもなんでもないんだから。

静那さんも気にする事じゃないからね。」


「それでもなんか世界狭くないか?

なぁ?とびだしてこーい!」


「あんた後輩相手だからってなんかムカつく言い方ね。」


「う~ん。音楽なんかは日本も普通に聴きますけど、雨や風の音は全部同じに聞こえますよ。…虫もそうです。」


「虫も?…じゃあセミは知ってるか?」


「はい。7日で死ぬやつですよね。」


返答の仕方が妙にズレているが一応このまま話を進める。



「セミの鳴き声も全部同じに聞こえたりするん?」


「せみ、鳴き声?…そうですね。」


「マジかよ。」




「じゃあさ、“鈴虫”のようなあの奇麗な鳴き声も?」


4人の会話を聞きつけ途中から部室に入ってきた椎原さんが横入りで質問してきた。



「…はい…どんな虫でもあまり認識?なのかな。

意識?できなくて。」


「これって何かの病気って訳じゃないんだよな。椎原さんはカナダとアメリカだっただろ。椎原さんの住んでた地域の人もこんな感じだった?」


「私、あまり詳しく知らなかったけど確かに虫の音色の話なんてしたこと無かったと思う。…うん。」


「じゃあこれって日本人特有の能力なのかな?それか文化?」


「多分同じ人間だから、虫の音を聴くっていう意識が子どものころからあれば聴こえるんじゃないかな。

 日本人って昔、虫の鳴き声で天気予報を判断したりしていたらしいから、多分他の国の人に比べてそういう虫に対しての意識?DNAっていうのが強いんだと思うよ。

“虫の知らせ”って言うよね。」



椎原さんらしいエビデンス(証拠)を元にした結論だ。


椎原さんの説明は論理的で実に説得力がある。しかし鵜呑みにしてはいけないと釘を刺されている勇一。



「じゃあ虫の鳴き声とかを日本の映画ではシーンの間に入れてたりするよな。

静那、あれは意味分からないか?

ただの雑音が入っただけのシーンに感じたりするの?」



勇一も気になったので聞いてみる…が、


「ごめんなさい。映画はその…まだ見てなくて。」


「じゃあ映画館行ったりするのも大事よな。部費出たら見に行こう。」


生一が部費の使い道をいきなり提案する。もちろんアウトだ。



「バカ言わないでよ。それはさすがに部活じゃないって言われるよ。」


「まぁそれは視聴覚室からビデオ見れるテレビを借りてこられるみたいだからそれで見よう。

とにかく映画に出てくる、海がザザーンってなるシーンとか虫の鳴き声のシーンとかが全部同じような雑音に聴こえるのか…

その感覚は自分には無かったな…」



「なんかさ、そう考えたら海外の映画を試しに見てみたくなったよね。」


「私はアメリカに居る時に映画少しだけ見たけど、今思い返しても風の音とか無かったと思う。“雑音扱い”して音声だけカットしたのかな?」


「日本人は音に敏感だってことだね。同じ耳を持ってるのに不思議だね。」



「それでも虫の音聞き分けられんのってなんか想像出来んな~。

静那、セミの鳴き声も違い分らんか。」


「うん。木に張り付いてる時出る音でしょ…」


「あの甲殻類全部“ギーギー”言うて聴こえてるん?」


「う…ん。そうじゃないかな…と。」


「絶対嘘やろ。“つくつくボウシ”とか言うてるの分らん?」


「そんな泣き方するんですか?蝉って?」


「マジで言ってんのか静那。」


「いやいや、だからって静那の聴き方が悪い訳じゃないよ。でも自分たちは何種類かの蝉は鳴き声を聴き分けられるから不思議だな~って。」



勇一がフォローを入れる。…がやっぱり不思議だ。



「じゃあこれからは注意深く聴いていくっていうのでどう?

私も帰国してからは虫の音が気になり始めたし。

それって恐らく聴ける環境…そう、環境っていうのも大事だと思うよ。

まずは鈴虫とかコオロギがいいかな。」



「それホームセンターで売ってるよな。」


「買うのはちょっと…でも季節はこれから暖かくなっていくから虫の音色が聞こえたら聴いてみる事にします。」


「うん、静那さん是非これからは聴いてみてよ。鈴虫の鳴き声なんてよく聴いてみればとても奇麗よ。

昔は秋になれば“夜長に虫の音色を楽しむ”なんて風情があったんだから。

…あ、今もあるか。」


「そんな風情は聞いたことないですね。」


「日本人ってそんな細かい音、いつの間に感じられるようになったんだろうね。」



そんな仁科さんの質問に生一が応えたりする。ちょっと斜め上の意見だが。


「昔、隠密や忍者とかおった時代から音に敏感やったんと違うか。かすかな物音にも気がつかんかったら寝首を掻かれるような緊迫した時代もあったやん。そこで生き残ってきた人の遺伝子…DNAがうちらには備わっとったとか?」


「なかなかマニアックな考えだけど、俺は日本人は虫の音色も音楽の一つだと思ってるから聴こえるんじゃないかって感じる。」



「そうかもね。私昔ロックバンドの友達に誘われてライブハウス行ったことがあるんだけど…あれはもう騒音にしか聴こえなかった。

みんなワイワイ賑わってたけどね。私には音楽と思えなかった。ただただ雑音だった。…多分そんな感じじゃない。」



「なるほど…楽器を奏でているような意識を持てば聴こえるようになると…

ちょっと楽しみが増えたような気がします。」


「忙しかったり、雑音だらけだと色んな事に耳を傾けづらくなるけど、ふと立ち止まったら意外といろんな“音”が聞こえてくるかもよ。」



「例えばあんな音とかか?」


生一が窓を指さす。



耳を澄ますと遠くで“ピーポーピーポー”と救急車がサイレンを鳴らしながら走る音が聴こえる。


「もう変な事言わないでよ。ねぇ静那さん」


「え…?あれって何の音ですか?」


一同「マジ?!これ何の音か知らないの?」

『B面』では、勇一達が立ち上げた部活「日本文化交流研究部」での日常トークを描いています。時々課外活動で外出もします。

各話完結型ですので、お気軽にお楽しみください。


尚、本編のストーリーとB面の話数は所々リンクしています。こちらを読んでから本編を読み進めていくとより楽しめます。


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