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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season1【A面】
49/228

24-2 敢行

【24話】 Bパート

※要塞内の内観や、仕掛けについては、ゲームソフト『SFC プリンスオブペルシャ』のステージ1~3を参考に見ていただけますとより鮮明にイメージできます。


この階から上に続く階段はどうやらあそこだけだ。


しかし、その手前に見張り兵が一人だけいる。


サーベルのようなものを携えて立っている。


中東の独特の曲がり…おそらく“シャムシール”という名前の刀剣だろう。



「キャプテン…あいつ刃物持ってやがる。」


「そうやな。でもそんなにガタイも良い訳やない。あの戦法で切り抜けるで、リーダー!」



この階の見張りはどうやら一人だけのようだ。


悩んでいる時間は無いと、小谷野は思いっきり突っ込んでいく。


見張りの男は急に飛び出してきた小谷野に驚くものの、すぐに腰のシャムシールを抜き構える。


しかし小谷野はお構いなしにタックルをかまそうとする。


シャムシールは月のような形をした薙ぎ払い専用の剣だ。


“突き”にはあまり向いていないと判断した小谷野は姿勢を低くしてマウントを取ろうとする。


その瞬間を狙い見張り兵は横薙ぎで切り倒そうとしてきた。


ここが小谷野のねらい目だ。


小谷野は相手の剣の持ち手“柄の部分”をとっさに摑まえる。


そのおかげで刀は小谷野に振り下ろされる前に止まる。


そこからお互いの力比べだ。


力負けしたら、そのまま刀が小谷野の肩口にめり込んでいくだろう。


純粋に相手と力比べしたらどうなるか分からなかったが、小谷野の狙いはそこではなかった。


徐々に力負けしているように剣でじわじわ体を押さえつけられていく。


しかしそれは剣先が下がっていくことも意味する。


「リーダーッ!」


叫ぶと同時くらいに小谷野の背中を思いっきり踏み台にして後ろから兼元が飛び込んできた。



そして変形の膝蹴りを勢いに任せ、相手の顎に向かってぶち込む!

(※今は1997年だが、この変形膝蹴りは後に“シャイニングウィザード”と呼ばれる技として日本でも広く認知されるようになる。)



小谷野の背中を跳び箱のような踏み台にして、一気に相手の顔面に膝を叩き込んでみせだ。


大成功だ。


直撃を受けた見張りの男性は思わず力が抜ける。


その隙を小谷野は見逃さなかった。


そのまま抱き着いて柔道の裏投げのような要領で投げ捨てる。


当然下はコンクリート製のタイルなので、頭から落ちた男は気を失ってしまった。


小谷野はこの先の事を考え、見張りの男が持っていた刀剣を拝借。


そして上に通じる階段へと進んだ。



振り向きざまに気絶しているであろう見張り塀に言葉を投げかける。


「安心しな。俺達の狂気は肉体一つさ。」


上層階へ続く階段。


これで一つ上へいける。


ただそんな事よりも、初めて即興で試してみた連携技が上手くいったことが2人の手ごたえとして感じるものが大きかった。




* * * * *




上の階に入る。


ここは兵士の休憩所のようだ。


飲み物が入っているであろう瓶がいくつか置いてある。


敵とのエンカウント…遭遇は覚悟した。


しかし、どうも武器庫が燃やされている今、その消火にあたっている兵士が多かったのか誰も居る気配がない。


しめたとばかりにこの部屋を駆け抜ける。



しかしやはり世の中は甘くないらしい。


数名がまだこの階に待機していた。


2人の山賊兵がまたシャムシールを抜き、こちらにやってくる。


「今度は2体2か…でもさっきのアレンジで行こう、キャプテン!」


キャプテンこと小谷野はすぐに理解した。



まずは元来た方向に逃げだした。


すぐさま2人の男が追いかけてくる。


しかし追いかけてくる男の足の速さには差がある。



やがて“真横に2人”ではなく“前後に2人”の隊列になった。


それを見計らって、小谷野は先ほど拝借した刀剣を前の相手に向かって投げつける。


いきなり刀が飛んできたのだ。


相手はとっさにシャムシールを大きく振りかぶり弾き飛ばす。


見事刀ははじかれ、刀は隅の方に飛んでいった。


万事休すと思われたが小谷野の狙いはそこではない。


男がはじき返したモーションの時には、すでに一足くらいの距離まで間合いを縮めていた。


そして刀を振り終わり隙だらけの状態に思いっきりエルボーバットをぶち込んだ。


鈍い音をさせて男は崩れ落ちる。


その様子を見て慌てて後ろの男が切りつけてくる。


しかしもう1体1だ。


冷静に状態を低くして突っ込み、振りかぶった刀の柄の部分を摑まえる。


先ほどの戦法のアレンジだ。


そして状態を低く降ろす。


その瞬間、またしても小谷野の背中を踏み台にして兼元が飛び膝蹴りをぶち込んだ。


正面からまともに膝をぶち込まれた男はぐらつく。


足に力が入らないのをチャンスと見て、小谷野はフロントのスープレックスのような恰好で投げ飛ばす。


頭から後頭部を打ち付けたようでぐったりしている。


そんなKO寸前の2人の腰から、刀剣シャムシールを抜き取る。


男達は“その剣で俺を殺すのか…”という感じでうつろな目を向ける。


しかしそんな事は本懐ではない。


さっきのようなけん制の為の“飛び道具”として使うだけで、人を斬る用途は考えていない。


刀剣を手に2人は先を急ぐ。


走りながら生一の言葉を思い出す。



「ええか、肉体じゃなくて剣とかナイフを武器にしてかかってくる奴ってのはな…刃先ばっかりに意識が行きすぎてんねん。

殺傷力がある部分以外の注意が足りてない。だから思いっきり懐に入って“束の部分”掴んでみろ。結構焦るから。」




「キャプテンッッ!」


首根っこを兼元に捕まれる。


ふと我に返ると数センチ先のタイルから勢いよく針が飛び出してきた。


「気をつけろよ。お前他事考えてただろ…」


「すまねえ。まぁなんだ…本当に嫌らしい仕掛けばっかだなってさ…」


「違いねぇな…この仕掛け作った奴、絶対性格悪いで。」


「ああ!作った奴は後で“釣鐘ストンピング”の刑にしてやる!」



* * * * *



どんどん要塞の中を進んでいく2人。


この階は兵士たちも往来する形跡があったので比較的広く道も一本道だ。


しかし後ろの方で声がした。


どうやら先ほど倒した2人の兵士のナリに気づいた輩が何人かいるようだ。


音からしてどんどん追いかけてきている感じがする。


その数は、2名…以上は確実にいる。


「まずいな…複数人かよ。」


「さっきの戦法でいくしかないぜ。1体1に持ち込んでやるやつ。」



しかし道幅は先ほども確認した通り狭くない。


先ほど見せた拝借した刀を投げつけて相手が弾く隙に踏み込む戦法も1体1の初見ならたやすいだろう。


しかし今回は複数名いる。


…どう対処すればよいのか。



「連続エネルギー弾とか打てたらなぁ…」


「お前、こんな時も飛び道具かぁ?余裕やな。複数に囲まれるかもしれんのやで。」


「分かってるって。…でもな、あの熊とかデブと比べたらまるで怖くない。負ける自信がねェ。」


「それ生一の好きなセリフやん。あいつ聞いたら怒るで…」


「かもなぁ。あいつセリフに妙なこだわりあるしなぁ。」


そんなやりとりをしている2人がいる。


絶体絶命という言葉にしては物足りなさすぎるシュチエーションだからだ。



やがて見張りの男たちが刀剣を腰にやってきた。


全員ターバンを巻いている。



2…3…4…人。


たった4人か。


早朝で、しかも武器庫の消火活動にかなり人員を持っていかれているのだろう。



ターバンの男達は2人がやられた事実を知っている。


うかつに近づくのを辞め、一旦距離を置く。


慎重だ。


そして4人で大きく囲みながらじりじり2人に迫ってきた。


小谷野はある程度間合いが近くなってきた瞬間、壁にあったロウソクをとっさに4人に向けて投げつける。


床に落ちたロウソクが消える。


視界が悪くなる。


“その時”がねらい目だ。


一瞬だが男4人は全員“ロウソクの火の一部始終”に対して目を向ける。


そこを逃さず2人はロウソクから一番遠い男に襲い掛かった。


殺しはしないものの、腕を突いて怯ませた隙に小谷野は持っている刀をはぎ取る。


あっという間の出来事だった。



視界が悪い中でのアクションは圧倒的にこちらが上のようだ。


これで3対2。武器を持っている相手に対してだが。



尚も視界が悪い。


背後から兼元が襲い掛かる。


一人の男の後ろに飛び掛かり、首元に手をやる。


男は首を切り落とされるのではないかとビックリして急いで両手を首にやる。


そこを利用して難なく腰のシャムシールをサッと抜き取る。



これで武器を持った男は2人になった。


この段階でマズイと感じたのか、引くことを決断した男達。


急いで引き返していく。


増援でも呼ぶつもりなんだろうか。


引き返していく時、横から勢いよく炎が彼らに浴びせられた。


『ギャアアアアアァァ!』


髪や服に引火し、男達は転げまわる。


火傷と混乱で暫くは冷静に居られないだろう。


一番叫んでいる男の頭を思いっきり蹴り飛ばし、意識を飛ばした。


その主犯の男が陰から姿を現す。



「いきなり視界が暗くなったからどうなったかと思ったわ。待たせたな!」


武器庫から拝借した火薬を使い援護射撃してくれた“ボス”こと生一がここで合流した。




* * * * *




さらに上の階に出たものの、ここはどうやら見張りが居ないようだ。


でも地下に連行された時にここは通った覚えがある。


この上へ行く事ができれば、そこは宮殿内部だ。


宮殿内部につながる階段ということで、その扉は固く閉ざされていた。



「宮殿に続くトビラは…確か兵士がこの真上あたりでスイッチ押してたの覚えてる。

多分やけどスイッチにつながるルートはあっちやろう。」


ここの回廊はやたらと広い。


日の当たる場所まで出られるため、トビラを開くために難解な仕掛けがあるようだ。


高いところに上った生一は2人に指示する。


「ここがスイッチやねん。」


押すとかなり向こう側の鉄格子が開く音がする。


しかし一定時間が経つと鉄格子がゆっくり閉まりだす。


「このスイッチを押してから、急いで向こうの鉄格子まで走っていかなあかんみたいやねん。

落ちたら即死の穴とかあるけど飛び越えながら急がんと鉄格子が閉まる。

躊躇はできんいう事やな。」


「なるほどな…で、どうする。3人で行くか?」


「いや、鉄格子の前が崖やん。飛び越えていかんといかん。だから俺一人で行く。上階へのスイッチ押して帰って来るから、お前らは見届けといてくれ。」


ここの階層内を探索していた分、随分時間を食ってしまっていた。


急がないといけない。


生一はスイッチを押した後、全力で鉄格子向けて走る。


2人も途中までは後を追う。


落ちたら即死の足場を飛び越え、だんだんと閉まりつつある鉄格子に近づく。


鉄格子は徐々に閉まり始めていた。


「(よし!間に合う)」


最後の崖を飛び越えて鉄格子前に着地しようとした時、思わぬアクシデントが起きる。


足場がグラッとしたかと思えば崩れたのだ。


落ちる床だ!


生一は走っていたがその足場の影響で体制を崩す。


そんな不完全な状態で崖をダイブすることになったのである。


「ビタン」 と向こう側の壁に思いっきりぶち当たる生一。


とっさに鉄格子前のタイルに手をかける。


宙ぶらりんの状態だ。


下には針山。


手を離すと真っ逆さまに針に突き刺さる仕組みだ。


下の針山に注意を向けている間になんと鉄格子は閉まり切ってしまった。


大ピンチである。


上に上がろうにも閉まっていて入れない。


「大丈夫か!生一!落ちるなよ!」


両腕で必死にしがみついている生一。向こう側に居る兼元と小谷野に叫ぶ。


「おい!

急いで戻ってもう一回スイッチ押してこい!

早くしろ!早く!

変な体制で体ぶち当たってもうて、もう腕限界やねん。」



「え?」という表情を見せる二人。



「早くしろって言ってんだろ!腕が…ヤバいねん!早くッ!あなたが思うより限界ですッ!」



「スイッチって…向こうの!」



「それ以外にどこにあるよォ!急げぇぇぇぇ!」


脂汗をかきながら生一が腕を震わせながら必死で訴える。


「(くッそう!人間って奴はなぜこうまでも残酷な事を考えつく…これを他のもっと平和的な事に活かせばええというのに…)」



「待ってろボス!」


30秒くらいして鉄格子は再びカラカラカラと開いていく。


命からがらという感じで生一は状態を起き上がらせて先に進んだ。


振り返ってから2人に指示する。



「死ぬか思ったぞ!もっと早うせえよボケェ!ったく!

今からスイッチ押しに行って戻ってくるから!

お前らは上層部に続くトビラん前で待っとけ!」



指示通りに動いたものの遅かったので生一はあきらかに不機嫌だった。


相当焦ったのだろう。



* * * * *



上層階へつながる扉がついに開いた。


生一がどうやら上の方でスイッチを見つけて押してくれたようだ。


程なくして戻ってくるだろうと待っていた。


しかし、


「ぎゃあアアアアアアアア!」


ものすごい悲鳴が聞こえた


生一の悲鳴なのは間違いないが、敵に見つかって切り殺されたような感じではない。


何かに驚き怯えるような声だ。


何が起きたのかと2人に緊張感が走る。



しばらくして生一の姿が見えた!


“無事だったか”と思ったのも一瞬。後ろから骸骨がヨタヨタ追いかけてきているのだ。


「しーーぎゃーーぴーー!」


「うわーうわーうわー!」


「うわあばばおびょー」



2人も凄い形相で逃げ出した。


骸骨が起きあがってこっちに向かって襲ってくるなんてお化け屋敷でも高等な技術が必要だ。


誰もいないこの層で、3人の悲鳴だけが響き渡った。




* * * * *




「ええか…。腕をこうやってクロスさすねん。


そんで足もこうクロスさせて内に入れ込む。この順番で裏返したら…ほれ!“パラダイスロック”の完成や!」



「おおお~」


兼元と小谷野が思わず拍手する。




あの悲鳴から数分後、落ち着いた3人は冷静に対処にかかった。


まず骸骨剣士の骨太郎(仮名)を捕獲。そして手の部分に膝を落として、持っている刀を弾き飛ばす。


素手になった骨太郎に殺戮の手立ては無く、ウロウロ歩くだけになった。


でも色々突っかかれても困る。


骨でウロウロされても困る。



そこで生一が考案した“パラダイスロック”で骸骨を動けないように捕獲したのだ。

(※“パラダイスロック”に関してはサイトより検索して頂けますと幸いです)



固められても尚ガタガタ小刻みに動く骸骨に対して生一は頭をスパーンとはたく。


「大人しくしとけボケェ!ったく死ぬほど驚かせやがってからに…怖いやろうがい!」



スクッと立ち扉に目を向ける生一。


階段を駆け上がる…そのまえに骨太郎の方に目をやる。


「おまえがどういういきさつでこないなったんかは知らんけどな…なんか無念さがあるなら俺らが晴らしたる…。全て解決したらな………ちゃんと成仏せえよ。」


そう言葉を残し、階段を駆け上がっていった。

【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は大いに勇気をくれます!


現時点でも構いませんので、ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂ければ非常に嬉しいです!


頑張って執筆致します。よろしくお願いします

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