63-2 〈幕間〉暗躍する兵器
【63話】Bパート
数日後、軍の指揮官から直接呼出しを受けたフリート君。
“何の呼び出しなのだろうか?それとも今までとは違う形の極秘の任務か?”
そう感じながら施設内の本部へと向かったフリート君。
そこには監獄の時からお世話になっていた院長らしき大人が数名座っていた。
今までの彼らの行いに対して“お世話になった”とは言い難いが、一応衣食住を提供してくれた人だ。
そして唯一の話し相手である。
「わざわざ来ていただいて悪いね。こちらの方に座ってくれ。」
そう言って院長はフリート君を広い机の前まで案内した。
「こちらの写真を見てほしい。」
そしてその机の上にあるもの…“今年3月にイラン南部で起こった旅客機墜落事故”の記事と写真を見せられる。
事故現場跡を撮影したであろう写真が何枚か並べられていた。
機体の頭部はほぼ損傷していて原型を留めていない。
だが、墜落してかなり時間が経っているように見える。
恐らく墜落してから数週間後に現場撮影されたものだと推測できる。
「何故イラン南部の写真を?」
随分とここから離れた場所での出来事だ。
“この事件が今の自分と何の関係が?”という表情で院長他大人達を見つめるフリート君。
それらの写真を何となく見ていると、ふいに院長がフリート君に問うてきた。
「これは…誰がやったのか分かるかね?」
とある写真を指さした。
「!?」
飛行機の機体後方部が機械でもないような見事な切り口で奇麗に切断されている写真を見せられる。
「信じられないが、墜落の最中に誰かが脱出する為機体を切断したのだろう。
だがとっさに“こんな切り方”が出来るのは世界中を探しても君くらいだ。」
そう言いながらじっとフリート君の目を見つめる。
写真越しでもこの切り口に見覚えがある。
自分くらいしかこんな芸当は出来ない。
出来るとしたら袂を分かったもう一人の…
フリート君は表情を悟られまいと必死に平静を装う。
「……さぁ…誰がやったんでしょうか…。
自分はここ(施設内)に居ましたし、この時期の任務も国内に限られています。」
分からないとシラをきるが、所詮は子どもの立ち振る舞い。
院長や幹部ら大人達には動揺が見抜かれていた。
「…そうか。急に呼び出して野暮な質問をして悪かったよ。
君なら何か知っているかもしれないと思ったんだけどね。
分かったよ。
自室へ戻っても構わない。
ご苦労だった。」
* * * * *
フリート君が自分の部屋に戻った後、大人達は話し合いを始める。
「確か7年前に殺害したとの報告だったが、一番日が浅かったとはいえ訓練は一通り受けていたんだ。
どうやら死なずにどこかで生きているらしい。
消息を急ぎ調べろ。
あのベラルーシから連れてきたもう一人の女。
アメリカ軍の手に渡る前に所在を調べ連れ戻せ。
そして“彼”にはこの事は知らせるな。」
「彼が感づいたらどうする。」
「少し趣向を変えた任務を与え、注意を逸らせる。
極東方面への開拓任務だ。
開発の警備員として暫く僻地へ従事させろ。
“向こう”も基地を壊滅されたばかりだ。暫くは事を動かそうと無理に仕掛けて来んだろう。」
「そうですね。
休暇を与える意味も兼ねて、離れてもらうのがいいな。」
* * * * *
一方自分の部屋に戻ってきたフリート君。
先ほどの大人達から向けられた視線…
何とも言えないような不安感が心の中をよぎる。
不安をかき消すように机の引き出しからシーナの髪を取り出す。
無意識に髪をじっと見つめながら訴えかけていた。
「シーナ…今一体どこに居るのか分からないけど…無事でいてほしい。
どうか生き延びて幸せになって…いてほしい。」
その訴えは祈りへ変わっていた。
軍から次の任務指令が入ったのは次の日の朝だった。
「屯田兵…の警備ですか?」
「そうだ。極東の開拓事業はエリアが広大だ。
異国から流れてきた不審者も多い。
その為、今回遠出にはなるが君には開拓民たちの警備をお願いしたい。」
「随分…遠くですね。」
「しかし任務は任務だ。
国内で無下にしても良い地方など一つも無い。
どんな小さな村だろうが大切な場所だと認識して警備にあたってほしい。」
「分かりました。
…その、こちら(本部)の方は?」
「相手側も先日の件で懲りただろう。
もうじき冬に入る……
暫くはこちらを脅かす事もないと予想している。
緊急の場合は戦闘用のヘリを飛ばして君を迎えに行く。」
「…分かりました。」
「この広い国と国境を守るには君の力が必要だ。そこは信じてほしい。」
その言葉に返答をするわけでもなく、フリート君は黙ってシベリア鉄道へと乗り込んだ。
これから『バハロフスク』手前までの移動となる。
距離で言うと9000km近くだ。
凍てつく季節の中、鉄道で延々6日間の旅となる。
しかしロシアの鉄道は最も信頼できる移動手段の一つである。
除雪列車も時折走らせながら常に路線管理を行っているので心配はない。
列車に乗ってすぐ。
日中にも関わらずフリート君は自分の荷物をまとめると早々と床に就いた。
「(皆、行ってきます。あの悲劇を二度と繰り返さないためにも自分にやれる事はやる。)」
淡々とした表情でフリート君は一人現地へと赴いていった。
SEASON3 は終了となります。
本編はこの後、最終SEASON4へ入っていきます。
欧州の様子は現地取材を経てリライトをする予定です。
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