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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season1【A面】
19/224

9-2 日本人ってややこしい?

【9話】Bパート

➡静那達の部活動の様子『日本語文化交流会編』は《B面》にて掲載しています。

学校が終わり、放課後を告げるメロディーが流れる。



授業も大事だが静那にとってはもっと大事な放課後タイムだ。


これから勇一“部長”の元、日本について色々と生で話し合える活動が始まる。


5年間日本に住んでみて、日本語は話せても日本独特の文化や風習に関しては分からないことがまだ多い。


ニュースやラジオからの情報だけだとどうしても分からない事がある。


生の体験や他人の話を経ないと分からない事、気づけない事だってある。



以前、諭士さんに言われた言葉を思い出す。



『これから出会う友達と、色んな“知らない”を分かちあうのが素敵なんじゃないのか?

すべての事を知ったかぶるよりも、知らないことをさらけ出して素直に飛び込んでみよう。

今日はその初日だ。』



…そう、今日はその初日だ。


どんな部活、どんな交流会になるんだろう。ワクワクしながら2階の部室へ急ぐ。



途中、静那は部室につながる曲がり角付近でロングヘアーの生徒に呼び止められた。


静那よりも15~6cmくらい背が高い。女性にしては長身だ。


「武藤…静那さんですか?」


「あ、はい。静那です。あの…」


「椎原と申します。三枝先生から話があったと思うけど、今日からこちらの活動に参加しますので、よろしくね。」



静那の顔がパアアと明るくなる。


この人が今日から私たちと一緒に部活に参加してくれる人…。


背が高いけど優しそうな眼差しだった。


ここに来るまで茶道をたしなんでいたという事だからなのか、日本の女性らしいしなやかさ…気品がある。


「あの、私はベラルーシというところから来て…その…」



「まぁ自己紹介は部室内でやるってのでどうだ?」


部長の勇一が後ろから遅れてやってくる。


まず椎原さんに挨拶。


「椎原さんですよね。ありがとうございます。こっちに参加してくれて。」


「白都君ね。部長だって聞いてた。」


「まぁ成り行きなんですけどね。三枝先生決断が早くて…決めたら後はサッとこっちに振るみたいな。」


「多分そんな流れだと思った。」


少し笑う椎原さん。


彼女の勇一からの印象としては、とにかく穏やかな表情で優しそうだ。背が高いいやし系という感じ?


西山はああいう癒しの雰囲気を持った女性が好みなのだろうか?



とはいえ、あまり初対面の女性をじっと見るのもなんだということで、部室内に2人を案内する。



ドアを開けて部室に入る。


生一は既に来ていて、また漫画を読んでいた。


「なんだよ。いるんならドアと窓開けといてくれよ。」


「いや勇一以外に先公が来るかもしれんやん。一応用心して閉めておかんと。」


「漫画、見つかったら没収だからか…」


勇一もどうやら生一の会話のペースをつかみつつあった。


まぁそれよりもまず伝えたい事があった。静那に。



「自己紹介の前にだけどさ。今日は椎原さん以外にももう1名新入部員が見つかった。

仮入部というか期間限定みたいだけど、面白かったら継続してくれるかもしれない。

近くにいるからすぐ呼んでくるよ。

ちょっと待ってて!」



「もう1名増えたんですか?勇一すごーい。」


イメージ通り、静那は目を輝かせて喜んだ。


いつの間にか彼女を喜ばせる事がやりがいになっている気がする。


静那は嬉しい時は本当に素直に嬉しさを表に出してくれる。


自分が誰かの役に立っている…という“承認欲求”を得られるからなのだろうか?


勇一はその辺はまだ深く考えていなかった。でも部員が増えると確定した時に真っ先に静那の嬉しそうな顔が思い浮かんだのば事実だ。




* * * * *




やがて勇一はそのもう1名を連れてきた。


西山だ。


少し緊張気味に部室に入ってくる。そしてすぐに彼に気づく椎原さん。



「あれ、西山君…生徒会の?」


「うん。こんにちは椎原さん。と静那さん…だよね。始めまして。これからー」


「なんか俺どうやら空気みたいやな。」


やや不貞腐れている生一。


「まあまぁ、でもお前隅っこでマンガ読んでたら分からんって!ホラ、クラス7の生一もいるよ。」


勇一の呼びかけと同時に生一に駆け寄る静那。


「ボス!こっちに来てください。自己紹介しましょう。」


「めんどいなぁ。」


「でも私ボスの事だってまだよく知らないですもん。是非ボスの事、知りたくて…なにとぞ!」



いつの間に“なにとぞ”なんていう言葉を覚えたのだろうか…


生一は、“まぁええか”とばかりにこちらに椅子ごと移動してきた。


大きめの机の周りに5人の輪ができる。




「まずは、皆の自己紹介にーー」


勇一が話し出した途端、部室のドアが勢いよく開いた。



「すいません!白都君の立ち上げた部活ってここで合ってる?」


勢いよく入ってきた女の子。


彼女は転入生で勇一と同じクラスメイトの仁科さんだった。




* * * * *




突然部室に入ってきた仁科さんという女の子。


彼女は勇一と同じクラス。


勇一と普通に会話を交わした事のある数少ない知り合いだった。



彼女も編入で今年2年からこの高校にやってきた為、部活をどこにしようか決めかねていたらしい。


「部活どこ入ろっか…」という話し声がクラスのお昼休み時に聞こえていたのを思い出した。



とりあえず返答。


「仁科さん?

部活はこれから始まるんだけど。その…うん、ここが部室だよ。」



さらにクラスが同じということで西山もフォローを入れる。


「仁科さん、ここに来てくれたってことは一緒に活動に参加してくれるってこと?」



「うん。…いいかな?

三枝…先生がこの部活教えてくれて…やりたい事が見つからないなら内申点上げてくれるからここにって…」



「内申点か…フン、現金な女だ。」


「ちょっと!なんであんたにそんな事いわれにゃならんのよ!」


小声でつぶやく生一に向かって仁科さんという女性は突っ込んだ。


そんな空気をものともせず静那が仁科さんの元へ駆け寄る。



「あの。私、静那と言います。詳しくは後で自己紹介しますけど、是非一緒にこの交流会に参加してください。お願いします!」


目を輝かせている。



仁科さんはその眩しさにあっという間にやられてしまったようだ。


「えぇ…私が何か教えられる事ってあまりないかもしれないけど…よろしくね。静那さん。」


「やった」という顔で勇一の方を見る静那。


「トントン拍子で集まっていくな~」とばかりに目を丸くする西山。



文化交流会を立ち上げた段階でもうメンバーが6人まで集まったのである。


そして部長に勇一。


3人ならどうとでもなると思っていたけど、いきなり倍…


自分なんかが部長として務まるのだろうかとやや弱気になっていたが、位置的に対面に座っている静那があまりにも嬉しそうな顔をしていたのでその気持ちも吹き飛んだ。



「(そうだ。

この部活は彼女に日本を知ってもらって、日本を好きになってもらいたくて立ち上げたんだ。

純粋に彼女の力になりたいと思った…こんな感じで誰かを喜ばせたいと感じる気持ちになったことは無かった…。

だから今感じている自分の気持ちに正直に向き合い、できるところまでやってみよう。)」


無理そうだったとしてもきっとメンバーの皆が助けてくれる。


そう感じ、改めて自己紹介を始めた。




* * * * *




部活初日。


この日は1日かけて各々の自己紹介を行った。



静那があまりにも皆の自己紹介を興味津々で聞くものだから、話す側もしゃべりやすかったようだ。


勇一だけではここまで話が盛り上がらなかっただろう。




静那に関しては、今は無きソビエト連邦時代で“ベラルーシ”というところからやってきたという事。


戦争で家族が行方不明になっている事。


いずれかは捜しに行きたいと考えていることなど、自分達の知らない彼女について知る事が出来た。


戦争を知らない自分にはまだそのリアルさは分からない。


他のメンバーはどう感じたのだろう。


戦火から生き延びてきた彼女には家族と再開して絶対に幸せになってほしい…この時、そう感じたのは勇一だけじゃないはずだ…と。




椎原さんはアメリカにいたのだが、主にはカナダのトロントから。


仁科さんは東京。


生一は関西。


…と結構うちの部員は色んな所出身だというのは意外だった。


西山だって生まれは岡山だし、この部室で生粋の高知県民は自分しかいない事になる。



でもその分みんな違った環境と文化に触れてきているのだ。


静那はそんな皆の“違い”を是非知りたいとしきりに言っていた。



「みんな違うって良いよね。」



静那はそう言う。



しかしそんな風に考えたことが無かった。



なんとなくだけど、似た者同士がくっついて違うものはいがみ合うものだと感じていた。



だから静那や静那達と話をする時は、自分の常識を一旦止めて、ニュートラルで聞いてみようと思う。



そういうワケで、これからは日本についてなら何でもいいので、みんなで順番にテーマを決めて、静那、そして椎原さんに向けて発表するという部活動形式で活動内容は決定した。




* * * * *




第一回目の部活を終え、今日はひとまず解散。


帰り際、仁科さんが勇一に小声で言う。


「白都君さ、急に押しかけたりして迷惑じゃなかった?」


「全然。むしろ嬉しかった!

俺あまりしゃべる方じゃないから、仁科さんウチに入ってくれなかったらこんなに絡むことも知ることも無かったと思うし。」



少し間を置いて


「静那、すごく喜んでた。ありがとう。」


仁科さんにお礼を言う。



「…呼び捨てにしてるけど、静那さんってカノジョ?入学前からの?」


「いや、俺にもあの子にもまだそんな意識は無いと…思う。」


「じゃあ頑張んなよ。西山は頑張ってんだから。」


「え?なんで知って…」


勇一が問う前に仁科さんはサッと帰っていった。



「(女のカンは恐ろしい…男が思っている以上に女の洞察力はするどい…。)」


勇一は女の恋愛戦闘能力の高さを思い知った。


これくらいの年ごろになると、こと恋愛に関しては男子よりも女子の方が高い戦闘力を誇るというのをどこかの雑誌で読んだことがある。


静那本人は…心底自分を信頼してくれているのは間違いなさそうだが、それ以外は自分の事をどう思っているんだろうか?


好き?…いやいや先日あんな情けない姿を晒してしまったワケだし、そうはならんだろう…まぁ…今は…今のところは…と頭を落ち着かせる勇一。




帰る前に勇一と静那は、メンバーの名前を書いた名簿と活動申請書を三枝先生のいる職員室に持っていく。


三枝先生は職員室に入るなり“どうだった?”という感じでニヤニヤしていた。


サプライズでさらに仁科さんをメンバーに加えてくれたのはどう感じていただけたのだろうかという表情だ。


静那はとても嬉しそうに三枝先生にお礼を言っていた。


何度も。



「この子は気持ちを前面に出すから気持ちいいわ。なんか応援してあげたい気持ちになるよね。白都君。」


勇一を見て先生は話す。


「ええ…まぁ。」


少し照れて返す。でも事実だ。



一応今のメンバーは6名。でも西山は生徒会メイン。


「まぁ、ただメンバーが集まればいいってもんじゃないからね。内申点は考えてあげるからきちんと自分たちの学んだ事を静那さんに教えてあげるのが大事。


言っとくけど、分かってないと人には教えられないからね。

それに自分の意見をきちんと言語化して伝えるってことは普段から練習が必要。

“知ってる”のと“説明できる”のって全然違うからね。

やれば分かるけど。

そういう狙いもあってあなたにこの活動をさせてみようと思ったのよ。


椎原さんかな…あの子は優秀だし日本の事も十分知ってるから、初めは彼女にフォロー入れてもらいながら進めてもらうのがいいかな…。」



「そうですよね…まずはカンタンな文化紹介からやってみようかと思います。」



「そんな“日本文化を~”って堅苦しくならなくてもいいのよ。初めはカンタンな雑談からでいいんだから。」


「雑談でいいんですか?」


「ダメ。」


「ダメじゃないですか!」


「何かに結び付けるためには雑談も大事ってことよ。“テーマを決めて雑談”してみなさい。」



まぁここで説明してすぐに理解できるとは思っていなかったようで、三枝先生はここでとある提案を出してきた。



「2人は来月のGWゴールデンウィークはどうする予定なの?」


急に予定を聞いてきた。当然まだフリーだ。



「実は先生方のネットワークで、日本の歴史や文化を集中的に学べる合宿があるんだけど~

静那さんに本気で伝えたいと思うのなら、参加してみなさい。静那さんも学びたい気持ちがあるならもちろん行ってきて良いのよ。ただし予算の関係で今回は3名までかな。」



「合宿って、泊まり込みの起きたり寝たりするやつですよね…」


静那は興奮すると言葉(日本語)がおかしくなる。


「静那さんは合宿は初めて?」


「はい。」


「じゃあ楽しんで行ってくるといいよ。」



「合宿ですか…今のところ予定は開けられますが、3人っていうと…静那以外のメンバーは?」


「もちろん国語の成績が下位の白都君! そして藤宮君。そして静那さんというところかな。」


「生一は多分逃げそうですよ。」


「あーあの子は赤点だったから、参加することで追試をクリアってことにすれば行くでしょう。」


「はぁ…(生一の奴、弱み握られてるなー)」


「先生。じゃあ私も合宿に行けるんですね。行っていいんですね。」


「ええ、日本の事について学べる素敵な機会だから行ってらっしゃい。場所は熊本県でちょっと遠いけど、大丈夫?」


「熊本…?」


静那の顔が少しこわばる。


表情を見た感じ静那はどうやら熊本に居たことがあるみたいだ。


「場所はねぇ…熊本…の『国立阿蘇青少年交流の家』ってとこ。自然の中で朝から夕方までしっかり勉強するのよ。」


「勉強かぁ…」勇一はあまり乗り気ではない。合宿はどちらかと言うとアウトドアの開放的な環境で遊ぶイメージが強いからだ。




静那にとっても熊本はどちらかと言うとあまり良い思い出がない場所である。


自分の勘違いから恥ずかしくて消えてしまいたい過去もある…が、今は心強い仲間もいる。


合宿には2人の心強い先輩が同行してくれる。


そう感じると何だか前向きになれた。


そして、3カ月ぶりの里帰りが決定した。

【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は大いに勇気をくれます!


現時点でも構いませんので、ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂ければ非常に嬉しいです!


頑張って執筆致します。よろしくお願いします!

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