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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season1【A面】
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7-1 父の面影

【7話】Aパート

ーーーこれは、これから登場する“とある高校生”の回想ーーー


学生生活………いつもなんとなく生きていた。



高校に入ってもやりたい事なんて特になかったし、何かをやってみたいとも思えなかった。



殺風景な学生生活。代り映えしない授業。



人よりもなるべく目立たないようにして、これからも何となく周りと同調しつつ無難に生きていくんだと思っていた。



誰かと深く付き合うつもりもなく…



…でも何でだろう。“あの時”なぜか助けなきゃって感じた。



困っている人の助けになりたいなんて、今の何に対しても無関心な自分からしたら背伸びしすぎた考え方だったのかなと思う。



でもほんの少しの勇気で…体は驚くほど自然に動いてくれた。



そしてその“彼女”に会ってから…自分の見ていた世界はどんどん広がっていった…。


* * * * * * * * * *





「おばさんっ。行ってきまーす!」



元気よく挨拶をして、寮から走り出した。



ブロンドの髪が光に反射して靡く。



静那は15歳になった。






あれから熊本の寮を出ることになった。


寮母さんである堅田さんの従妹が、高知県の高知市内で同じような感じで高校生向けの学生寮を管理しているという話を聞き、伝手もあるということでそちらに移り住むことになったのだ。


諭士とは離れ離れになるが、寮内に電話があるのでいつでも相談は出来る状態にある。


九州・熊本県からは海を隔てた場所にある南国土佐…


高知県…



四国山脈にまたがるように高速道路が開通したものの、1995年現在は外界からやや隔離されているような感覚がある。


以前の東京旅行で懲りたのか、高校は都会から“最も離れた感”のある場所で、目立たずに生活がしたいという思いを伝え、諭士も了承した。


寮繋がりということで、手続きもすんなりいった。


普通なら異国の人間が住むということになると、高知県ではまだあまり前例がなかったため、手続きに時間がかかるのが既定路線と踏んでいたのだが…伝手というものは実に便利だ。




寮を出てすぐ近所の「江ノ口川」に出る。


その川に沿って町のある方角(東側)に向かって歩いていく。


外国人の滞在者がまだ少ないせいか、ブロンドヘアーの少女を物珍しく見てくる人もいる。



その為、路面電車が通っている歩行者が多い国道を歩いていくのはひとまず避ける。


まずは周辺の地理に慣れるため、駅までの道を把握するべく一通り歩いてみることにしたのだ。


高知市内には年が明けてからすぐに引っ越す予定だったが、関西では大きな震災が起こり、色々と予定が狂った。


それでもなんとか下見を兼ねて早めに引っ越した。



早めに越した理由…それはまだどの高校に通おうか決めかねていたのだ。


中学レベルの模擬テストは何度か行い、国語以外はそれなりに優秀だった。



余談だが、静那ら外国人からしたら“日本の国語”は非常に難易度が高いらしい。


ひらがな、カタカナ、さらに漢字とあるのに“古文”ときているわけだから、もう混乱していた。


国語だけは不安がある。


なのでどの高校でも編入試験を受ければ確実に入れるというわけではなかったが、静那自身が実際に日本の高校を見てみたかった。


今までは諭士が案内してもらった学校や施設に通っていた。


だけど少しずつ自立心というものが芽生えたのか「自分が通う高校は自分で決めたい」と申し出たのだ。




そんないきさつで散歩を兼ねて市内にある高校巡りをしている。


一番寮から近いのは商業高校…らしいのだが、あくまで色んな学校(自分の選択肢)をこの目で見てみたかった。


越してきたばかりで地図は無い。


“川に沿って歩いていけば駅に到着する”という堅田さんの話だったので、まずは川に沿ってそのまま歩いていった。



しかし川が公園らしき場所に差し掛かった辺りで、長身の男性に呼び止められる。


「お嬢さん一人?何してんの?」





ーーー再び“とある高校生”の回想ーーー


大変だ!


ベレー帽を被った長身の男性が、外国人の女性を呼び止めてどこかへ連れて行こうとしている。


下校中に自分は偶然にもその様子を目撃してしまった。


まず、驚き固まりながらも急いで隠れ、木陰から状況を見ていた。


誰か…と思ったが、周りに…通行人はいないようだ。



呼び止められた女性の方は外国人だ。珍しい。


髪の色が明らかに違う。日本人が金パツに染めているような感じじゃない、


そんな銀髪の華奢な女の子が困った顔で横道を進もうとすると、“行かせまい”と道をふさぐように男は回り込む。


男は上背があるので威圧感がある。


この華奢な女の子からしたら“壁”みたいに感じただろう…。



こんな状況に自分が実際遭遇するのは初めてだった。


次第に何とかしなきゃという焦りが心の中に込み上げてくる。



もう一度周辺を見回すが、人はいない。


男はその女の子を上から見下ろし、だんだん不機嫌そうな表情になりながら、尚も一方的に話し続ける。


「優しく言ってるのになんで分かってくれないの?ねぇどこか行こうよ。」という感じだ。


明らかに対応に困っている様子の女の子。


なぜか見ている自分の心臓の鼓動が激しくなる。


次第にうつむいて何もしゃべらなくなる外国人の女の子。



そんな対応にイラついたのか、長身の男性は急に彼女の手をつかみグイッとひっぱろうとした。


いきなりの事で驚いた彼女は体制を前に崩す。長身の男性の方へつまずくように前のめりになった。


女の子の方は驚きと困った表情で体制を引く。


でも男性はつかんだ腕を離さない。


尚も強引に引っ張り寄せようとしたとき、“自分の中”では信じられない事が起こった。



何が起こったって?


自分の体が「やめろォォォー」って叫びながら2人に向かって突進していた。


その勢いで男性を突き飛ばしてしまったんだ。


男性は勢い余って川へドボンだ。



「こっち!」



無我夢中だったんだろう。


自分では信じられないくらい大胆にも彼女の腕を逆につかんだりして…そして走り出した。


自分の通っている学校の校舎へ。


とっさの判断だ。



学校内に逃げ込んだらさすがに男も追いかけてこれないだろうなんて安易な考えをしていた。


でもとにかく逃げないと、あの男性が怒りでどんな手に出るか想像しただけでも怖かった。


川に突き落とされたんだ。


怒り心頭だろう。




彼女の方は…というと、つかんだ腕を離そうとせず、走ってついてきてくれた。



道をさえぎる物は…信号1つだけ。


点滅していたのでそのまま走って突っ切った。


南側。学校の正面に校門は3か所ある。そのうちの小さいほうの門をくぐり、校舎外からは見えない死角になっている建物へ2人で逃げ込んだ。



“ハアハアハア”


荒くなった呼吸を整える。心臓がバクバク言ってる。


こんな自分が大胆にもとんでもないことをしてしまったように感じた。


ここまで一連の流れは自分でも予想してなかった。


でも男性を突き飛ばした後は無我夢中だった。


普段はこんな事をしないし…考えもしなかった。


でも…不思議と体が動いた。


なんで体のせいにしているんだ…



そういえば彼女の方は…と、ふと見る。


既に彼女の方の呼吸は落ち着いていてどうという事もなく、少し心配そうにこっちを見ている。



ここで初めて彼女をしっかりと見た。


これが彼女…“静那”との初めての出会いだった。



運命を感じたなんてわけじゃない。でも何かこの子から不思議な感じがした。


なんだかこの子の力になってあげたいと思わせるような何かを感じた。


自分は情けないことに呼吸が落ち着くまで随分かかってしまったが、彼女を見ながらまずは問うてみる。


「大丈夫?」と。



「あ、はい。」



少し沈黙があった後


「あの、助けていただきありがとうございました。ここの高校の方ですか?」


その子が聞いてきた。


意外と自然な日本語だ。


日本で暮らして結構経つんだろう。かなり流暢に日本語を話すなぁ~と感心してしまったが、我に返る。


「うん。ここの学生だよ。あの…君が大丈夫なら、良かった。」


我ながら取り留めもない返答をしてしまったものだ。




…そしてだ………この後の会話が続かない。


何かを言わなきゃと思ってとっさに滅茶苦茶恥ずかしいことを口走ってしまった。


今思い返しても顔から火が出るようなセリフだ。


「その…髪がすごく奇麗で驚いた。イヤリングもとても素敵だね。」


自分は初対面の女性に対して何て事を言ってしまったのだろう…。自分ってこんなこと言えるような人間だったっけ?

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