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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season1【A面】
12/198

6-1 庇護が無いということ

【6話】Aパート

問答無用で追いかけてくる屈強な男達。


「後ろに回ったぞ!」


視界が悪くなっている中必死に逃げる諭士、静那、そして真也の3人。


誰だかわからないけど自分達が追われている。


狙われているのは確かだ。



東京中の救急病棟に「病院内にもし重体の女が運ばれてきたら、運び込んだ責任者を足止めしておけ!名前を調べろ!」とでも言われたのだろうか?


病院の後ろ側に回って裏側から逃げようとするが、相手の方が足が速い。


どんどん距離を詰めてくる。



なにせこっちは中学生が2人。


しかし静那は気丈にも諭士より先に逃げていた。中学生にしては驚くほど逃げ足が速い。


確かミシェルさんところは広大な鉱山が連なる広大な盆地。


きっとあの大地を毎日駆け抜けたりしていたのだろう。随分走り慣れている様子だったから彼女はよっぽど裏をかかない限り捕まることはないだろう。それに今回彼女に罪はない。



『静那っ!捕まらない自信があるなら先に逃げて隠れていろ!』



用心を兼ねて、彼女の国の言葉でそう伝えて先に静那を先に逃がす。


標的はおそらく彼女じゃない。…真也。いや、自分というスジもある。


でも今はなんとか逃げ切る事が先決だ。



後ろを見る。


10人くらいは居る。


諭士よりも一回りくらい大きな男達がすごい勢いで向かってくる。


町の外れとはいえ都内の建物街。拳銃のようなものはさすがに使用してくる気配はないようだが、体が大きい連中ばかりだ。


捕まって上から乗られてしまえばそこまでである。



普段から事務作業の多い諭士はさすがに覚悟をきめるしかないと考えるようになった。


もう全力で走ってあと1分くらいしかスタミナが持たない。



そんな息を切らした様子を察知してか、真也が言う。


「諭士さん。僕があいつらを足止めする!逃げて!

でも静那には絶対に足止めのために自分が囮になったなんて言わないで!約束して!」


意図は分かった。


静那にあの時の思い出をよぎらせないようにするためだろう。


こんな極限の状態でもなお彼女を気遣える彼の余裕はどこから来ているのか…しかし!



「真也だけじゃこの人数は無理だ。数が多い。それにッつ。」


息を切らしながら返答する。



しかし真也は譲らない。


「捕まったらヤバいんでしょ。だったら捕まらないようにするから、信用して!もう時間がない。」


確かに迷っている時間は無い。


後悔するかもしれないけど、意を決した。




「っつ………絶対だぞ。静那を悲しませるな!や…約束しろ!」


そう言って背中を真也に任せた。


まだ中学生…子どもなのに自分はなんて判断をしたんだ。大人が逃げる時間を稼ぐために子どもに身代わりになってもらうなんて…


今回の事件の全貌を整理する暇もなく何かから逃亡している今。


結果として子ども達を巻き込まざるを得ない状況になった後悔。



それこそこのまま明日まで逃げ延びて無事に熊本まで帰りつく事が出来るのか…


そもそも日本という平和な場所でさえこんな事件に巻き込まれるなんて思ってもいなかった。



祈るような思いで必死に人通りがまばらな住宅街までたどり着いた諭士。


明かりの下、肩でハアハアと大きく息をしていたが呼吸を整える為一旦歩きだした。



静那は恐らく先に逃げながら自分の位置を確認しているだろう。


“本当に安全になったと判断したら自分から手を挙げてポーズをとる。ポーズをとるまでは近くに居たとしても出てきては駄目だ”と伝えていた。



静那は大丈夫だろう。


しかし真也の方はどうなったのだろうか?


その後追手は来ていない。


でも真也がやってくる様子もない。




もしかしたら真也は…




愉士は考えたくないことを考えてしまい、急いで自分の中で全否定する。


彼は中学生にしては強い…かもしれない。


鍛えているというのは知っているが、どれだけ強いかは見たことがない。


それに…あくまで彼はまだ中学生だ…。


中学生という名の子どもだ。


体格だってまだ小さい。


大柄な大人数人に囲まれて取り押さえられたら明らかに不利だ。





そんな心配をよそに、暫くして真也が暗闇の中からひょっこり姿を現した。




目立った外傷は…無さそうだ。


「真也!お前大丈夫だったの…か…?」


近づいてくる真也が少し声を抑えるように口元でサインを出した。


「まだ大きな声出しても大丈夫かどうか分からないんで。しばらくは静かに移動しましょう。愉士さん。」


「そう…だな。うん。静かにな。」



手を挙げて合図をするとすぐに静那は現れた。



そしてどうやら追手は無事巻いたようだ。



小声で真也に話しかける。


「約束…守ってくれたんだな。嬉しいよ。」


真也は少し照れ気味に答える。


「そりゃ“約束して”だなんて痰火切ったような言い方したんだし…それに守らないと静那に何言われるか分からないでしょ。」


静那は約束がどうとかいう話を聞いて何の話か不思議がる。


でもそこは男同士の脱走作戦という事でごまかし通した。



そこから30分ほど静かに歩いた後、繁華街へ出る。


まだ夜中という時間帯でもなかったので、住宅街を抜けた飲み屋が立ち並ぶ繁華街は明るかった。




やっと安全な場所に出た…と、諭士の表情も緩む。



「この辺なら派手に絡まれることもないだろう。よし!今日はもうあそこで寝よう」


愉士はやたらとライトアップされたお城のような建物を指差す。



「あそこ?ってあの建物?なんかお城みたいな建物だね。それにすごいキレイ。このお城、何かの観光地かな?」



「諭士さん、あそこって本当にホテルなんですか?」



「そうだぞ。自分も利用するのは初めてのタイプなんだけど何やら広々としてて良いらしいぞ。」



やっと緊張感から解放された3人。


そのままその“お城のようなホテル”へと入っていった。




* * * * *




次の日、チェックアウトを済ませてからまず最寄りの公衆電話を捜す愉士。



真也たちが泊まった“お城のようなホテル”は、チェックイン&チェックアウトが無人で対応できるようになっていた。


まるで未来を先取りしたようなホテルだと静那はしきりに感心していた。


真也は部屋の中のパープル色の内装に何か妙な雰囲気を感じ取っていた。


ただ“お城”から出てもここはまだ東京都内。熊本まで戻るにはまだ遠い。


諭士達はまだ逃走中の身なのだ。



真也や静那には余計な心配をさせたくないので、帰りのチケットや電話などは諭士が一人対応する。


手続き関係は嫌というほどやってきた訳で、手際だけは早くなっていた。


肝心の公衆電話も見つかり、新幹線の切符を取る前に熊本へ連絡を入れることに。


寮母の堅田さんへ、これから3人で帰る旨を伝えるため連絡を入れる。


しかし電話の返答に愕然とする。




* * * * *




諭士が寮へ電話をかけるより前に、なんとあの茂木議員から電話を受けていたのだ。



堅田さんの話によると…


「今回の議案に関してだが、一度白紙にさせてもらえないかということ。

どうしても不可解だと感じる場合は、腹を割って話をしたいので、もう一度指定したホテルまでご足労願えないか?という事。

その時は今回来てくれた3人全員で所定の場所まで来てほしい。」という事だった。



……



先に回り込まれているという事。


そして、これは恐らく罠だという事。


組織のメンツを潰したであろう人物・真也を差し出せという事だろう。



本気なのか?真也はまだ子どもだぞ。


子どもだろうが逆らった人間は反勢力の政治家の様に殺してしまうもりなのか?


あの女子高生くらいの女の子が暴行された傷跡を思い出し、背中からの冷や汗を感じる。


あくまで組織の手下である茂木議員を使い、自分たちを呼び出し、何らかの処罰を与えるつもりだ。



相手は恐らく昨日自分達を捕縛しようとしたあのスーツの男達の団体だ。


捕まった後、どんな目に合わされるかはあの女の子の凄惨な姿が物語っている。


女・子どもだろうが、組織に逆らう存在には容赦しないのだろう。



そして、ここまで先回りされているのなら真也の“素性”も調べられているだろう。


親の庇護が無いということは、殺しても咎める人間が居ないという事ももちろん知っている…


だったら呼び出して銃殺でもするのか。


馬鹿な、ここは日本だ。



それに相手は今までお世話になってきた茂木さん。


これは本当に罠なのか?


子ども達2人は何が何でも守らないといけない。


しかし彼らは親の庇護が無い…いわゆる社会から守られていない“か弱い存在”なのだ。


自分が命をかけて守らなければ誰がこの子を守れるのか。


どんなに力が強くなろうと、権力の前では役に立たない。



それか、もう彼らのメンツなんて関係ない…このまま無視して熊本まで逃げ帰ればいい…今なら戻れる。


しかし戻ったところで相手はまだ誰だか分からないような組織。


昨日のように正体を現さないままどこまでも追ってくるかもしれない。熊本となれば親の居ない他の孤児院達までも巻き込んでしまう可能性が考えられる。


なにせかくまっている子は親の庇護が無い子どもばかりだ。




考えばかりが沸き上がり、受話器前でうずくまる諭士。


ホテルから出てまだほとんど時間も経ってないのに、すぐに最寄りの喫茶店で休憩となった。


真也も静那もまだ中学生ながらなんとなく気づいていた。


もうすんなり熊本には戻れないという事。



真也は自分のやったこと…取り返しのつかない相手に手を出したんだという事を感じていた。


昨日みたいに自分は対処して逃げられても、今後は周りを巻き込む可能性がある。そうなると静那にも…それは絶対に避けたい。


ならばいっそ自分だけが…


考えるほど表情が険しくなる。


そんな真也の横顔を心配そうに見つめる静那。



「大丈夫さ。静那は何も悪いことはしていない。心配することないよ。」


真也は気丈に振舞うが、静那は真也が心配だった。



それどころではないが、今日は自分の誕生日だ。


誕生日はみんながいてくれればそれで良かった。…大好きなみんなが元気で居てくれれば。




そして…


これまでの状況を整理して決断を下す時が来た。


2人を喫茶店に残し、諭士は寮母の堅田さんより教わった茂木議員の電話番号に公衆電話からコンタクトを試みた。

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