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生クリームを食べ終わって、苺を食べていると、カイルはにこにこしていた。
「……何?」
「いや、リースは苺好きだもんね」
苺はOLだった頃から好きで、こちらでもあればたくさん食べてしまう。私って、そんなにがっついていたかしら……?!
「好き……だけど……」
パフェを食べる手を止めると、カイルにまた食べるよう促される。
「幸せそうに甘い物を食べるのはいいよね」
私は恥ずかしくなって、顔が熱くなる。普通に切り替えしてくる彼に、なんて言葉を返そうかと、考えていた。
「……なぁ、そういえばマロウのばあちゃんは?」
そう言えば、マロウさんは、後から行くと言っていたのに、来ていないなぁ。ドレスを縫ってからとは言っていたけれど、来るって話していた筈……。
「私のドレスを大まかな部分を仕上げるとは言っていたけれど、時間かかっているのかしら……」
「マロウさんの事だから、しっかり縫製しているのかもしれないわね!」
「せっかく皆集まれたのに……」
私は食べかけのパフェを目の前に、スプーンが止まる。
「この後、皆で計画を報告しに行こうか」
「……うん」
カイルが言ってくれたので、
私達は、この後向かおうと思った。
デザートもしっかり食べて、私達はカイルに奢ってもらって、外に出る。
家の近くに近づいて行くと、私の家の周りで、数人の人がバタバタと慌てて走っていた。
「……何があったの? 人が沢山集まっているけれど……」
私が一月に一度、花配達をしている、床屋のマロマロの店主、ダーンさんも集まっていたので、私はダーンさんに声をかけようとした。ダーンさんは、振り向いて走ろうとしたけれど、私の顔を見ると、こっちまで走って来て、真っ青になって叫んだ。
「リースちゃんっ………………!!」
「ダーンさん、どうしたんですか? そんなに慌てて……」
「マロウさんが、倒れたんだ!!」
笑顔で私が聞いていると、ダーンさんは、両手で私の肩を強く掴んで言う。
私は、一瞬、頭の中が真っ白になる。
え? 何?
レオとノエミが慌てて、マロウさんの家に走る。ノエルも後を付いていく。
え…………? マロウさんが……?
ダーンさんは、何やら私に色々と言っていた。
だけど、私はその言葉が何も頭に入って来ない。
「近所の人達の話だと、マロウさんが、ラッテ通りに向かって歩いていたんだけど、急に胸を押さえて苦しみだしたんだ。それで、急に倒れて…………俺も周りから聞いて、駆けつけた。マロウさんは、家の中にいる。でも、意識がないんだ」
私は動けずにいると、カイルが、私に叫ぶ。
「リース!!」
強く手を握りしめて、漠然としている私を引っ張って、マロウさんの家に向かう。沢山の近所の人達をくぐって、私とカイルは部屋の中へと入って行った。
レオとノエミ、ノエルも先に中へと入っていた。
ベッドの部屋まで辿り着き、寝ているマロウさんを見る。目を閉じていて、静か。
私はマロウさんへと駆け寄った。
「………………マロウさんっ…………!!!!」
マロウさんは、ゆっくりと目を開ける。
ーー私は、良かった、意識はある……と安堵する。
ベッドのすぐサイドにしゃがみこんだ私に、マロウさんは言った。
「リース…………」
「マロウさんっ…………!」
私はマロウさんの疲れた顔を見ると、抑えきれず、泣き出してしまった。
「ごめんねぇ、心配かけたよ……」
「大丈夫なの?! 本当に大丈夫なのっ?!」
「大丈夫だよ、少し疲れただけだから……」
「マロウさん、医者は? なんて言ってたんだよ?」
レオは座って確認してくる。
「心臓の発作らしいわ。マロウさん、少し働き過ぎたんじゃないの?」
部屋の奥から、レオ達のお母さん、ガブリエラさん
が現れた。レオ達は、お母さんがいる事に少し驚いていた。
「母さん……弟達は?」
「ベーカリー屋根裏に一旦、預けて来たわ。仕事終えた後だったから……でも、丁度マロウさんを見つけられて、良かったわ」
ガブリエラさんはコップに水をくんできて、そっとマロウさんに渡す。
私はマロウさんの体をゆっくり支えて、ガブリエラさんと一緒に起き上がらせる。マロウさんは、少しずつ水を飲んで、ガブリエラさんに水が半分残ったコップを渡した。
「ありがとう、ガブリエラ。貴女のおかげだよ」
ガブリエラさんが、仕事を終えた後にマロウさんと会えて良かったと私は思う。もし、誰もいなかったら……と思うと、私はゾッとした。
「私は周りの人を呼んで来ただけだわ。本当良かった。マロウさん、またいつ発作が起きるかわからないし、暫く少し休んだら?」
「そうかもしれないねぇ……今までこんな事はなかったから、私も驚いたよ。暫くは養生しないとね」
「マロウさん……」
ぐずぐずと泣いて、べそをかいている私は、ガブリエラさんに肩を抱かれながら励まされる。
「そんな顔をしちゃいけないよ、私は大丈夫だから……」
「でも……」
「ドレスもおおよそ出来てきたからさ…………」
マロウさんは、ゆっくりと指さしをして、薄いカーテンが引かれた所にかかった制作途中のドレスを教えてくれた。
私は、このドレスを作ったから、無理が祟ってしまったんじゃ……と思い、そっぽを向く。
「行かないっ…………! 私、行けない………………!!」
ベッドに駆け寄り、マロウさんに抱きつく。レオは言う。
「でも、お前の人生がかかってるんだぜ」
レオはただ一言だけ言う。私は皆に背を向けて、マロウさんにずっと抱きつく。でも、苦しくなってはいけないと思い、私はすぐに体を離した。
「行けないわっ……!」
「リース……」
カイルは、私を呼んで、私の後ろに座って、私を見つめていた。何も言わずに、言葉を選んで考えているようにも感じる。
ガブリエラさんは、外にいる近所の人達に、マロウさんが目を覚ました事を伝えに出て行った。マロウさんが大丈夫な事を知ると、皆は安心して帰って行く。
後で来るよ、と言う人もいた。こうした様子を見ると、どれだけラッテ街にマロウさんが浸透して、人望が熱いのかがわかる。
ガブリエラさんは、すぐに部屋に戻ってきて、レオ達に言う。
「レオ、ノエミ。マロウさんも目が覚めたし、貴方達がいるなら、私はニコロとヤコポをむかえに行くわね」
「わかった」
レオは返事すると、ガブリエラさんはマロウさんに近づいて、頬に手を当てる。マロウさんは、ありがとうよ……と言うと、ガブリエラさんは微笑んで、帰って行った。
「……リース、気持ちはわかるけれど、あんたの人生がかかってる。あんたは殿下と一緒に行きなさい」
「嫌……! 体にまた何かあったら、どうするの?! ……マロウさんに何かあったら、私生きていけない…………マロウさんは、私の師匠なんだからっ」
「リース……」
ノエミは呟いた。だけど、カイルは言う。
「そうだよ。マロウさんの言う通りだ。今度を逃したら、リースはずっとこのままだ。罪人のまま、生きて行かなくてはいけない。マロウさんの事は心配だけど………………」
「行かないっ!! ……このまま、こんなマロウさんを置いていくくらいなら、私このままの生活でいいっ……!」
「リース!」
カイルは私に強く言う。だけど、私は、マロウさんが心配でならない。弱っている人を放っておけない。
「リース……行きなよ。私は大丈夫だよ」
「でも………………」
マロウさんは、手を伸ばす。私は、それを見て、素早くマロウさんの手を握りしめて、マロウさんを見る。マロウさんは、倒れた後の弱々しさとは逆の、強い目をしていた。
「行きなさい」
少しマロウさんは手に力を入れた。私は黙り込んで、ゆっくりと、こくり、と頷いた。
「マロウさん、無理しちゃダメ。ドレスの続きは、こっちで何とかしますから……」
「そうするよ。医者から薬ももらったから、あんまり心配しないでおくれ。年寄りが、また急に老けてしまう気がしちまうからさ」
にこりとマロウさんは優しく微笑んだ。
「そうだな、ばあさんは少し働き過ぎだから、ゆっくり休んだ方がいいなあ」
「ばあさんとは失礼だね、レオ。マロウさんって言いなさい」
「あ、悪ぃ」
「お兄ちゃん……」
ノエミはため息をついた。マロウさんは笑って、ノエミを呼ぶ。ノエミも近づいて話す。
「マロウさん、無理しちゃダメよ。貴女に何かあったら、リースが泣くもの」
「そうだね。娘達を悲しませたら、バチが当たるね……」
「マロウさん。ドレスはこちらで預かって仕上げます。ノエルも少しはできますから……ですので、安心して下さい」
「殿下……。安心したよ」
「私もしっかり引き受けさせていただきます」
カイルは立ち膝の格好、ノエルは敬礼をした。マロウさんは、それを見て安堵しているようだった。
「大丈夫、あんたには沢山の味方がいるよ……」
マロウさんは、私の頭に手を当てて、優しく撫でてくれた。
「マロウさんもよ」
私は呟くと、手をもう一度握りしめて、立ち上がった。ノエミも立ち上がって、私をぎゅっと両腕で横から抱きしめる。
「大丈夫だから、皆、家に帰りな」
皆、各々心配で仕方なかった。だけど、私も流石に泊まり込むのも申し訳ないと思った。行ける時に、私、レオ、ノエミ、カイル、ノエルで、順番に毎日マロウさんの様子を見に行こうと話した。もちろん、それ以外でも、見に行くと私は考えた。
「本当に大丈夫かしら……」
我が家にとりあえず皆集まって、話す。あんなに楽しかったカフェ・アネモネでの会合は、夕方にはマロウさんの一件で影を落とす。
「発作が起きた時に飲む錠剤ももらったようだから、恐らく大丈夫だろうね。けど、心臓が弱かったんだな……」
カイルは私に背を向ける形で話した。私も知らなかったと思った。何も変わりはなかったのに。
「でもよぉ、最近のマロウさん、太ったなぁーとは少し思ってたんだよな。浮腫んでたのか?」
「よく気づいたわね、お兄ちゃん」
「ほら、俺はあちこちまわっているから、マロウさんと顔合わせるのは、ほんのたまにだろ? 何となくーこの前歩いている所を見つけて思ってた。だけど、マロウさんは、お菓子も作るし、元々ふくよかだからさ」
「気づかなかった……私、殆ど毎日一緒にいるのに……」
「リース嬢のせいではありません。人の変化は側にいればいる程、気付かないものですから」
ノエルの励ましに私は感謝する。
「とにかく、スペラザに行くまで、マロウさんの様子を見ておかないとね」
「そうだね」
カイルも腕を組んで、頷いた。
心配はあるけれど、マロウさんに言われた通り、スペラザには行かなくてはいけない。それまでは、気を張っていかないと、と思った。
むむぅ、上手くもっと書けたらいいなぁ。
楽しく頑張っていきます(*´꒳`*)
宜しくお願いします。




