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悪役令嬢の私を探して  作者: アトリエユッコ
3章
82/161

38

 私はゆっくりと呼吸すると、少し落ち着きを取り戻す。

 レオは、そんな私の様子を何も言わずに見ていた。



「聞いて悪かったけど、このペンダントからも、あの畑と同じような力を感じるんだよね」


「へぇ、そうなの?」


 私はカメオを指でつまんで、くるくると左右斜めに傾けて言う。


「昔、リースがこういう作品を作っていたなら、今現在にも何か関係あるのかなーと思ったんだけど、そうでもないんだね」


「あぁ、そゆことね」



 私は、ワザとOLだった頃の、私の触れて欲しくない部分を確認したのかと思っていたけれど、まぁ、当然だけど違うよね。そんな事する訳ない。カイルが言いたいのは、もし私が転生者ならば、現世のリースが作品を作る事が得意でもおかしくない。という話だと思う。力について説明は出来ないけど……



「うん、ノエルは? どうかな……?」


「確かに……」


 ノエルもペンダントやイヤリングにも目を向ける。



「強力に感じるのは、一番はこのペンダントですが、リース嬢のイヤリングからも感じますよね……」


「何かしら? リースに関係あるの?」



 ノエミは、隣に座ってこちらをチラリと見た。カイルがうーん……と悩んでいると、レオが今朝の話を引っ張り出してくる。



「やっぱり……きっと、アレだな。リースはきっと聖女ってやつだよ」


「だから、違うって」


 何回言わせるんかい! と、また漫才師の古風なツッコミポーズを取る。でも、カイルは呟いた。



「聖女……かぁ……」


「ちょっちょっと、カイル! 否定してよ! だって、聖女の条件は……



 私が言い終わらないうちに、店の店員が外に出て来て私達を呼んだ。


「お待たせしましたー! スプレンティダ様〜」



「お、やっとだな。行くぞ」


「楽しみねっ! リース!」


 私は、訂正する暇もなく、店の中へと入る事となった。



「中もすっごく可愛いわねー!」


 ノエミは、席に座ると、ぴょんぴょんと軽く跳ねながら言う。


「外にいるんだから、あまりはしゃぎ過ぎんなよ」



 レオはお兄さん風を吹かせて、ノエミのお団子を握った。ノエミは、キッ! と、一瞬睨んでお団子を直した。


「子供扱いしないで〜」



「今日は僕が皆に奢るよ。好きなの頼もう」


 カイルはメニューを開いて言った。目の前にして、カイルを見つめる。


「大丈夫なの?」


「うん、まだ派手な事は出来ないけれど、金銭については国王陛下の許しが出たんだ」


 ノエルは補足するように、言う。


「カイル様は、リース嬢の爵位返還の為、鍵と言われるモノをようやく見つけたのです」



「えっ?! そうなの?! カイル王子様すごーい!!」


「ありがとう、ノエミちゃん」


「じゃあ、リースの無実を証明出来るのか! お前、やったな!!」


 ガロ兄弟は、感動して二人で喜んだ。

 私は先にマカロンをプレゼントした時に、ノエルからさらっと聞いていたので、割と落ち着いていた。



「まだ、うまくいくかは、まだわからないよ。だけど、アレを使えば、恐らくうまくいくと思う」


 カイルは、メニューから少し半分出ている顔を厳しい表情にする。藍色の目が、今まであまり見た事のない鋭さに変わって、私は少し不安になった。



「誰かを陥れる事はしないでね……」


 誰も傷つけたくはない、と思った。この世界に私は元々存在しない。だからこそ、本来のストーリー進行を邪魔してはいけない。だけど、爵位返還するには、それを無視しなければいけない。私もわかってはいるつもりだけど……この後に及んで、私はストーリーが問題なく進めばいいと思っていた。



「…………うん」


 カイルは、少しピンと張っていた鋭さを緩めて、優しく返事する。


「リース、何食べるの?」


 私は、ノエミの方を向いた。メニューを一緒に開いて見せてくれる。イラストと色々書かれた文字を読みつつ、私は悩む。


「どれにしようかしらねー……」


「これも可愛いわよねっ」


 ノエミと私はまたはしゃいでいた。


「……………………」


 レオはカイルを静かに見つめる。

 身体が大きいので、よくあるファミレス形式に作られた石造りのソファーに布を乗せた席には、おさまりきらない彼は個別で椅子に座っている。



「お前の事、信じてるからな」


「うん、わかっているよ」



「俺だけじゃねえぞ、全員だからな」


 レオは言った。ノエルは黙っている。カイルは、にこりとわざとらしく笑った。



「決めた! 私これにするわ」


「私はこれっ!!」


「じゃあ、俺はこれとこれ」


「僕はこれ」


「かしこまりました。店員を呼ばなければ……」


 ノエルは手を挙げて、丁寧に皆の分と自分の分を注文してくれた。ランチとデザートが来るまで、話が弾む。



「なぁ、今度はどんな風に作戦立ててるんだ?」


 早速来た紅茶を飲みながら、レオは言う。

 カイルは、よくぞ聞いてくれたとばかりに、体勢を整える。


「そうだね、まずは今の状況について説明するよ」


 そう言うと、ノエルに目配せをする。

 ノエルはカイルのかわりに話し始める。



「まず、ダナ王太子とフィオレ嬢が婚約する事が正式に決まりました」


「まぁ……っ! いよいよ結婚するのねー!!」


 ノエミは一人、目をキラキラさせて言う。レオは少し呆れている。続けてノエルは丁寧に説明していく。



「えぇ。フィオレ嬢がついに折れたようですね。婚約披露会は、六月三十日。末に予定しています」


「随分と急なんだな」



「あ、わかったわ。ジューンブライドね」


 レオよりも先に私は納得した。

 普通ならば、王家に嫁ぐ為に、フィオレは長い時間をかけて……大体三ヶ月から半年くらい時間をかけて、結婚の準備をする。ウェディングドレスとか、アクセサリーやブーケ、新婚旅行用のドレス……他色々あるる。すなわち、トルソーを作成するのよね。王家が先に下課金を払っているだろうから、お金にはフィオレも困らないだろうけど、準備大変そうだわ。



「六月の花嫁ね……素敵……」


 トマトパスタを口元につけながら、ノエミはフォークを抱える。


「ノエミ、口にトマトソースたっぷり付いてるぞ」


 皆が笑う。ノエミは恥ずかしくなって、レオに八つ当たりした。


「お兄ちゃんのばかー!!」


「いや、俺は事実を言っただけだろが……」



 ノエルはどう切り出していいのか……という顔をして、また再び話し始めた。


「六月三十日に婚約披露会がされてしまうと、フィオレ嬢が公的にも婚約者として認められてしまいます。そうすると、私達と致しましても、証拠があっても王家が壁になる可能性があるのです。王家に付かれると、私とカイル王子と致しましても不都合なので、その前に決着をつけようと目論んでいます」



「最後のチャンスだ」


 カイルはレモンとアスパラの鶏肉パスタを取る。フォークを回して綺麗に食べる。


「国王陛下には、カイル王子より、六月二十八日に証拠を提示して説明すると伝えました。婚約披露会には、五日前から客人が増えて来ると想定できます。皆さんは、二十八日にスペラザの関門をパスし、カメリア学園内にある神殿へと向かって下さい。私とカイル王子も向かいます」



「カイルとノエルは、やっぱりダナ様達の婚約披露会に王家側で出席するのよね?」



「うん、そうなる予定だよ。でも、今回は義兄さん達の祝事だし、この前みたいにがんじがらめじゃないから、自由に身動きは取れると思う。今回も先に王家に着いていないといけないから、一緒には行けないけど……」



 なるほどね。そうだよね、カイルは義弟なんだもの、王家として出席していないと大変だわ……。


 ノエルは説明を続けた。


「私達は都合上、先に行かなくてはいけませんが、二十八日の午後に神殿にて集まりましょう。国王陛下に直に説明できれば、リース嬢も爵位を取り戻せます」



「もし、失敗したら……?」


 私は確認すると、ノエルは口籠る。

 カイルは言った。


「全員処刑されかねない」



 カターンと、ノエミはフォークを落とした。レオは言葉に詰まっていた。


「今なら、私だけ計画を実行する事はできるわ。私とカイルとノエルだけ。私は、よく考えて欲しいと思ってる」



「………………」



「これは私だけの問題だから」


 私は野菜スープを目の前に、食べずに言った。レオとノエミはずっと黙っていたけれど、レオが暫くして言う。


「要するに、失敗しなきゃいいんだろう?」


「そうね」


「ここまで来たからな、付き合うよ」


「…………私も……怖いけど、お兄ちゃんが一緒なら……」


 二人は納得した顔をする。

 私は深呼吸した。


「二人を巻き込んでしまったから、私も頑張るから。何かあった時には、逃げ道も用意しておかないとね」



「わかった」


 レオは紅茶を一口飲んだ。


「まぁ、午後必ず僕らも神殿に行く。今回は僕がいないと説明すら出来ないからね」


 カイルはアイスティーに入った氷をくるくると回した。


「絶対来いよ、遅れたらブッ飛ばすからな」



「わかってるよ」


 私達は、一旦落ち着いて、皆食事に集中する。食べ終わると、ノエミが質問してきた。



「ところでね、お店入る前に話していた聖女ってなぁに?」


 私は店員さんから、苺のパフェを受け取る。皆がノエミの話に注目している中、私は苺を見て、笑顔になってしまう。カイルが少し私を見てニヤついた。



「聖女というのは、特別な力を持っている女性の事を言います」


 ノエルは説明する。


「じゃあ、スペラザの魔法が使える女性と何が違うの?」


「聖女と言われる方は、主に魔法の力に優れていると書物には記されています。それも相手を体のオーラごと癒してしまうような、強い浄化能力や怪我を治す治癒魔法に優れていて、動物とも話す事ができ、神から選ばれた存在だと言われています」


「そうなのね! スペラザには聖女さんはいるの?」



「いいえ、いた事があるとは聞きますが、まだ私達は会った事はありませんね」



「魔法が使えるのが条件なら、リースは違うな」


 レオは言う。カイルは、アイスティーを飲む。


「そうだね」


「ほらね、レオ、違うって言ったでしょう?」


 私はレオに、ねっ! と言うと、カイルはそうでもないよという顔をする。


「でも、リースにはきっと何かある。君が触れた物には何故だか不思議な力を感じるんだ。浄化とか治癒魔法じゃないんだけど、違う力を感じる」



「触れた物……じゃあ、私がリースに触ってもらうと、その力が残るのかしら?」


 ノエミは、私の手を掴んでスリスリとした。カイルに見せると、カイルは首を振る。


「違うんだよ、ノエミちゃん。……普通にやっても、感じない。でも、きっとその力とカデーレは関係しているに違いないと思う」



「カデーレねぇ……何かしら」


「文献も確認しましたが、カデーレについての記載が書物には無いのです」


「マークス卿にも頼んではいるけど、全然書物にないんだよね……」



 私は、生クリームを食べながら、話を聞いていた。


なんか変なシーンになってしまいました(汗)

でも、ストーリーには大切なので、このまま進めます( ・ ̫・)

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