表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢の私を探して  作者: アトリエユッコ
3章
69/161

25

「え…………?」


 私はダナ様に言う。ダナ様は、少し笑いながら、歩いて近づいて来た。カイルも、ダナ様に近づく。



「君が信じる、カイル第二王子は、私の義弟だぞ。王族の人間なんだ。君を本当に助けるだろうか?」



「助けてくれたわ」


 私は言った。



「君をこんな危険に遭わせて……もしかしたら、権力を掴む為に、君を利用しているかもしれないじゃないか。そんな相手を、安易に信じていいのか?」



「信じていいんだよ」


 カイルはダナ様に魔法で風を放つ。ダナ様は、今度は手で防御した。カイルは腕を十字架のような形にして、防御の姿勢を取る。


「君は……まだ若い。間違いをしてしまう事が私達には時々あるように、君も……信じる相手を間違えているよ。さぁ、リース…………こっちに来なさい」


 ダナ様は、手を私に向かって広げた。その時に見せるダナ様の顔は、あの怖いダナ様ではなく、きせきみのゲームをしていた時にフィオレに見せる優しい顔だった。だけど、何処か辛そうにも見えた。


 私は推しが見せる特別な顔に心を揺り動かされそうになる。


 ダナ様だ……と思った。


「ダナ様…………」私は言う。



「リース……」


 ダナ様は微笑む。



「半年前でしたら、ダナ様の今の言葉は、私にとって嬉しいものだったと思います」


「………………」


「私はラクアティアレントには自分から落ちてはいません。あの時……自分が我慢すればと思って、処分を受け止めたけれど…………やっぱり、私は真実が知りたい。だから、こうしてスペラザに来ました」



「義兄さんこそどうなんだ。フィオレ嬢の事を信じていいのかな?」


 カイルは、ダナ様の隣に並んで言った。



「何を言っている?」


「ねぇ、フィオレ嬢。貴女、何を隠しているんですか? リースが断罪されて、犯罪ギリギリ……いやアウトをしてまで、ここに来てまでも、彼女に隠すことがあるんですか?」


「………………」


 カイルの言葉に戸惑ったのか、フィオレは黙って立ち尽くす。



「黙れ、カイル。フィオレは関係ない。彼女を侮辱するものならば、許さない」


「うん、うん。そうだよね。フィオレの事は信じても、全くリースの事は信じてあげないんだもん」



「うるさいっ!」


 ダナ様は、怒ってカイルに火の攻撃を仕掛けた。カイルは、手を合わせて、氷の盾を作る。二人が闘うモードになった。


「喧嘩したいところなんだけどさ、やっぱり僕ら帰らないと行けないからさ、またにしようね」


 カイルは走って、私達の所へとやって来る。


 ダナ様は最後に言った。



「リース!! 私は諦めない。お前の事も、何もかも!!!! お前も、カイルではなく、私を頼れ! ゆくゆくは時期国王になるこの私にっ…………!!!!」



「ダナ様…………」


 私が呟くと、隣にいるカイルが言った。


「ごめん、義兄さん。僕も諦めない。国王にはならないけど、だって、僕も義兄さんと同じ気持ちだからさ」



 カイルは、小さく呪文を唱えて、魔法陣を出した。

 ダナ様は阻止しようとしたが、間に合わなかった。


「暫く、あちこち旅して来るから! 国王陛下も知ってるし、また頑張って来るよー! じゃーねー!」


 カイルがいい終わるか終わらないかのうちに、私達は魔法陣に吸い込まれていく。カイルが私の肩を抱き寄せて、ダナ様とフィオレに手を振った。





 ダナ様は、その場に立って言った。


「リース。少し……君を虐めすぎてしまったな。君が髪を切るからだよ……」


 ダナ様はふっと、名残惜しいというような表情をした。

 フィオレが近づいて来る。ヨクサクも後ろから歩いて来た。


「怪我はないか? フィオレ?」


「大丈夫ですわ」



 ダナ様は、フィオレが持っていたバスケットを見る。

「それは?」


「クレオールというケーキですの。食べましょう」



「君が用意したのか?」



 フィオレは、少し黙って……言う。


「ええ」


 あのダナ様が好きな笑顔で、フィオレは笑った。













 * * *




 眩い光が消えた……と思ったら、目を開けると、私の部屋に戻って来ていた。

 皆一緒だ。カイルもノエルもレオもノエミも、一緒。



「危なかったねぇー」


 カイルは言う。


 その一言に、レオはブチ切れてカイルに掴みかかる。



「危ねえじゃねえよ!! お前来るのが遅すぎなんだよ!!!! …………それに、何だよ!! お前の義兄(アニキ)!!!! 胸くそ悪りぃことばっかり言って…………こんなにリースを危険な目に遭わせやがって!!!!!! おい!! わかってんのかよ!!!!」



 カイルは何も言わなかった。



「…………めて」


「おい! 何とか言えよ、カイル!!」



「やめて!!!!!!」


 私は叫んだ。


 レオは、私の声でピタリと止まって、カイルの胸ぐらから手を放した。



「カイル……どうして、黙ってたの?」


「リース、何が……?」



「あの薔薇の鉢植え、貴方からじゃなくて、ダナ様からだったなんて…………」



 私はカイルを見ると、悲しい気持ちがあふれて、涙を流してしまう。ダナ様に言われた言葉も気になって……涙を止めたくても止まらなかった。



「ごめん、リース……黙っていた訳じゃないけど、君が傷つくと思ってあえて言わなかった…………本当にごめん…………」


 私の部屋に、散らばった紙や植物がある中で、私はただ皆の前で号泣した。












 カイルの提案してくれた作戦が大失敗に終わってから、日々が過ぎていった。私とカイルとノエルとレオとノエミはあれから、全く会わなかった。


 私は仕事にも家事にも身が入らず、ただ暫くはボーッとした日々を過ごしていた。


 結局、ダナ様がどうして私に会いに来たのか、フィオレが何を隠しているのか、全く何もわからずに、いる。


 ただただ今は何も考えられないのだった。



 そんなある日、扉をノックする音が聞こえた。



「はい」



 私は玄関を開けると、レオが立っていた。


「よお」


「こんにちは」


 私が言うと、もじもじしてレオが言う。


「飯、食っちまったか?」


「……まだだけど……」



「じゃあさ、母さんが飯食いに来いって言ってるんだけど…………」


「へ?」


 私は言った。


「嫌じゃなければ、だって」


 レオは申し訳なさそうに言った。背が大きすぎて、玄関の扉からはみ出ている。それを見たら、何だか変なもので、気持ちも少し変わった。


「行こうかな」


 私は言う。

 レオは安堵して、柔らかい表情をした。



 レオの家に行くと、皆が歓迎してくれた。レオの家は、二階建てで、壁はクリーム色の石畳にモスグリーンの屋根。庭には芝生と畑が作られている。大きな囲いがその周りを覆っていた。



「こらーっ!! 喧嘩しないのっ!!!!」



 扉を開けるなり、ノエミの大きな声が響く。下の双子兄弟が、ぬいぐるみを奪い合っていた。


「だってー!! ヤコポが俺のモフモフ取ったんだもん」


「違う!! それは俺のフワフワだもん! ニコロのじゃない!!!!」



「貸してあげなさいよ、ニコロ! 昨日も遊んでたでしょ!」


 それを聞いた弟ヤコポがひょいっと、ぬいぐるみを奪って、叫ぶ。


「うぇーい!! これは俺のだー!!」


「…………う゛わぁああああん!!!!」



 兄のニコロは泣き出してしまった。

 ノエミは困った顔をしていると、私が来たことに気づく。



「リース!!」


 ノエミは、近づいて来て、ぎゅっと私にハグをした。



「こんにちは」


「リース、元気になった……?」


「まぁまぁかな」


 私は話すと、レオに案内されてテーブルに座る。

 台所と思われる場所から、少しふくよかな四十代くらいの女性が出てきた。雰囲気が何となくレオに似ていたので、レオとノエミのお母さんだなと思った。



「リースちゃん?」


「あ、はい。そうです」


「いらっしゃい。うるさくてごめんなさいねぇ」


 レオとノエミのお母さんは、申し訳なく、話した。


「いえ、大丈夫です」



 部屋全体は開放的に取られていたけれど、物がいっぱいあって、家は狭く感じた。まだ小さい弟さん二人に手がかかるんだろうな。洋服やおもちゃも結構あるね。自分の一人暮らししていた時の部屋みたい。



「ほら、あんた達、静かにしなさい!! ご飯の用意するんだから!!!!」


 レオとノエミのお母さんは双子に言いつける。レオとノエミがおかずを持って来る。


「あっ! 私も手伝います!」


「いいのよ、リースちゃんは座ってて」


「大丈夫よ、リース、今日はお客様でしょう」


「何もやんなくていいよ」



 レオやノエミが手伝って、テーブルの上には硬いパンとスープとソーセージやサラダが並べられた。

 レオとノエミのお母さんは、双子の弟達を椅子に座らせる。ノエミも双子の近くに座った。


「それじゃあいただきましょう」


「いただきまーす」


 皆はそれぞれに言う。ノエミとお母さんは、弟達についてご飯の様子を見ながら、自分も食べる。レオは無言で食べ始めた。私はその様子を見て、何だかOLだった頃の実家を思い出した。賑やかだなぁ。


 私も食べ始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ