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「そうだよなぁ〜、仕事が必要だろうけど、貴族令嬢だったリースにできる仕事かぁー……」
「はぁあ。いい事なんだろうけど、こんな時に育ちの良さが障害になるのね……」
私は言った。ブーケ国にパソコンはないだろうし、自営や農産が多いから、事務作業ってあまり必要ない。となると……。
「何がいいかしらね」ノエミが言った。
「これから十二月もやってくるのに、暖房器具もなくてどうしよう。草は、ぬいているのに、何故だかじゃんじゃん雑草も生えてくるし……畑の草も何だか香りがするし……」
「まだ家の中もしっかり見たわけじゃないし……」
私はふとレオが不思議な顔をして見てくるのに気づいた。
「ん?」
「なぁに?レオ?」
「お前、暖房器具あるじゃん」
「え?」
私が言うと、マロウさんが追加のお茶を淹れてくれた。
「家に薪ストーブ、あるだろ」
「え゛っ?!」
私は驚いて、むせてしまう。薪ストーブなんてあった???? 色々考えると、はっとする。
「あの、黒いやつ?」
「そうだよ」
「知らなかった……!! あっでも私使いこなせないかも……」
私が頭を抱えると、レオが「煙突掃除ならやってやるよ」と言った。
「本当に?! ありがとう!」
「お兄ちゃん、煙突掃除もたまにやるのよ」とノエミが言った。
「それからね、リース」
マロウさんは言った。
「何ですか?」
「あの畑に生えているのは、草じゃなくてハーブだよ、ローズマリーとバジルだね」
「えーーーーーっ!!」
私は叫んだ。今日は喜怒哀楽が激しいぞ、私。
「使うためにぬいてるのかと思ったよ。リースの畑、魔法もかかっていると思うよ」
マロウさんは言った。
「マロウさん、魔法がかかっているかとかわかるの?!」
ノエミが驚いて言う。
「強力なものしかわからないよ、昔私も魔法については習った事があったからねぇ」
「マロウさん、色んなこと知っているんだなぁ」
レオは自分で私の肉じゃがを装りながら言った。
本当マロウさんってすごい。見た目は背中のしゃんと姿勢の良いただのおばあちゃんだけれど、料理も掃除も完璧。淹れてくれる紅茶やハーブティーも絶品。あれ、私、胃袋掴まれてる?
「魔法がかかっている畑なら、なんであんなに草だらけなのー手入れが大変よ」
「大変だけど、それが自然の摂理という事だよ。太陽があって、土地があって、私らが耕し畑にして、種をまき、お日様が恵みを与えてくれる。魔法のかかっている畑だから、余計に強く作物が自由に育つんだろうね。余計な草を抜いて新しく何かを植えたらすぐに作物ができると思うよ」
マロウさんは言った。
「じゃあ、リースの畑は手がければ野菜もハーブもお花もじゃんじゃん育ってことなのね?!」ノエミは言う。
「まぁそうだね」
畑。
魔法。
植物。
頭の中で何かが繋がった。
「…………!!」
私は急に椅子から立ち上がった。思いついたのだ。
ブーケ国ラッテ街で暮らしていく方法を。
「どうした?」
「私、お花を売るわ!!」
「リース、お花屋さんになるのね?!」
すぐさま理解したノエミが、ポン! と手を叩いた。
「私の畑に魔法がかかっているなら、植物の種を蒔いてたくさん花を育てて売ればいいんじゃない?」
「そうか、どうせ増えるなら農家が多くて沢山出店されている野菜よりも花屋ならいけるってことか」
「YES!!」私はレオに言った。
「そう上手くはいかないよ」マロウさんは、どっしりと座って言った。
「えええ」
「いくら魔法がかかっている畑を手にしているから、作物がよく育つとしてもだよ、魔法だけじゃ植物を育てることは難しいんだよ」
「天気や季節、水のあげ方、肥料や温度、手をかけることは沢山ある。魔法だけじゃあカバーできないよ。ましてやリースは貴族上がりなんだから、初心者だろう」
マロウさんは言う。あなたに言われるとぐうの音も出ないよ。と私は思った。
「うーん…………じゃあ、どうやって生きていこうかしら〜……」
私は頭を悩ませて、言った。
「ハーブなら比較的育ちやすい物が多いね。私も自分の育てている分よりも発注したいくらいだねえ」
マロウさんは、にやりとして笑った。
「マロウさん、素直にリースに仕事手伝ってくれって言えばいいのに」レオが笑って言う。
「私が手伝えなんてどんでもない! マロウ・ブルー商店は安くないのさ」
マロウさんはそれでも、チラッと私を見る。やっぱりこの人ツンデレかも……と私は思う。でも、折角心配して誘ってくれている。期待にも応えたいし、それに、マロウさんのお仕事を手伝って、マロウさんにお菓子作りなんかも教わりたいなと思った。まだ何もできないけれど。
「マロウさん、お願いします! 私にマロウさんの仕事で使うハーブを作らせて下さい。マロウさんのお仕事、色んなこと、手伝わせて下さい!」
私はぺこりと頭を下げた。
マロウさんはそんな私を見て、またほんの少し嬉しそうな表情をして
「明後日から、色々忙しくなるよ」
と、言った。
こうして私は、マロウさんのもとで働くことになった。




