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「フィアンセー?! 素敵!!素敵だわ、リース!! 本当にお姫様だったのね! リースって綺麗だものね!!」
急にノエミは婚約者というワードを聞くと、テンションが上がったのか、がしっと私の手を鷲掴みして羨望の眼差しで私を見つめた。
あああー。事実だけど、口から言わなくていいこと言っちゃったよ……。
「あ、ありがとう……」
私がノエミの勢いに押されていると、レオが言った。
「でも、どうして国を追われたんだ?」
「レオ」
私が少し困惑しているのを察したのか、マロウさんは、レオの名を呼ぶ。
ま、いっか。隠していても、仕方ない。もうダナ様達に会う事はないのだから。
「あっごめん」
「いいの、いいの! 話すわ」
「スペラザ王国には王家が代々守っている聖水があるの。ラクアティアレントって呼ばれていて、神殿に祀られているわ」
私は少しずつ皆に話していく。
「ーー基本的に聖水に生徒は触れてはいけない、神の代わりになれるような、決められた人物が王家に許可を得て使う物なの」
うんうん、と皆は聞いた。
「私もわかってはいたんだけれど、その日は気がついたらラクアティアレントの中にいた。溺れていて。記憶がなくって。気がついたら、私がラクアティアレントに身投げした事に学園内では噂になっていたの」
自分でもすらすらと言えた。不思議なくらい落ち着いて話せた。温泉に入っていたら、すっ転んで、気が付いたらラクアティアレントに溺れた悪役令嬢だったって事は一切言わずに、出来事だけを話した。
「リースは自分が悪くはないって言ったかい?」
マロウさんは聞く。
「言ったわ」
「言ってどうにかならなかったのかよ?」
「そうだよ、何にもしていないのに国外追放だなんて。王子様はどうしたの?!」
レオとノエミは言う。
私は言葉が詰まった。間をおいて、ゆっくりと言った。
「言ったんだけどね。……私を国外追放処分にしたのは婚約者だから……」
皆が、しん……と黙り込む。同情とは少し違う、心配とも違う、私をただジッと見つめた。何も言わないのは優しい。
「今頃、新しい彼女と婚約するために頑張っているんじゃないかな。私なんかより、ずっとお似合いだから」
「リースの味方になって行動してくれる人はいなかったのかい?」
マロウさんが言った。
「大金持ちの悪役令嬢で有名だったから、私」
にこりと笑う。あ、でも……と私は思った。
「ダナ様と仲の良かったフィオレ様と、あと…………一人だけ…………いたんだけど……」
私は言葉を言いかけて、中途半端に飲み干されたティーカップを握りしめて見つめる。
カイル…………。
胸の奥が少しだけ痛んだ。
彼だけは味方でいてくれた。
色々調べてくれると言ってくれた。親身になってくれていた。でも、動きまわってくれていたうちに収穫祭が来てしまった。
西嶋さんによく似たカイルの顔を思い出す。
「……もう会うことはないわね」
私は空を見上げた。もしもカイルが無実であり、不敬ではないと皆に伝えてくれていたとしても、時間がかかったとしても、ダナ様とフィオレは婚約しただろう。フィオレを好きなカイルには辛いだろうなぁ。今は……彼はどうしているんだろう。辛い想いをしてるかな。それとも、逆にフィオレとうまくいっているのかしら……? でも、ダナ様がいるからそれはないわね。
私はカイルにキスされた事を思い出す。
私にキスなんて……何でしたんだろう。同情なんてしてくれなくてよかったのよ。貴方も報われない恋をしているんだから。私より自分の事を大切にして。
「あー!! 本当これからどうやって暮らしていこうかしらっ!!!!」
私は叫んだ。私の様子を見ていた皆は私が急に大きな声を出したので、安堵する顔をした。
「貴族のお家からのお金はもうないの?」
「ないわ、気の利いた私の侍女が少しアクセサリーやお金をトランクに入れてくれたけど、もう物々交換はする物もないし……切り詰めてはいるけど、減る一方じゃあ…………」




