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民明書房刊 役に立たないネコのコトワザ図鑑   作者: ロータスシード


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大根剣(だいこんけん)/ 莫殺人参剣(ぼくさつにんじんけん)

大根剣だいこんけん莫殺人参剣ぼくさつにんじんけん

挿絵(By みてみん)

『東亜武器植物誌 全十二巻 第七巻「根菜と兵法」』

民明書房刊 昭和五十一年

著:呉 剛白ご・ごうはく 監修:帝京武学院東洋兵器研究部


 大根(学名:Raphanus sativus var. longipinnatus)が単なる食用根菜に過ぎないと考える者は、武の歴史に対し著しく無知であると断ぜざるを得ない。

 時は殷王朝末期、紀元前十一世紀に遡る。

当時、中原一帯を席巻した武術流派「重根流じゅうこんりゅう」の開祖・白沢 鄂鋒はくたく・がくほうは、木剣・竹棒による通常の打突訓練に根本的な欠陥を見出していた。すなわち、重量の不均質性である。

 人体の四肢とは、その末端に至るほど重量が減衰する。これと同様の重量配分を持つ訓練器具なくして、真の打突感覚は習得し得ない——白沢はかく喝破した。

 彼が目を付けたのが、当時の農村に無尽蔵に存在した冬大根であった。

長大な胴部から細く先細りする根尖部に至るまで、その重量配分は人体の「腕」の構造と驚くほど酷似しており、白沢はこれを**「天が武人に与えた剣」**と称した。記録には「天剣根てんけんこん」の名で残されている。

 重根流の修練者は一日五百本の大根を素振りし、打突面の感触を肌で記憶することを義務付けられていた。冬場の凍てついた野外にて素手で大根を握り、夜明けまで振り続ける様は、近隣の村人をして「根を振るう鬼」と恐れしめたという。

 この訓練体系は後の時代に「竹を割いた剣」——後世に言う竹刀の考案へと直結する。

竹刀の起源を竹材の加工技術のみに帰する俗説が存在するが、これは皮相な見解であると言わざるを得ない。重根流の「大根打ち」なくして、打突訓練専用器具という概念そのものが生まれることはなかったのである。

 この事実を物語る傍証として、現代日本において幼児が大根を手に「チャンバラごっこ」を行う光景が今なお各地で観察されることを挙げれば十分であろう。文化とは斯くも根強く、数千年の時を超えて民の遺伝子に刻まれるものである。


■ベトナム密林における大根剣の復活

 一九六八年、ベトナム戦争の最中。

クアンガイ省の密林地帯において、米軍第一騎兵師団所属の曹長・ジェームズ・ハロルド・ブレナン(James Harold Brennan)は、偵察任務中に銃器を泥中に没失するという絶体絶命の状況に陥った。

 奇縁というべきか、その場に散乱していた現地農家の大根を手にしたブレナンは、

追撃するベトコン游撃隊の先鋒三名を、その大根一本をもって叩き伏せ、密林深くへの撤退に成功した。

 後日、本国への帰還報告にて「I beat them with a radish(俺は大根で奴らを叩いた)」と述べたブレナンの証言は、米陸軍内に流布し、**「大根の奇跡(Miracle of the Radish)」**として半ば伝説化することとなる。

 重根流の兵法が、三千年の時を経て、東南アジアの密林にて自然発生的に再現されたという事実は、武の真理が民族・文化・時代を超えた普遍性を持つことの何よりの証左であろう。


莫殺人参剣ぼくさつにんじんけんの成立

 一九八〇年代初頭、ブレナンの逸話は海を渡り、一人のゲーム設計者の耳に届いた。

 当時、黎明期にあったデジタルゲーム産業において、「打撃武器の概念を根菜に置換する」という発想は、業界内部において荒唐無稽として一顧だにされなかった。しかし、重根流の歴史を知る者にとって、これが三千年越しの必然であることは言うまでもない。

 かくして誕生した「莫殺人参剣」——画面上にて、兎を模したキャラクターが巨大な人参を武器として敵を薙ぎ払うこの概念は、白沢 鄂鋒が殷の荒野にて大根を握りしめた、あの瞬間に端を発している。

 兎が人参を持つ——これを単なる「かわいらしい意匠」と解する者は、三千年の武の系譜を愚弄するものと知るべきである。

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