ディスク・オルゴール
打ち寄せる波…ブルーの浜辺。遠い夕日は黄金色…
波打ち際の白い浜辺。星の砂。ランタンの明かりと詩人が居た。美しい自然に囲まれているが、独りとなると。まるでここに自分がいるのか夢を見ているのかさえ曖昧になる。涙が出るほど美しい天国に一番近い島。
新しく宅配された木箱。漁れば大抵の物は出てくる。店主に最低限の文化的生活を保証して貰ってる。コーヒーを一口。
「美味しい。」
人と話さないって不思議。自分の声に戸惑った。数学の方程式を解いたり、演劇の詩歌を歌ったり。暇つぶしに狩猟採集をしたり、銀の竪琴を爪弾いたり。やめてしまった煙草にも未練は無いほど、この島は美しいですよ。
「…先生。」ぽつり。
がさごそ。木箱を漁る。ふと手に引っかかったものを引っ張りだした。おみくじみたいな小さな紙である。表に『ムラムラっとしたら開けなさい』と書かれていた。
「むらむら??」
びりっ。開いてみる。『蛆虫に快楽を!』
「ぎゃはははははははっ!!!あっははははは!!!苦しいっ!苦しい!」
詩人は腹を抱えて笑った。
「ああーっくっくっく」
眼に浮かんだ涙を指で擦りながら、箱を見れば、まだまだ錦の袋に、ごまんとおみくじらしき物があるではないか。
「先生酔っ払った時に書いたのね。酒癖悪いって仰ってたわ。」
一枚とれば『XXXしたくなったら読みなさい』
「ぷっ。あははははは!!!」
詩人は笑った。ぺり。手紙を開く。『訳がわからない!』
「ぎゃはははははは!!!あはははは…っ!!!悪魔!悪魔がいるっ!!!」
詩人はくの字になって倒れた。
泣き笑いをしている間に空には南の満天の星。打ち寄せる波の音。詩人は浜辺に半身起こして、銀の竪琴を爪弾いた。
「見たことも無い星々。見たことも無い星座。…あれが南十字星。…素敵ね。」
「この美しい壮大な夜空は。楽譜に見えるわ。…星々は音符。宇宙が音楽を奏でているのよ。微かに回転しながら、瞬きながら、ディスク・オルゴールのように…空から音楽が聞こえてくるのよ。」
銀の竪琴の音色に誘われ、海の幼い少女の姿をとったニンフ達が、浜辺に戯れている。
「いつか君をここに呼んで…この星空を共に見上げて。…君が小さな声で歌いだしたら…」
今頃、窓辺で腕を組むあなたに。
「私は、安心して…風の生まれた場所を探しに行けるのに…。」




