Last game.(引退戦)
昨日の夜。みんなでお風呂に入っていたときのこと。
「んああああ~~~と」
湯船の中で陽菜ちゃんが大きく伸びをした。
「お疲れですか、陽菜せんしゅ~」
陽菜ちゃんの肩をもむ聖夜子ちゃん。せんしゅ?
「あはは、我ながらよく働いた」
このところ陽菜ちゃんは運動部の助っ人に引っ張りだこだった。今週なんか休みなしだ。
バレンタインを機に陽菜ちゃんは運動部への助っ人を断ることにした。
それはすぐに各部へと伝わり、駆け込み需要で依頼が殺到したのだ。
でも陽菜ちゃんは自分の都合だからと、最後に全部活一試合ずつ引き受けた。
「それも、いよいよ明日でおしまい」
達成感のような、どこか残念なような。
本当にお疲れ様、陽菜ちゃん。
「明日お手伝いするのは何部ですか?」
聖夜子ちゃんが訊ねる。
「バレーだよ」
バレー。ユニフォームを洗った回数は一番多いかも。
「がんば――」
「コンディショナーどこ~?」
髪を洗っていた緒方さんからヘルプ要請が入る。
「はいはい~」
聖夜子ちゃんが素早く湯船から上がって助けに向かってくれる。
「すぐ横にあるのに見えてないのかなぁ」
「あの、陽菜ちゃん」
「なあに?」
「明日の試合、応援に行ってもいいですか?」
「もちろん! 活躍するからね♪」
陽菜ちゃんは笑って親指を立てた。




