Warming up.(試合前)
ああ……こんなにかっこいい子がわたしの恋人でいいのかな。
光るコートにシューズが鳴いて、キンと鋭いレシーブの音が体育館の高い天井に吸い込まれてく。
「わぁ……」
バルコニーから一望するコートは新鮮。選手から選手へボールが繋がって線が見えるみたい。
「ホワイトデーだってのに部活とは色気がないね~」
柵に肘をついてコートを眺めている緒方さん。
「無理につき合わせちゃいました?」
「や、ヒマで付いてきたのはわたしだから。ところで今日ってなんかの予選なの?」
「ふつうの練習試合ですよ?」
「それにしちゃ(観客)多くない?」
「確かにそうですね」
鈴なりとまでは言わないけど、バルコニーではそこそこの人数が試合開始を待っていた。
「なんだ、練習試合か、つまんない。みこやんたちについてけばよかったかな」
緒方さんはがっかりを隠さずため息をもらす。
「つまらない試合なんてありま――」
「なつめー!」
ふいにバルコニーの誰かが声をあげた。わたしは慌ててコートに視線を戻す。
陽菜ちゃんだ!
陽菜ちゃんがコートに入った途端、バルコニーのみんなが声援を飛ばしだした。
「え、なに、なに?」
緒方さんがきょろきょろしてる。わたしもびっくりしてる。でも、負けてられない。
「ひ、陽菜ちゃ――ん!!」
陽菜ちゃんがこちらを見上げる。
「あ……」
そして、にっこり笑って手を振ってくれた。
わたしに!




