15 金沢旅行
新幹線で程なく過ごすと、金沢駅に到着した。
駅を出て外から観ると、駅はドーム状の建物になっていた。駅の正面には大きな赤い門があり、俺らを歓迎してくれた。俺と智佳は、威風堂々とした門の佇まいと、広場の雰囲気に興奮して写真を何枚も撮影した。
後でパンフレットを見て知ったことだが、『鼓門』という名前らしい。
智佳が金沢を選んだ一番の理由は『兼六園』に行きたかったかららしい。
兼六園は文化財にも指定されているらしく、俺も話を聞いて興味を持った。
俺と智佳は兼六園行きのバスの券を買い、バスに乗りながら金沢の町並みを窓から眺めていた。
「太一さん、観てください! なんか市場みたいなのありますよ! 明日の朝ごはん決まりですね!」
「夜ご飯じゃなくて朝ごはんなのか。気が早すぎないか」
「え~市場といえば朝じゃないですか! 分かってないな~」
智佳は首を左右に振りながら、ふぅとため息をつく。
俺は「生意気」とデコピンしてやった。智佳は恨めしそうに額を抑えてこちらを見てくるが、俺はこんな形でも一矢報いた気分でスッキリしていた。
兼六園の近くまで到着すると、バスを降りた瞬間に、残暑の厳しい太陽の日差しがジリジリと攻撃してくる。
「帽子でも持ってくればよかったな」
「そこにかわいい日傘売ってますよ! 日傘買いましょう!」
「え~俺は日傘はいいや。我慢するよ」
「じゃあ、太一さんの頭が丸焦げになってハゲたら可哀想なので、辛くなったら相合い傘してあげますね♪」
「なんでそうなるんだよ。ハゲる前に対処するわ」
「相合い傘、楽しみだなあ♪」
雨でもないのに相合い傘とか、バカップルでも見たことがない。そんな恥ずかしいことできるか、と思いながらも、日差しの強さに少しだけ心が揺らいでいた。
智佳は、黄色地で縁が黒いレースになっている日傘を購入した。俺の隣で日傘をさして快適そうに歩いている智佳を見ていると、なおさら帽子が欲しくなる。
結局、目的地に到着するまでの間に2回だけ日傘を借りた。
相合い傘を求められたが、小ぶりな日傘に二人は入らなかった。智佳は不服そうにしていたが、まあいっか、と少しでも陰に入るように俺に寄り添って歩いて、相合い傘気分を満喫していたようだ。不服そうなのは一瞬で、またすぐにご機嫌になっていた。
俺はなるべく自然に、少しでも智佳が日陰にいられるように、日傘を少しだけ傾けてあげた。
兼六園に入ると、和風な雰囲気に俺たちは圧巻されつつ、緑の木々たちから溢れるぽかぽかした木漏れ日や、音が吸い込まれているのではないかと疑うほど静かで風流な池、ちょろちょろと流れて自然を感じさせる湧き水に、癒やされていた。
そんな自然に囲まれた庭園を散歩するのは、日頃の仕事のことを忘れてリフレッシュするには最高の空間だった。
途中にあった休憩処には、金箔ソフトクリームというものが売られていた。
「太一さん、金箔って食べられるんですかね?」
「う~ん、売ってるからには食べられるでしょう」
「どんな味するか、気になりません?」
「ちょっと高いけど、チャレンジしてみようか」
智佳は元気に「賛成!」と言って右手をまっすぐ上にあげる。本当に元気がいい。
金箔ソフトクリームを注文して、しばらくするときれいな器に盛られてたソフトクリームを店員さんが運んでくれた。
「太一さん、これ見た目豪華すぎますね」
「ああ、食べ物とは思えないな」
「じゃあ早速、いただきます」
智佳はスプーンで金箔とソフトクリームを一緒に口に運ぶ。すると、「ん~っ」と幸せそうな笑みを浮かべて頬に手を当てている。
「なんか、金箔自体は味は感じないですけど、アイスが濃厚ですごく美味しいです!!」
「食レポうまいな。どれどれ~」
智佳の感想にもツッコミを入れつつ、俺もご相伴に預かる。……うん、確かにうまい。金箔は歯にくっつく感じがして、本当に飾りって感じだった。だが、見た目が華やかな分、味も心なしか2割増しに感じるような気がしなくもない。
お店を出ると、砂利と庭木がきれいに手入れのされてある日本庭園が広がっていた。俺と智佳はその美しさに感動しながら、庭園内を散歩した。
「私、将来はこういう和風な庭がある家に住みたいって思ってるんです。小さくてもいいので。」
「むしろ、こんな大きな庭があったら手入れが大変だな。そもそもいくらかかるんだよ」
「さすがにこの大きさは旅行の時だけで良いですけど……小さい庭園なら50万とかで買えるんじゃないですかね?」
「え、そんなもんなの?」
「ちゃんとはわかんないです。ググってください」
そう言われて検索してみたが、庭園そのものの値段はわからなかった。ただ、庭園の砂利とかなら、50万もあれば十分実現できそうだ。
智佳に検索結果を伝えると、「やった! 貯金頑張ろうっと♪」と嬉しそうにルンっと身体を弾ませた。
◆
兼六園で緑を堪能した後は、金沢二十一世紀美術館に向かった。
土日で混雑していたので、チケットを買うのに1時間くらい並んだが、展示物は独創的な物が多く、見ていて飽きることはなかった。
美術館に行きたいと言い出したのも智佳で、こういった芸術にも関心があるのだと、新たな一面を知ることができたのも、言わば旅行に来たからこそなのだろう。
美術館の中でも更に行列があり、並んでみると、プールの水中にいるような写真が取れるスポットだった。地下と1階の間に水が張ってあり、1階から覗くと地下にいる人がプールの中にいるように見えていた。1階からカメラを向けられ、それに楽しそうにポーズをとる人たちが大勢いた。
俺と智佳はそんなトリックアートのような写真は撮らずに、普通に記念撮影をしてその場を後にした。
館内を見て回ったので外に出てみるとモニュメントが数多くあり、それらを眺めながら俺らは美術館の周りを一周した。
「そろそろお腹空いてきましたね~」
「晩ご飯にするか」
「良いですね!何食べますか?」
そんなやり取りをしながらお互いに食べたいものを言い合い、近くで特産物を食べられそうなお店を携帯で適当に探しながら、地図アプリを頼りにお店へと向かった。
お店に向かうまでの間は、今日見たものの感想を言い合って二人で盛り上がっていた。
金沢の観光地の良さを文字で表現しきれなくてすみません…




