第六話 本物の怪人赤マント出現!
本当の怪人赤マントは、色を尋ね、その色に応じて攻撃して来るという。
モコネコが赤マントの正体と知って、ネコーズは思いだしたかのごとく、最近読んだ漫画の内容を説明してくれる。
それを、モコソンは黙って聞いていた。
その頃、天草夏美はトイレにこもり、今まさにその怪人赤マントと対峙していた。
怪人赤マントはお決まりの文句を言う。
「赤が良いか? 青が良いか? 黄色が良いか?」
夏美は、マサノブのいたずらなのかと思い付き、適当な答えを言う。
「えーと、じゃあ、黒色とか」
その答えを聞き、赤マントは一瞬黙る。
「黒色が好きといった子は、焼死!」
そう言って怪人赤マントは、トイレの上から身を乗り出し、夏美の前に姿を現す。
夏美の目には、醜悪な表情を浮かべる怪人の姿が映し出された。
醜い顔を隠す不気味なお面、返り血を浴びて赤く濁ったマント、そのどれもが夏美を本気で脅えさせる。
悲鳴を聞き、マサノブが駆けつける。
マサノブは、赤マントのマントを銜え、夏美に危害を加えないように奮闘する。
その隙をつき、夏美は廊下へ逃げる事ができた。
赤マントの矛先は、マサノブへと向かう。
赤マントは、持っていた斧を使い、マサノブを攻撃する。
マサノブへの攻撃は空ぶりし、オノが壁にめり込んだ。
「ふん、俺を舐めてもらっちゃあ、困りますね。
これしきの攻撃、野生の獣なら避けるのも容易い……」
マサノブがオノの攻撃をかわすとほぼ同時に、赤マントはマサノブに突進して来る。
オノの攻撃を避けたが、突然の赤マントの体当たりに、マサノブはダメージを受ける。
「バカな! 野生の動物並みの動きだと……。
夏美さん、申し訳ありません」
マサノブはそう言い残し、気絶をしてしまった。大型犬のくせに根性の無い犬だ。
いや、赤マントの力が強過ぎて、マサノブを万力のような力で締め上げているのだ。
マサノブが気を失ったのを確認すると、赤マントは夏美を追って、廊下へと走り出す。
恐怖のためか、マサノブが心配なのか、夏美はあまり早く走れないでいる。
そのため、すぐに赤マントに追い付かれてしまった。
「綺麗な女、殺す!」
赤マントは壁からオノを取り除くという無駄な工程を省くため、マントの中に隠していた鉈を装備する。
赤マントの中は、様々な武器が装備されており、恐るべき殺意と恨みが見てとれる。
オノを取り除くという時間を省いたため、赤マントは一気に夏美を追い詰めていた。
赤マントは、鉈を振りおろし、夏美に攻撃する。
赤マントが鉈を振り上げた瞬間、何かが鉈に当たり、鉈を弾き飛ばした。
「モコソンミサイルだ! これでお前の武器は無いぞ。さあ、大人しくするんだ!」
ネコーズが投げたモコソンが、鉈を弾き飛ばしたのだ。
モコソンは、窓ガラスにぶつかり、窓を突き破って下へ落ちて行く。
ちなみに、ここは三階の校舎だ。
モコソンが戻って来るには、かなりの時間がかかるだろう。
ネコーズは、赤マントの武器が無いのを確認すると、突撃して間合いを詰める。
ネコーズでさえも赤マントの中が無数の武器で満ちているとは予想できなかったのだ。
すると、赤マントが隠し持っていたナイフが、ネコーズの頬をかすめた。
ネコーズは野生の獣スピードで離れ、間合いを取る。
「なるほどな。本来白いはずのコートは、血に塗れて赤く染まったというわけか。
そして、そのマントの中には、ナイフや武器などがぎっしりというわけか。
それで、何人もの女子高生を襲っていたようだな。なぜ、綺麗な女性ばかりを襲う?」
「ふん、綺麗な女性は、悪魔だ!
綺麗な顔をしているだけならまだしも、醜い者を蔑み、いじめて、みじめな状況を作り出す。
私も綺麗になれたら解放させると思っていた。なのに、整形手術は失敗!
原因は、若い看護士の失敗らしいわ。
ふふふ、でも本当はそんなの嘘!
女の医者が、私が美しくなるのを恐れて、ワザとあんな顔にしたのよ!
それ以来、美女が憎くて、憎くて、出会ったら殺すようにしているのよ!」
「夏美は何もしてないぞ! そんなやつあたりは止めるニャン!」
「うるさい! この女は、私をいじめていた奴にそっくりなんだよ!」
赤マントは、夏美を睨むが、夏美は恐怖からか、すでに気を失っている。
「ふん、気を失っている奴を殺しても、面白くない。
後で気が付いたら、奴が鏡を見ている前で、自分が無残な顔になって行くのを見せ付けながら殺してやるさ!
まずは、お前だ。
邪魔しないように、大人しくさせてやるよ!」
赤マントは、ネコーズに突進して来る。
「はは、自分から突っ込んで来るなら、攻撃する隙はできやすいニャン。
カウンターをお見舞いしてやるぜ!」
ネコーズも突撃する。
ネコーズは、得意のネコーズスラッシュで攻撃をいなすが、なかなか相手に攻撃の隙が生まれない。
「どうした? ナイフを落とそうとしているようだが、全然落とせないね。
それどころか、お前がカウンターを喰らって、だんだんボロボロになっているね」
赤マントの言う様に、ネコーズはだんだん傷が増えていく。
どうやら、ネコーズの野生の獣のスピードについて来ているようだ。
(くっそ、奴の反応スピードが早いニャン!
これじゃあ、防御するのがやっと……。
奴を動けなくするだけのダメージが与えられない。このままじゃ……)
ついに、ネコーズは壁際まで追い詰められた。
「ふん、手間取らせてくれたようだね。それも、ここまでだ!」
赤マントは、渾身の一撃を繰り出す。
「ここだ!」
ネコーズは、赤マントのナイフを猫パンチで弾き飛そうとするが、赤マントは脅威の反応により、ネコーズの攻撃をいなす。
「ナイフを落とそうとするのは、囮!
本当の目的は、ナイフと僕の位置が真反対になる事だ。
これなら、お前は、僕を攻撃できないが、僕は、お前を攻撃できるからね!」
ネコーズは、壁を蹴って、赤マントの懐に飛び込んだ。
「喰らえ、ネコーズスーパー猫パンチ!」
ネコーズの体当たりと、ネコーズの腕力による必殺技が、怪人赤マントに炸裂した。
赤マントは、ネコーズの技をもろに食らい、窓ガラスにぶつかる。
その衝撃で、赤マントの不気味な仮面は落ちた。
「くっそ、まだだ!」
赤マントはダメージを負うものの、戦意は喪失していなかった。
自分の身体を攻撃に合わせて動く事により、ダメージを軽減したのだ。
さすがにネコーズの動きについて来られなかったが、まだ戦えるだけの力はある。
ネコーズといえど、油断したらやられるだろう。
新たな武器のハンマーを取り出し、再びネコーズを襲おうとする。
すると、ネコーズが言い出す。
「はっはん、あなた、あんまり自分の顔を鏡で見ていませんね。
手術が失敗と思い込んでいたようですが、腫れが引いたらなかなか綺麗な顔ですよ!」
「嘘!」
「僕は、あんまり嘘は言いませんよ。さあ、鏡で見てごらんなさい!」
ネコーズにそう言われ、赤マントは急いで鏡の前に向かう。
少し戸惑いがあるのか、一瞬見るのを躊躇する。
決心して、自分の顔を見ようとした瞬間、ネコーズの猫キックを喰らい、鏡を頭突きする形で気絶した。
「悪いな。罪を犯したままのあんたを、ここで喜ばせる気などないニャン!
罪を悔い改めて、再出発するんだな!
その後でなら、あんたをメイドとして雇おう!」
その後、怪人赤マントは、警察の手により逮捕された。
婦女暴行や不法侵入、傷害罪などで逮捕された。
モコネコは、天草夏美の手により、メアリー牧場へと送られた。
こうして、この赤マント事件は解決し、ネコーズ探偵事務所には、可愛いメイドが来る事になった。
ネコーズとモコソンが楽しみにしていると、新しいメイドが来る予定だ。
ネコーズは久し振りに金も稼いだので、家でゴロゴロし、漫画を読んでいた。
「うーん、相撲はテレビで見ていたけど、ルールは分からないからな。
ただのデブ同士の押し合いではなく、男と男の戦いだったのだな。
日の丸相撲を見て、初めてルールが分かったぞ。
この作者には、頑張ってもらいたいニャン。
二セコイとか、屑漫画は、いつ消えてもらっても構わないけどな!」
ネコーズが漫画の研究をしていると、例のメイドさんが来た。
「あの、天草夏美さんに言われて来ました。どうかよろしくお願いします!」
モコソンが喜んで扉を開けると、そこには、彼らのご主人様が立っていた。
「なんだ、えるふじゃないか! 新しいメイドはどこだ?」
えるふは、自分を指さして言う。
「今日は私ですよ!」
ネコーズとモコソンは、気が抜けたような顔をする。
えるふは、警察から聞いた情報を、ネコーズに話す。
「あ、あの犯人、精神的に追い詰められていたようだったけど、傷害事件までで済んだようだよ。
本人は殺した気になっていたけど、実際はみんな、怪我をしただけだったって!」
「まあ、頭というのは、血が派手に出るわりに、そこそこ強いからな。
一、二回殴ったくらいなら助かるだろう。
追い詰められていても、土俵際一歩手前で踏みとどまっていたという事だ。
足が外に出なくて良かったニャン!」
「まあ、刑期が終われば、訪ねて来ると思いますよ」
「それは楽しみニャン!」
ネコーズは、火ノ丸相撲のコミックを見ながらそう言った。
明日こそは、きっと美人メイドの新人さんが来るだろう。
ちょっと内気で、エロいサービスなどいろいろしてくれたり、美味しいコーヒーを入れてくれるメイドさんだ。
頑張れ、ネコーズとモコソン!




