表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/35

7、初依頼はフラグ付き?

澪……残念な子

 ああ。なんか絡まれてる人がいるんだ、かわいそうに…その間にこっちはさっさと行かせてもらおう。うん。澪の肩を軽く押して出口へと…


「無視するつもりなの!!そこの黒髪の!あなたよ!待ちなさい!」


 黒髪…いない訳じゃないが珍しい色。ギルドには結構な人数がいるが、今、黒は多分俺と澪だけ。めんどくさい…


 キャンキャン吠えてる女の子の相手はしたくない、澪を見る…

「絡まれてるのは零なんだから、零がなんとかしなさい。」

 ごもっとも。渋々振り返ると、澪と同い年くらいのこれぞ外国人!という感じの金髪をツインテールにし、少し上がり気味の二重の大きな碧眼。

片手を腰に、もう片方の手は真っ直ぐ俺を指差していた。


「俺ですか?」

「あなた以外に誰がいるというの?」

ちょっとバカにしたようなもの言い。


周囲のざわめきの中に、

「あれ、公爵様のところの…」

「あぁ、お転婆姫……」


何だよ『お転婆姫』って、しかも『公爵』って、めんどくさい………

「なにか御用でしょうか?」

「「御用でしょうか」ではないわ、貴方の受けた依頼は私が受けようとした依頼なの。返しなさい!」


 えーっと、頭わいてんのかなこの娘?俺達が受けたのは、常時依頼がでてる『薬草採取』。俺達が受けたからって無くなる訳じゃないので普通に受けたいなら手続きすればいいだけ。

何で『返しなさい』なのかさっぱりわからん。ということを説明しようとしたら


「どうしてもその依頼を受けたいっていうなら、同行させてあげてもよくてよ」


ああ、そっちか…『公爵様』の『お転婆姫』は一緒に依頼を受けたい。と…だが断る!

澪と二人で街の外に出る依頼を受けたのは、力仕事が澪に向かないというだけでなく、薬草採取しながら力加減の練習をするためでもある。そこにガイスト達であっても同行させるつもりはない。ま、あいつらは2、3日依頼受けないでのんびりするらしいけど。

 「いや、受けたいなら勝手にどうぞ。常時依頼ですからまだ受けられますよ。俺達は受付終ってるので、お先に失礼します。」きびすを返し澪を促して出口に向かおうとすると


「えっ?!お、お待ちなさい!私が声をかけてあげているのになんという態度!無礼な!」


思わずため息を吐いたら

「零、幸せが逃げるよ?」と、もうひとつため息を吐きたい台詞を言われた。軽く澪を睨むと

「絡まれてるのは零だしねっ」

「俺が絡まれるってことは間違いなくお前も巻き込まれるんだけどなっ」

「えっ?なんで?」

素で聞きやがった…澪に軽くアイアンクローをかましながら

「痛っ!痛いよ零?!いーたーいー!ギブっぎぶ〜」と半泣きな澪を横目に

「ここから森までの時間、そこから薬草を探して採取してって考えると、駆け出し冒険者の俺達には時間が足りないので、失礼します。」

軽く頭を下げ、今度こそギルドを後にする。

後ろでなんか聞こえてたけど………


     ※


 「やっぱり初日なのでギルドまでは付いていってあげたほうが良かったですかね」


「アルにしてはめずらしいな。気に入ったのか?」

「私だけじゃなくフィンもでしょう?」

「なにかやらかしてくれそうなんだよね(笑)」

「なにか隠してるみたいですけど、悪い子じゃなさそうですし近くに居るうちはね」

「そうだな」



     ※

 アルとフィンに心配されているなど露知らず、門を出て、ズンズン歩きもうすぐ森に着くという頃、後ろから馬車が近づいてきた。

 街道を歩いてるので馬車もめずらしくなく、商人やその護衛、冒険者など既に何台か零たちを追い越している。

何だかんだ人目があるので零と澪は普通に歩いている。とはいえ、澪は身体強化を自身にかけているし、零の身体能力は言わずもがな、抑えているとはいえ、そこらの歩きの冒険者よりはだんぜんペースは早い。

 今回選んだ採取する薬草は、熱を下げる為のものが2種類、怪我に塗るのが1種類。うれしいことに紛らわしいものはなく、熱を下げる方はヨモギに似た物と、露草に似たもので、露草に似てる方はいまの時期小さな薄いピンクの花を咲かせているらしい。花の形まで露草そっくりなのはビックリだけど。

 怪我の方はなぜかワラビに似てる。名前は『リリー』…なんか色々間違ってる気がする…

ちなみにヨモギはネル

露草はゴラって名前がついてる。俺たちが薬草に世話になることはないだろうけど、何かの役に立つこともあるだろうから覚えておいて損はないだろう。

 ギルドには動物、魔物、植物図鑑みたいなのも置いてあるので、時間ができたら澪と二人で勉強だな。

 あとアルに聞いたらガイストに教えて貰った6カ国だけじゃなく他にも小さい国がちらちらあり、無干渉地帯といわれるような場所もあるらしい。

「は〜っ。またあの人はおおざっぱに」

ってガイストに呆れながら教えてくれた。その辺りも要勉強だけど地図なんてないんだろうなぁ。



 森の入り口に着き、気を引き締め直す。あまり危険な動物や魔物は、いないらしいがゼロではない。注意するに越した事はない。気配を探ってみるが取りあえず危険は無さそうなので森に入っていく。

「マイナスイオン一杯だねっ。森に住むのもいいかも!木の上に家作ってエルフみたいに♪」

「俺はそれでもいいけど、虫だらけだと思うんだが澪耐えられるのか?」

「っ!忘れてた!う〜〜〜。あっ!虫除けの結界を張れば!」

「はいはい。どんな虫がいるかわからんから、そのうちな。」

「お風呂も作って、あ、ドラム缶風呂とかもロマンだよね〜♪」

お前の『ロマン』がわからん…ってかドラム缶なんざないだろ!

ドラム缶から作らされるのか?!

 そう言えば、前の時は露天風呂作るためにブレス使わされたな…

「はいはい。そろそろ薬草生えてる場所に着くから探しながら考えろよ。」

「むっ。零『はい』は一回だよ!」

「はいはい」

「も―っ!!」

「牛になってないで探しなさい。」

「む―っ」

たわいもない話をしながら薬草を探す。

「ツリーハウスってトイレも下だから我慢したら間に合わないかも!」とか

「ネズミ返しは必須よね」とか…ツリーハウスは決定ですか、そうですか。

トイレなんざ飛び降りればいいし、ネズミのまえに魔物どうすんだよ?てか、結界は虫除け限定かよ!と突っ込む所がありすぎる澪の言葉を適当に聞き流しながら森を歩く。


森の中は薬草を探す冒険者たちが結構入るようで獣道のようになっていて歩くのはさほど苦労しない。『ネル』と『リリー』は簡単に見つかったが『ゴラ』がなかなか見つからず、少し奥まで入り込んでしまったようだ。森に入ってから多分2時間くらい、休憩がてら早めの昼食にしてもいいかもしれない。

苦労しないとはいえ慣らされた道とは違うし、下を向き薬草を探しながら歩くのは結構大変だ。


 気配察知に変わりはない(…)なと…あ―なんかこっちに来てるな。数は1、2…5か。人よりは小さい何かというぐらいしかわからないが

「澪、なにかがこっちの方に来てるから、一応気にしといて。」

「ん。りょ〜か〜い。」

 真っ直ぐこちらにくるなら先に向こうが(…)戦闘になるだろうから、そのどさくさに紛れて撒いてしまうのもいいかもしれない。


少しして、戦闘が始まった気配がしたと思った瞬間、悲鳴が聞こえた。



     ※


「キャーッ!イヤー!」


「クッ、お嬢様!離れないで下さい!!そっちはだめです!!」

「早くなんとかしなさい!!」

 チッ。言われなくともなんとかしたいさ。

なんにも出来ないくせに勝手に動くな小娘が!

つってもまずいな…ワードッグやコボルトならまだしも、ワーウルフだ。なにより厄介なのはその瞬発力と俊敏さ。

 自分だけなら切り抜けられるが、足手まといがいる。

−くそっ。だからお守りなんか嫌だったんだ。だからといって見捨てて逃げるわけにも−詰んだかな?一匹は仕止めた。俺を殺ってからお嬢様を狙うようで、今、標的になっているのは自分だから、そのすきに…

いや、だめだ。ここまでで大分疲れてるお嬢様が走って安全圏まで逃げられる訳がない。だめか…


     ※


「あー。なんか不味そうだな。」

「不味そうだねぇ。どうする?」

「面倒にはかかわりたくないんだけどな」

「う〜ん、でも万が一助かったら近くにいたのに!ってならないかな?」

ありうるな…しょうがない、行くか。

「澪、ここから結界いけそうか?」

「ん〜…視認できないからちょっと無理。」

しようがない。自分に結界を張るようにいって、澪を抱えて走る。

枝なんかで澪が怪我しないための結界。

俺は枝くらいで怪我しないしな。

     ※



 現場に着いた時、一人は怪我だらけだけど、しっかり剣を握り、もう一人を庇いながら敵と相対していた。


 敵はでかい犬のようなヤツで全部で5匹。シェパードくらいの大きさだ。一匹は倒れて動かない。 あとは少し傷があるが、致命傷には程遠い感じだ。


知能は…あるみたいだな…リーダーらしき個体にちらっと殺気を乗せた視線を送ると、ジリッと後ずさった。

野生の世界は弱肉強食なので、力関係には敏感である。そうでなければ生き延びることは出来ないからだ。もう少し強い殺気を乗せると、ジリジリと下がり、逃げていった。食物連鎖の頂点にある竜の殺気を軽くとはいえ底辺に近いヤツが受けて平気なわけがない。

が、なんか弱いもの虐めをした気になる。

 そんな俺の心情を察したのか、澪が背中を撫でてくれる。

 

「助かった。」


少し?顔色の悪い男が頭を下げる。

「いや、たまたま(…)近くにいただけだし(…)」


「っていうか、付いて来られてただけだし?」

…………澪……


「なっ!付いてなんか来てないわよ!たまたまよ。たまたま…」


ああ、やっぱりギルドで絡んできた『お転婆姫』だよ……………

野生動物は人間よりいろんなことに敏感です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ