8、澪キレる
現在4人で森を歩いている。何故かというと「お転婆姫」のせいだ。
あの後、クリスさん(お転婆姫の護衛さん)の怪我の具合を確認し、深そうなとこにだけ澪に治癒魔術を掛けさせその間に(本人は治癒魔術使えないらしいので)辺りの気配を探っていたけれど、森の出口まで脅威はなさそうだったので
「じゃ、お大事に」といって別れようとしたら
「お待ちなさい!こんな怪我人と私を二人きりで残して行くというのですか?!」
クリスさんがグッと拳を握る。おおすげぇ冷たい目でお嬢様を見てる。
貴族のわがまま娘なんて面倒以外のなにものでもない。クリスさんは立ち居振舞いをみてると、ちゃんと訓練された兵士みたいだ。貴族の私兵みたいだからお守りさせられてるんだろうけど、こんなとこじゃね。兵士は対人に特化していて、魔物なんかとの戦闘になれていない。
「でも、出来る限りの治癒はしましたし、薬も持ってるみたいだし、森の出口までは多分脅威になりそうなのはいないですよ?」
それに俺たちギルドの依頼の途中なので、まだ帰れませんから、送れないとやんわり言うと、
「ふん!ならあなたたちの依頼に私たちが付き合えばよろしいのでしょう?」
しょうがなく、嫌だけど、って感じでかなりの上から目線。
「いえ。おか…」
「じゃあ、これだけ帰せばいいでしょう」
と、クリスさんを指差す。先に帰ってなさいとかなんとかいいながら…
クリスさんは、それは出来ないとかなんとか…
そら護衛が『怪我したから先に帰ります』はないよな。
ここは後々のためにもはっきり言うか?と考えていたところに
「零。お腹へった。ご飯にしよ?」
澪、空気を……読まないですよね。はい。
ま、もともと昼飯にしようとしてたんだしな。
少し行った所に座りやすそうな木が倒れてたから、そこで休憩がてら昼飯だな。
「了解。あっちだ澪。」
「ん。なにサンドかな?楽しみ♪」
宿で弁当の用意もできるというのでお願いしたらサンドイッチのようなもので、中身は食べてからのお楽しみとは女将さん談。向こうの二人は無視というか放置だな。
お守りは大変だろうけどクリスさんに丸投げだ。
移動して昼飯食べて、その間あの二人も近くにいた。二人の昼飯もサンドイッチみたいなものらしかったが、さっきの戦闘時にカバンを投げ付けたりもしたようで、サンドイッチが崩れていたらしく、お嬢様はクリスさんにまた怒っていた。
「よし。あとは『ゴラ』だけだ。頑張って探そう。」「そうだね。今日は初日だし遅くなるとガイストさんやエルさん達心配するだろうし。」
よし、出発だ!
そして、冒頭に戻るわけだが、一緒に行動してるわけではない。決してない。断じてない。
ただ近くにいるだけだ。
薬草を探しながら歩いているのでベースが上がらないので付いて来れるようだ。
大して歩いてないのに「疲れた」だの「喉が乾いた」だの近くで煩いことこの上ない。げんなりしていたところで
「零!あった!こっち一杯生えてる!!」
「よっし!澪でかした!」と、澪のところへ急ぐ。
ちょっとした花畑だった。
「すごいな」
「きれいだね」
ちょっと魅入っている俺達の横を通り過ぎ、ズカズカと小さな花畑を蹂躙するバカ………
俺より先に動いたのは、澪だった。
風の術で浮かせて連れ戻す。それだけ。それだけなんだけれども
風の中でキリモミ状態のおバカ。
あー、口閉じとかないと、舌咬みそうだと思ったけど、声も出ない状態らしい。
「澪、器用だな。風使ってるのに花畑には影響ないじゃん。」
「あの風の塊自体を結界で覆ってるから周りに影響なし。乾燥機の熱くないバージョンだよ(笑)。」
まだグルグル回ってるというか、回されてるお嬢様。澪が回転速度を落としてなんとか口が訊ける速度になったとたん
「なんなのよこれ!出しなさい!こんなことっ」
皆まで言わさず、また回転速度が上がる。
「反省がみられないわねっ」
「反省するまで続くのか?」
なにいってるの?って顔しながら
「当り前でしょ?」
俺が絡まれてる時は放置だったくせに、いじけそうになる。
「零、採らなくていいの?いくつだっけ?」
「んあ、5本だけど常時依頼だから少し多めで、と、他のと一緒に保存の術かけといて。」
花が終わりかけの物を5本と、同じようなのを余分に20本程取り、余分の方を澪に渡す。
依頼分と余分なものを分けて鞄にしまい、これをギルドに持っていけば依頼終了だ。
家に着くまでが遠足みたいな?なんか違うか?
ふと上を見ると……
「澪、あれ生きてる?」
「えっ?死んでないわよ。気絶したんだ(チッ)」
澪さん。女の子が舌打ちはどうかと思うよ?
気絶してるのを回しておいてもしょうがないので、下におろして寝かせる。
その間クリスさんは無言。ひたすら無言。
大丈夫かな?心配になってきたところで
「あ、あれはなんだ?!、2つの術を同時に、しかも完璧に制御して!どうしたらあんなにっ!」
あれ?やっちまった?
「まぁまぁ、落ち着いて。」肩に手をおき宥める。
「はっ!これが落ち着いていられるか!それに『かんそうき』とは、なんだ?!」
けっこうな剣幕のクリスさんに澪はドン引きして、俺の後ろに隠れる。
澪、お前のせいだからお前がなんとかしろ!とは言えない。それよりお嬢様は放置なんですか?と突っ込みたいけど、それも出来そうにない剣幕。
「俺達がいた『島』では普通のことなので何が凄いのかわかりません。」
後ろで澪もウンウン頷いている。「アルさんもこれくらいできるよ?」と澪が呟いてるけど、それっていつ確認したんだ?!
「えっ?アルさんとは?」
よし。澪から気が逸れた
「冒険者のアルザスさんという方です」
「っ!お知り合いなのですかっ?!」
「まぁ知り合いというよりか、お世話になってるというほうが正しいですが。」
「アルさん「おかん」だよね」
澪、本人の前で言うなよ。
「では、ガイストさんとも?」
「ガイストさんは「おとん」だよね」
間違っちゃいないが、とりあえず本人の前では、いや「おとん」だからまだいいのか?
話を聞いてみると、ガイスト達のパーティーはやはりこの街というよりサリキス公爵領内では有名で、パーティーランクはA(国内でもAランクのパーティーは少数)で、しかも個人のランクも一番低いのがソラでC。
アルとガイストはAランクらしい。知らなかった…いや聞かなかったけどさ。フィンとエルさんはBランクでパーティー名は『下弦の月』。
今さらだけどあの時、俺達が手を出さなくてもなんとかなったんじゃね?
因みにEランク以上が一人でもいないとパーティーは組めない。
とりあえず、街に帰るべく動き出した。
目をさますと面倒そうなお嬢様は軽く眠りの術をかけて…………
澪さん、キレるといきなり実力行使?
いえいえ普段はキレてもいきなり実力行使することはありませんが、あまりに零に絡むので、密かに怒りをためておりました。
なんと言っても『番』なので澪も零に惚れているのです。
二人きりの時じゃないと甘えたりしないので、他の人には分かりにくいですけどね。
ツンデレとは違います。




