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 レイとミオ、フェンリルが連れて来られたのは山脈の上の方で、目の前には大きな洞窟…

赤竜の住処のようだ。


『ふむ。とりあえず中に入れ。茶位ならあるからの』


は?茶?どうやって淹れるんだ?という俺達の疑問は直ぐに解けた。


巨大な竜が縮んでいった!と思ったら……


燻赤のごわごわしていそうな髪に紫の瞳の身長2メートルを超すような大男がそこにいた。







「適当に座っておれ」


洞窟の中に入り少し進むと右側に脇道のような物がありそちらに進む。


洞窟自体は竜がそのまま入れる程の大きさだが、この脇道はなるほど、人形でなければ入れないだろう。

それでもレイ達にとっては十分に広いのだが…


100メートル程進んだ所でまた少し開けた場所に出た。


全体に楕円形のような野球場位はあるそこには中央辺りにソファセット、端にベッドのような物もある。

反対の端には竈のような物があり、そこで煮炊きできるようになっているようだ。


天井も高く洞窟内だというのに圧迫感はまるでなく、竈の近くの天井には穴があるようで外の光が射し込んでおり、竈から出た煙りが外に抜けるようになっているようだ。

いろんな意味で換気に役立っているんだろう。



いそいそという言葉が似合いそうな様子で湯を沸かしている赤竜ーマジェーを横目に、

ソファに近付く…

やっぱり……遠近感が狂ったのかと思ったが違ったようだ。

竜基準で作られているだろうそれはデカイ。


テーブルがダイニングテーブル位の大きさ、それに合わせたソファなのだ…どこで買ったんだ?ってか竜用で売ってるなんてことないよな?

このソファで俺とミオ余裕で寝れるよな…

等と詮ない事を考えていると


「座っておれ」


赤竜に言われる。


ここまで付いてきて座らないとか意地をはってもしょうがないので、素直に座る事にする。

改めて部屋を見渡すが物が大きい位で他には特に変わったものはなさそうだ。


ちらりと横を見れば、フェンリルは流石に少し怯えているようだが、ミオは興味津々と言った程で時おり「うわぁ」とか声を上げながら辺りを見回している。

「ねぇレイ?このソファ良いね♪今まで泊まった宿のベッドより断然良い!」

何だか気をはっている自分が馬鹿のような気がしてきて、ミオの頭をぽんぽんと撫でる。


そうこうしているとお茶が入ったようで赤竜-マジェ-が此方に歩いてきた。

置かれた茶器は心配した程大きくはなく(それでもカフェオーレのボールくらいはある)ミオでも普通に持て、期待していなかった味については良い方に裏切ってくれた。


「美味しい〜!」

ミオが感嘆の声をあげる。

色は普通の紅茶だが、砂糖が入っている訳でもないのに仄かに甘味があり、フルーティーな香りがする。


「気に入って貰えてなにより。」

そう言って嬉しそうに自身も茶を飲む。

少しの間無言で茶を飲んでいたが、何時までもこうしている訳にもいかないし、まして茶を飲みに来たわけではない。


「で?赤竜、俺の何が気になる?」

レイが口火を切る。


「ふむ。若いのにあせるな。それに「マジェ」と呼べと言ったであろう?」


「じゃあマジェさん?このお茶はどこ「ミオ」…だって……」


じーっと目を見るとやっと黙ったミオ。

ぽんと一度頭を撫でる。


「ふむ。お主の番は可愛いのう。おおっとそう睨むでない。まあ、先に話をした方が落ち着くか……」

そう言ってマジェが話し出したのは

曰く、レイの中にはまだ開放されていない竜力がある。だが見ているとレイは純粋な竜ではない。

そのままでは秘められた力を開放するのは難しいだろうが自分ならその力を開放する手助けをしてやれる。力を開放してみないか?という事だった。

マジェがそういうのにも訳があり、どの世界でもありがちな力強いもの、寿命の永いもの程子孫を残し難い。

この世界でも例外ではなくここ何十年も竜の子は生まれていない。

にも関わらず、竜を狙うものは後を絶たず、万全の状態ならそうそう殺られることはないが、雨後の筍のように現れる狩人にまだ力の弱い若竜などが狩られてしまいその数を一段と減らしている。

齢200歳を越える竜はそうそう殺られはしないが、数の暴力を前にいつ殺られてもおかしくない。


なので力が完全でない若い竜を見過ごす事が出来なかった。しかも番がいるという事は次代も期待出来る若竜だ。放っておく事など出来ない相談だった。なので悪いとは思いつつも、脅してでも連れて来たのだと言う。






「…その力を開放したらどうなる?」

今でさえ人とはかけ離れた強さなのだ…これ以上になれば人に混じって生活するのが困難になるのは目に見えている。

自分だけではないのだ。

ミオの生活はどうなる?



「確実に今より強くはなるだろう。「なら…」だが、今よりもっと簡単に力の制御も出来るであろう」


曰く、中途半端に力が覚醒している為に制御が難しい状態になっている。

この世界にはこの山脈のように魔素の強い場所が幾つもあり、その影響で力がいきなり開放され暴走する可能性もある。


「山に入ってから何か変わっとらんか?」


そう言われてレイは考える。確かに少し体が軽く、しかも沸点が下がっている気がしていた。

強い魔物がいる場所だということで自重しないと決めた事でそうなっていると思っていたが…

違うとなれば話しは別。

だが、マジェの言う事をそのまま受け入れる事に抵抗感もある…

竜は同族を大事にはするが、だからと言って初対面の云わば半竜にそこまで力になろうとするのか?ミオとの生活は?

考えても答えは出そうにない……


「レイ?私の事はとりあえず置いといて、自分がどうしたいか考えて?」


横から手が延び、俺の手をミオが握ってくる。

ただ俺を労る気持ちだけがミオから流れ込み少し落ち着く。


「ここには何時までいてくれてもかまわん。ゆっくり考えれば良い。」


マジェの言葉に


「いや、こいつの親を探して親に返してやらないと…」


「ふむ。フェンリルの子よ?迷子か?」


『ちっ違う!拐われたんだ!!』


「ふん。この者らが拐うようには思えんが?」


『違う人間に拐われたんだ。』


「私達がいた街の近くの森で人から逃げて隠れていたのを保護したの」


「で、拐われてからの日数的にここじゃないかと思って連れてきた。」


この国にフェンリルがいるのはこのリーゼス山脈だけらしいし…


「ふむ。この山脈でなければどうするつもりだ?」


「別にあてがある旅じゃないからまた他を探すさ。」ちょっと肩をすくめ応えるレイに、マジェは笑みをこぼす。


「ちょっと待っておれ」といい目をつぶる……


暫くして目を開けると


「居るようじゃ。3日程で此方に迎えにくるそうじゃ。行き違いにならぬように此処で待つがよい。」

「「えっ?!」」


「きゃ〜!良かったね〜!お父さん達迎えに来てくれるって!!」


盛大に喜ぶミオに、まだ少し茫然としているフェンリル。

レイは驚きはしたが、どうやって探したかの方に興味があった。


知り合いなら直接()なんらかのアクションがあるはず。でもそんな素振りはなかった。何らかの方法を使ったんだろうが、その方法がわからない。考えていると、

「竜の念話じゃ。お主も覚醒すれば使えるようになろう。」


「は?念話なら今でも使えるぞ?」


「ふん。側にいるものだけであろう?竜の念話は本来もっと長距離かつ、複数につかえる。まあ、複数につかえるのは同族に限るがの。」


ようするに、同族である竜に最近子を探している、もしくは亡くしたと思っているフェンリルを見掛けなかったか?と尋ねたところ、心当たりのある地竜がいた。

その地竜から狼系の魔物であるアースウルフにそこからフェンリルに伝わったそうだ。


フェンリルも「神獣」と呼ばれることがある程の力の持ち主。後は地竜を介しマジェに迎えに来ると話したらしい。


なんだそれ?同族はアンテナか?いやそれより、此処まで3日もかかる場所(しかもフェンリルがだ)と念話出来るとは…


「まあ、ギリギリではあるな。」マジェはそう言うが…3日の距離を念話出来るというのは大きい。


現代人であるレイには情報のスピードがどれ程大事かわかる。しかも正確な情報が速く。だ…


もし、なんらかの事情でミオの傍を離れなければならない時の事を考えれば、是非とも欲しい能力ではある。だが、だからといって力を覚醒させるのは戸惑いが大きい。


「ふむ。とりあえずフェンリルの親が迎えに来るまでは此処で過ごせばよい。」



とりあえずそうするしかなさそうなので


「世話になる」と頭を下げるが、良い話し相手が出来たと嬉しそうにしているマジェに、色々と複雑な目を向けるしかなかった。

読んで頂きありがとうございましたm(__)m

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