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【TRPG】怪談白物語用 フリーシナリオ集  作者: 牧田紗矢乃


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14/16

傘にまつわる話

キーワードの一つである「鬱蒼と」については「鬱蒼」でひと単語とする場合と「鬱蒼と」でひと単語とする場合があるようです。

本シナリオにおきましてはどちらで指摘していただいても正解という扱いのため、「鬱蒼 (と)」というキーワードの表記方になっております。

キーワード


①夏至

②竜神

③鬱蒼 (と)

④鯉

⑤釣り竿

⑥水面

⑦ヌシ

⑧自由気まま

⑨傘

⑩レインコート











 百物語って、夜が明ける前に語り終えなきゃいけないらしいですね。

 ということは、ですよ。

 【夏至】の近いこの時期にやるのは愚策だったかもしれません。

 まあ、うだうだと前置きをしている暇があったらとっとと百話目を語ってしまうとしましょう。


 私が生まれ育った土地には、「【竜神】様」と呼ばれる神社がありました。

 本当はもっと別の名前があったようなのですが、社号が擦り切れて読めなくなっているくらい古い神社です。

 そして、【竜神】様に続く砂利道の少し手前には分岐があって、そこを逸れると小さな池があります。

 池は「【竜神】池」と呼ばれていて、神様がいるところだから近付いてはいけないと言いつけられていました。

 木々が【鬱蒼と】しているのに加えて、池の水はいつも濁っていて底が見えないので、底なし沼だなんて噂もありましたね。

 とはいえ、ダメだと言われると行きたくなるのが子供です。

 ある時、同じ学校の男子が一人でこっそりと【竜神】池に行き、大きな【鯉】がいるのを見たと言い出しました。

 その話を聞いた他の子供たちの反応は、信じる者半分、信じない者半分で割れました。

 そこで、嘘か本当か、皆で見に行って確かめようじゃないかと、そういう流れになったのです。


 いざ放課後に【竜神】様の鳥居前で集合となると怖気付く子もいて、集まったのは五人くらいだったでしょうか。

 言い出しっぺの子はバケツと【釣り竿】を持ってきていました。

 【鯉】を見つけたら釣り上げるつもりだったようです。

 五人でぞろぞろと池に向かうと、【鬱蒼と】茂った木のせいで薄暗く、吹く風もなんだか肌寒く感じられました。

 気味が悪いから早く帰りたい。

 全員がそう思っていましたが子供なりのプライドがあるので誰も口には出しませんでした。

 そして、腰が引けたまま池の【水面】とにらめっこを始めます。

「あっ、いた!」

 一人が池を指さした先には確かに大きな魚影があって、ゆっくりと子供たちがいる岸の方へ近付いてきていました。

 言い出しっぺの子は慌てて【釣り竿】を手に取ると、軽く振って池へ釣り針を落とします。

 【鯉】に気付かれてしまったのか、魚影は釣り針を避けるように進路を変え、【水面】まで浮き上がってきました。

 赤と白のコントラストが見事な、優に五十センチ以上ありそうな立派なニシキゴイでした。

 その姿を見た途端、不安げだった表情は消え「【ヌシ】だ!」と子供たちの間で歓声があがります。

 池の【ヌシ】はそんな子供たちの反応に見向きもせず、池の中を【自由気まま】に泳ぎ回っていました。

 釣り糸を垂らしてから五分が経ち、十分経ち。

 どれだけ待っても【鯉】が釣り針に食いつく様子はありません。

 言い出しっぺの子は【釣り竿】を引き上げると、代わりにバケツを手に取りました。

 強引にもすくい上げようというのです。

 【自由気まま】に泳ぎ回る【ヌシ】が池のふちへ近付いたタイミングで大きくバケツを振ります。

 しかし、空振り。

 水がまき散らされただけでした。

 二度、三度と挑戦を繰り返しますが、【ヌシ】は捕まってはくれません。

 なにせ、バケツは魚より小さいのです。

 入りかけたと思っても、胸鰭の辺りでつっかえてそのまま逃げてしまう。

 そこで持ち出されたのが、取り巻きの子が持っていた青い【傘】でした。

 言い出しっぺの子は【傘】を開いて池の中へ沈めると、金魚すくいの要領で【鯉】をすくい上げようと奮闘します。

 が、水の抵抗が大きく、思うようにいきません。

 何度か挑戦するうち、ドンと衝撃があって泥なのか苔なのかの色に濁っていた池の水がにわかに赤く染まりました。

 驚いて【傘】を引き上げると、骨組みの間に赤と白の鱗が数枚、引っかかっています。

 バシャバシャと水しぶきを上げながら【ヌシ】が逃げて行った軌道は、赤い筋となってしばらく残り続けました。

 その途端に怖くなってしまい、子供たちは【傘】を近くの草むらへ捨てて、逃げるように家に帰りました。


 不思議なことが起きるようになったのはそこからです。

 言い出しっぺの子が【傘】を使おうとすると、骨組みが折れていたり強風で飛ばされて失くしてしまったり何かとトラブルが起こるようになったのです。

 ダメになった【傘】が五本を超えた時、その子の親は【傘】を買い与えるのをやめ、代わりに【レインコート】を着せるようになりました。

 言い出しっぺの子はあの【鯉】が【竜神】様だったのではないかと思うようになりました。

 謝りに行きたいけれど怖い。

 そう思っているうちに、毎年【夏至】に行われる【竜神】祭がやってきました。

 祭りの喧騒に乗じてこっそり竜神池に様子を見に行ったものの、【ヌシ】の姿は見当たらず、結局そのままになってしまったそうですよ。


 何とか夜が明ける前に語り終えられましたね。

 ただ、最悪なことに雨の匂いがしますよ。

 皆さん雨具はお持ちですか?

 私は……――この【レインコート】がありますので。

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