偵察
「じゃあ、次はこの女の子ね」
少年を見る事を断念し、少し離れた地区にある小学校の前で着地すると、係長は少女のデータが表示されたタブレット端末の画面を僕に見せた。
小学三年生らしい。
「で、この娘の妹がこの娘」
係長がスワイプした画面には、小学一年生らしい少女のデータが現れた。
「二人共、ここの小学校らしいんだよねぇ」
係長は次々と元気良く溢れてくる小学生達を眺めながら言った。
その斜め後ろの電信柱に身を潜める。
「あっ、ちょっとっ! まぁーたサングラス外してっ!」
死角である筈にも関わらず、僕の行動を見透かしていたかの様なタイミングで振り向かれてしまった。
「何でそんなに外したいのさっ! ちゃんと掛けててって言ってるでしょっ!」
何故、そんなに掛けさせたいのだろう。
大体、こうやって遠くから見ていては、ギフターの子供が現れても分からないだろ。
「あっ、来た来たっ!」
確かに二人の少女が手を繋いで歩いているが、珍しい髪型でも派手な髪色でもなければ、背が高かったり太っていたりといった身体的特徴があるわけでもない人物をこの距離で識別出来るわけがない。
適当に言っているだけということは流石にないであろう故、前に会ったことがあるのだろう。
「よし、追うよって、ちょっとっ! だから、サングラス外すなっつのっ!」
係長にまたぞろ喝を入れられた。
やはり、諦めてかけるしかないならしい。
すると、サングラス越しの光景に目を疑った。
「びっくりしたでしょ?」
思わず、サングラスを上下に動かす。
何故だ……。
どういう事なんだ……。
二人の少女は何故か、光を放つ様に、あるいはオーラでも纏っているかの様に、全身が真っ赤だ。
「上げ下げしちゃうよね、そりゃ」
他の子供にはないそれは、サングラスを上げると消え、戻すとまた現れる。
「すごいでしょ? それでギフターの子を見ると真っ赤になるの。ゲンちゃん特製サングラスッ! ホントすごいよね、ゲンちゃんってっ! あんなすごい発明家なのに焼き鳥屋やってんのホント謎だよねっ!」
サングラスにそぐわない、はしゃいだ笑顔を見せた係長は、「じゃあ、追うよ」と、二人の少女に向かって小走りを始めた。
「目、離さない様にね。ちゃんと見ててよ、二人の事」
喋ったり大笑いしながら歩く二人の少女。
一定の間隔を置いてサングラス越しの彼女達を眺める、いかにも不審者の係長が視界に入り、自分もそうだと、我に返る。
「ああ! ちょいちょいっ! 掛けててってばぁ!」
ギフターを見分けるという目的を果たしたサングラスを外そうとすると、係長に止められた。
やはり、ただの雰囲気作りの意味もあったらしい。
「掛けてないと台無しになるから」
台無しって何だよ。
何が台無しなんだよ。
意味が分からない。
早く外したい。
不審者丸出しじゃないか。




