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10話 ブルーベリー鉱山にて

 フーラさん率いる冒険者パーティは、ギルドに設置されている転移陣に乗ってブルーベリージャムにあるギルドに移動。


『(初めて来た街、何だか周囲の空気が変わった気がする……!)』


 装飾の違うギルドから出ると、私が住むグリーンタウンとは様式が違う綺麗な建築物がズラリと立ち並ぶ街の景色が目の前に現れた。


 珍しい道具が並べられている商店街を名残惜しくも通り抜けて外へ移動。綺麗に舗装されたお洒落な道路を歩き、ついに目的地であるブルーベリー鉱山に辿り着いたのだった。


 青い岩肌が見える大きな山。その根本は冒険者らしき人達で溢れ返っていた。


「相変わらず人が多いわね……(前来た時より増えてない?)」


 道中から既に人だらけだったが、鉱山前は物凄い人だかりになっていた。


『ダンジョンは危険なのに、こんなに入りたがる人は居るんですね……』


「そりゃそうだ。このダンジョンは1階からでも火石みたいな便利な物や、デカい宝石が簡単に手に入る可能性があるからな。金が欲しい奴らは危険を顧みずに挑戦するだろうよ」


「で、半端な奴は大怪我するのよね」


「はい……だから色んなダンジョンが近いブルーベリージャムは、医療が特に発展してるんですよね……未知の毒を受けたり、不可思議な状態異常を持った様々な怪我人が沢山運ばれて来るから、色んな魔導士や医者が集まって、そこから医療も発達して……」


「まあ、医療が発達しているおかげで大怪我しても助かる可能性はあるから、更にダンジョンに入りやすくなるってのもあるわよね!」


「で、怪我人がどんどん増えてくんだよな!」


 嫌な連鎖だ……


「さ、無駄話はこれくらいにして……さっさと受付済ましてダンジョン潜るわよ!」


 受付は、全員の名前を登録してダンジョンの入場料を払い、ダンジョンの簡単な説明を受ける所だ。


 此処で名前を登録しておけば、例えダンジョンで倒れても、後で誰かに回収された時に名前を確認出来るから……との事だ。


 名前の登録は他にも色々理由はあるだろうが、受付は大事である事に変わりはない。




「さーて、受付も済ませた事だし……早速行くわよ!」


『はい!……ですがその前に、ダンジョンの出入り口で揉めている団体が居ますね……』


「揉めてる?喧嘩でもしてるの?」


『言い争いしてます!話の内容からして、どうやらエミルって貴族の周りにいる騎士が、他の冒険者を突き飛ばしたのが原因みたいです』


「そこまで分かるのか?」


『何となく分かります!……どうしますか?』


「その揉め事を解消しに行くわよ!(十中八九、団体で来てる貴族が原因だろうけど……)」


「フーラやめとけって!揉め事に突っ込んだって碌な事がないだろ!?しかも相手は貴族だぞ!!(何でフーラはこんな事に首を突っ込みたがるんだよ!)」


「そうですよ……!揉め事が終わるまで待機した方が……(フーラさん、またそんな事を……)」


「時間が勿体無いわよ。そんなに心配なら、このダンジョンの受付のスタッフを1人連れて行きましょ。スタッフも一緒ならいいでしょ?(変な貴族に絡まれてる奴も可哀想だし)」


 なんとフーラさんは、貴族と冒険者とのトラブルを解決しに向かうらしい。


 フーラさんは受付にトラブルの旨を伝えた。私の力を信じてくれたそこそこベテランそうなおじさんスタッフと一緒に、ダンジョンの出入り口へと向かった。



 

 ついに出入り口に到着。そこでは、独特な髪型でピアスをジャラジャラ付けた派手な冒険者2名と、沢山の騎士を連れた貴族が対立していた。


「お前が引き連れてる騎士が俺の相棒を突き飛ばしたんだよ!せめて相棒に謝罪しろよ!」


 派手な冒険者の片方は、怪我をした相棒を支えながら騎士の1人に文句を言っている。


「邪魔だから道を開けたまでだ。庶民なら尚更、エミル様の為に道を譲るべきだ。それとも何だ?お前達は道を譲るという簡単な事すら出来んのか?」


 特に図体の大きい騎士が、冒険者を相手に高圧的な態度でそう述べている。


「よせアラン、庶民には何を言っても通じない。奴らには我々の言葉を理解する頭が無いのだから(庶民と話をしても時間の無駄だ)」


 騎士を連れていると思われる貴族のエミルは、先程から冒険者に冷たい視線を送りながらそう述べた。


「それもそうですね……おいお前達、次からは避けろと言ったら素直に避けろ」


「俺らだってしっかり避けただろ!!なのに壁に激突するくらいに押しやがって!!」


「我々は団体で移動している。道幅が足りなかったから更に広げただけだ」


 どうやら冒険者達は、騎士を連れた貴族に道を譲ったが、それでも騎士の1人に邪魔だと押されてしまったらしい。


「ちょっ……ちょっと落ち着いてください!(うわっ!またエミル・ブルーバードかよ……!)」


 スタッフは慌てて対立する冒険者と貴族の間に割って入った。


 それにしてもこのスタッフ、心の中で「また」と言っていたが……もしかして、前にもこの手のトラブルを起こしていたのだろうか。


「あっ受付の人!聞いてくださいよ!この貴族が連れてるアランって名前の騎士が相棒を……!(突き飛ばして壁に埋め込んで壁画みたいにしだんだ!)」


 そんな馬鹿な。


「話は伺ってます!……あの、アランさん。これ以上冒険者同士でトラブルを起こしたら、流石にこちらとしても迷惑なので……こちらとしては、アランさんにはご退場をお願いしなくてはならないので……」


 スタッフさんは貴族が連れてる騎士を相手に、オドオドしながら注意をした。


「………………フン、これ以上こんな所でエミル様の貴重な時間を浪費する訳にもいかん。エミル様、行きましょう」


「ああ。皆の者、行くぞ(時間の無駄だった)」


「「「「はっ!」」」」


 エミルの一声で周りの騎士が動き出し、ゾロゾロと引き連れてダンジョンの中へと入っていった。


「何なんだアレ……」


 カラさんはその光景を呆然としながら見つめている。


「……皆様、本当に申し訳ございません……(またこれか……ホント困るなぁ……)」


 スタッフが皆んなに謝罪の言葉を述べると、そそくさと受付の方に戻って行ってしまった。


「はぁ……スイ、行こうぜ」


「そうだな……あ、そこの3人組、スタッフ連れてきてくれてありがとな、お陰で少し冷めたわ。じゃ(マジ最悪だった……)」


 騎士に突き飛ばされた冒険者は、ため息を吐きながらもスタスタとダンジョンへと入って行った。


「結局スタッフも、あの冒険者も、エミルって貴族が何なのか教えてくれなかったわね……」


「でもかなり傲慢な奴みたいだな……この後もアレに出会うかもしれないと思うと、少しテンション下がるな……」


「その時は相手を吹き飛ばせばいいのよ。それにしても貴族って本当に碌なのが居ないのね、庶民をあんなに見下して嘲笑って……!」


「皆んなあんなワガママな奴じゃないって!あと、オレも一応貴族なんだけど……」


「アンタん家はあってないようなものでしょ!!」


「言い過ぎですよフーラさん……確かに、カラさんのお家は存在感が薄いですけど……」


「アマリリちゃんも言い過ぎ……えっと、とりあえずダンジョン入ろうか……」


「そうね。じゃあ気を取り直してダンジョンに入るとしましょう」




 騒ぎがひと段落した所で、ようやくダンジョンの出入り口へと突入した。


 ダンジョンに続く整備された長い道を1列になって進みながら冒険の準備をする。アマリリさんは強化魔法を皆んなに掛けたり、3人で今回は何をするのかを改めて話し合っていた。


「ダンジョンは5階まで一気に駆け抜けるわよ。とにかく雑魚の魔物は無視して、珍しい敵が出たら狩るのよ」


『目当てはアイテムだけじゃないんですね』


「勿論!レアアイテムのついでにレアな魔物も狩る予定よ。此処では特にジェムスライム、クリスタルマンドラゴラ、シーフラット辺りが狙い目ね。いい物を落としてくれるのよ」


『分かりました!私は常に辺りの状況を共有し、その魔物が出たら真っ先に皆さんに教えます!』


「頼んだわよ!そうそう、とりあえずその辺の邪魔な魔物も倒して回るけど……弱った魔物の後処理は全部モヨに押し付けてもいいかしら?」


『えっ!?』


 それはつまり、仲間の魔物であるナワとバスラ達にこの辺の魔物と戦わせられるという事だ。ついでに私も戦いの練習が出来るだろう。


『えっと、その……本当に宜しいんですか……!?』


「ええ、目当ての魔物以外と戦っても時間の無駄だもの(最近モヨは魔物と戦う練習してるって聞いたし……少しくらいは手伝ってもいいわね)」


『あっ……ありがとうございます!』


 恐らくフーラさんは何処かで私の「強くなりたい」という噂を聞き、私のトレーニングの為に魔物を寄越してくれるのだろう。


「あっ、そろそろ到着するわね……皆んな、気を引き締めて行くわよ!」


「おう!」


「はい!」


 そしてようやくお目当てのダンジョンに到着した。周りは青黒い岩肌だらけのシンプルでゴツゴツした所だ。地面はそれなりに整えられて綺麗で、辺りには冒険者が沢山うろついている。


「此処はダンジョン1階……とりあえず4階まで急いで降りるわよ。モヨ、案内を頼んだわ」


『はい!任せてください!』


 皆んなは武器を構え、私は体内でダンジョンの地図を構えて、1列のまま先へと進み始めた。


 ダンジョンの道は広く、かつ入り組んだ大迷路のようだった。これは地図があっても迷う人は迷ってしまうだろう……


 だけど、私がいれば大丈夫!


『その突き当たりを右です!』


「分かった!」


『次は左……ですが、こちらには魔物が沢山居るので右に曲がって迂回しましょう!』


 私は地図とテレパシーを照らし合わせ、次の階層に続く正しい道を的確に教えた。


「あ、レッドスライム。モヨ、口開けて!」


『はい!』


 道中に出てくる雑魚は、フーラさん達が軽くボコして私の口に放り込んでくれた。


 そして私の体内では……


『敵が来たぞー!!』


「プィー!!」


「!!」


 入って来た弱った魔物を私とナワとバスラがお出迎えした。私が武器や魔法をぶつけ、ナワが糸の塊を吐き、バスラは身体を鋭利な刃物に変えて突撃した。


 体内にいた魔物は私達のコンビネーションで、あっという間に消え去った。


「良い調子ね!」


「前に来た時よりも早く進めてるな!」


 ダンジョンの方は順調だ。効率よく進んでもう地下2階に突入した。


 フーラさんは多めに雑魚の魔物を私に寄越してくれるし、私も経験を得て強くなれる。魔物をくれるフーラさん達には感謝しかない。


「(魔物の動きが手に取るように分かる!次にどう動くか分かるから物凄く狙いやすい!)」


 私が魔物の考えを読み取ってテレパシーでフーラさん達にリアルタイムで送信。これで魔物のやる事は全て私達に筒抜け、戦いもグッと楽になる筈だ。


「(この調子でどんどん先に進むぞ!)」


「(皆んなに迷惑を掛けないようにしなくちゃ……!)」


「(モヨの宿屋……!最新技術が揃った快適な宿屋……!早く見てみたいわ!!)」


 この後、フーラさんは私の予想を遥かに超えた頑張りによって、想定した時刻より早めに地下5階へとたどり着いたのだった。

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