12話 以外といい感じかも?
若草草原。安全地帯の周囲には、薬で強化されたゴブリン15体が人間を求めて現れ、人間を探してあちこちに潜んでいるようだ。
「補助魔法も掛けてもらったし、これで準備完了!弾も奮発して威力高いやつにしたし、これならパワーアップしたゴブリンを仕留められるでしょ!」
ソニアさんに補助魔法を掛けてもらい、ゴブリンと同様にパワーアップしたタルタさん。
仮に攻撃を喰らっても補助のお陰で最小限に収められるだろうし、素早くなったから逃げるゴブリンも確実に仕留められるだろう。これならいつでも始められそうだ。
「ソニアちゃん、モヨ、準備はいい?」
『準備万端です!!』
「私も大丈夫……(ひぃ……緊張する……!)」
「よし!じゃあ……早速始めるよ!」
タルタさんの合図で、ついにゴブリン狩りが始まった。
「1匹も逃さない!」
タルタさんはその場でサッと立ち上がり、姿が見えているゴブリンに向かって素早く銃を向け、狙いを定めて引き金を引いた。
「ギエッ!?」
「グェッ!?」
銃の攻撃は次々と命中し、攻撃を喰らったゴブリンは次々と倒れて消えていく。
「(コウゲキサレテル!)」
「(イッタンカクレロ!)」
「あっ隠れた!」
タルタさんは気付いた所を次々と狙うが、流石に全部を把握するのは難しいのか、一部攻撃を外してしまっている。
「全然当たらない!」
「あのゴブリン……石を投げて遠くの草むらに投げたり、わざと隣の草木をゆすったりして、こっちの攻撃を誘発しようとしてる……(なんてずる賢いの……)」
「あーもう!また外した!変な事すんな!!」
『落ち着いてください!タルタさん、さっき攻撃した所から少し右の、あの玉草が2つ生えてる所の草むらにゴブリンが居ます!』
「ごめん!言われても分かんない!」
『ですよね!』
相手は気配を消して上手に隠れているから、大まかな所を伝えても分からないのは当然だ。
『それなら……タルタさんに直接、ゴブリンの居場所を教えてみます!』
「そんな事出来るの!?」
『まだやった事はありません!頑張ってみます!』
テレパシーなら多分、私が見ている光景や感覚も伝える事は出来る筈だ。
『(ゴブリンが居る位置をタルタさんに……届け!)』
私は心を集中させ、ゴブリンから察知した気配や感覚をタルタさんの頭に強く念じた。
「……あっ!居た!」
どうやらゴブリンの位置が上手く伝わったようだ。タルタさんは隠れているゴブリンに正確に銃口を向けた。
「これでも喰らえ!」
「グエッ!?」
『命中しました!次はそこから更に右奥の……大きな葉っぱが生えてる、草が濃い所です!2匹居ます!』
「……あっ、見えた!それっ!!」
「ギッ!?」
「ガァ!!」
私のテレパシーでゴブリンの位置を把握したタルタさんは、草に潜んでいるゴブリンを次々と倒していく。
ゴブリンの数はあっという間に減っていき……残すところあと1匹となった。
「(ナカマキエタ……!ニゲロ!!)」
孤独となったゴブリンは急に弱気になって逃げ出した。ゴブリンは強化された足をフルに動かし、ジグザグに移動しながら遠くに逃げようとしている。
「あっ逃げた!めちゃくちゃ速い!しかもあんな適当な動きされたら当てづらい!」
『私に任せてください!あの距離なら……!』
私はランタンから出て安全地帯のギリギリまで移動し、ゴブリンの頭に狙いを定めた。
『『『止まれーーーーっ!!』』』
「ギエッ!?!?」
私はテレパシーでゴブリンの脳目掛けて大声を飛ばした。大声は見事命中し、ゴブリンは頭を抱えながら一時停止した。
「今だ!!」
「ギッ!!」
最後の一発も見事命中、ゴブリンはその場に倒れて姿を消した。
「やったー!全部倒したー!」
タルタさんは大喜びで安全地帯から飛び出し、あちこちに散らばるゴブリンの落とし物を拾い始めた。
『た、大変だった……』
一方私は、慣れない事をしたせいなのか、だいぶ疲れてしまった。魔物の位置を伝えるやつは、もっと練習しないと普段使いできないかも……
「はい!これソニアちゃんの分!」
「えっ……いや、私は……(そんな、ゴブリンの落とし物を分けてもらえるほど活躍してない……!」
「ソニアちゃんも頑張ってたじゃん!それに、1人で持ち帰るには多すぎるから、ソニアちゃんが貰ってくれるとものすごーく嬉しいんだけどなぁ……」
「わっ、分かりました……」
ソニアさんは、タルタさんからゴブリンの落とし物を山分けしてもらったようだ。タルタさんいい人……!
「いやー一それにしても一時期はどうなるかと……でも、2人のお陰で無事に退治できたよ!ありがとう!」
『はい!何とかなって良かったです!』
「…………」
私とタルタさんが喜ぶ中、ソニアさんはタルタさんの足を無言でじっと見つめていた。
「……タルタさん、止まって」
「えっ!?何々!?」
「いいから(多分、この足元に……)」
ソニアさんはタルタさんに近付き、タルタさんの足をくまなく調べ始めた。
「……足、怪我してる(動きが少し変だと思ったら……やっぱり……!)」
程なくして、タルタさんの足に大きな打撲の跡を発見した。タルタさんの動きに違和感が無かったから、まさかこんな怪我をしてるなんて全く気付かなかった。物凄く痛そうだ。
『痛そうです!』
「あー逃げる時にゴブリンに殴られたやつだね。でも薬飲んでたから大丈夫!(帰ったら治療受けないと……)」
「……動かないで」
「えっ?もしかして心配してくれてる?大丈夫大丈夫、これくらい平気……」
「止まって(このままじゃ悪化しちゃう……!)」
「あ、はい……」
ソニアさんの圧力に押され、タルタさんが大人しくなった。
ソニアさんはポーチから治療道具を取り出し、慣れた手つきで治療を始めた。薬や魔法を駆使してタルタさんの傷を癒していく。
「終わった。念の為、後でギルドの治療師に傷を見せて(これで大丈夫……)」
「おーっ!だいぶ良くなった!ありがとう!ソニアちゃんって治療も得意なんだね!」
「そんな事ない(腕はまだまだ……)」
「謙遜しなくていいって!めちゃくちゃ上手だよ!仲間に欲しいくらい!(ソニアちゃん、補助魔法上手いし周りをよく見てるし……そして優しい!絶対仲間に欲しい!)」
おっ!タルタさんがソニアさんを仲間にしたそうに見つめてる!ソニアさん、仲間を作るチャンスだよ!
「……ありがとうございます(タルタさん、あんな感じでも社交辞令言えるんだ……)」
あ……タルタさんの仲間欲しい宣言を社交辞令だと思ってる……
「仲間の件、考えといてね!」
「考えておきます(社交辞令を本気にしたらダメ……大怪我する……でも、もし本当に仲間に欲しいって言ってくれてるのなら、今の私って物凄い失礼……?確認したいけど、どうやって会話を切り出したら……)」
『(大丈夫だってソニアさん!でも、ソニアさんは会話を切り出す勇気が出ないみたい……)』
こうなったら、私がそれとなくソニアさんから言葉を引き出すしかない!
『それにしても、タルタさんの銃は物凄い命中率でしたね!ね、ソニアさん!』
「(あっ、話振ってくれてる!今がチャンス!えーと……)……うん、腕は良かった」
「でしょ?私、銃の腕は結構あるんだよ!……さっきみたいに焦って無駄撃ちする事はあるけどね。私ってそそっかしい所があるからさ」
「見れば分かります(物凄い命中率だった……)」
「だよねー、皆んなから「見ててハラハラする」って言われるよ」
「あ……(違う!さっきの見れば分かるって言葉は、銃の腕の事で……!指にタコが出来てるから、相当練習したんだろうなって……!)」
あっ、ソニアさんがまた言葉を詰まらせてる!えーと……
『ん?ソニアさん、さっきからタルタさんの手を見てますが、何を……あれ?タルタさん、その指にあるのって何ですか?』
「これ?銃の練習した時に出来たタコだよ!えっ、もしかしてソニアちゃんこれ見えたの?結構見づらい所にあるんだけど……よく見てるね!(観察眼があるんだね!)」
「偶然見えた……(しまったー!!じっと見つめすぎた!このままだとキモい人だと思われる……!えっと、何か言って誤解解かないと……!)」
「えっと、練習……物凄く銃を練習したんだなって……さっき銃の腕があるってタルタさん言った時に、指のタコを見て銃の腕前は見れば分かるって……流石に生意気過ぎましたか……?(テ、テンパった……)」
ソニアさんは顔を強張らせながらタルタさんを見つめた。
「えー!?ソニアちゃん私の事をめちゃくちゃ褒めてくれるじゃん!しかも目の付け所が良い!こんな所まで見てくれるなんて……!」
ソニアさんの言葉に、タルタさんが感動している。
「えっ……?」
「凄くしっかり見てくれるから、私の足の怪我もすぐに気付けたんだね!さっきゴブリンの妙な動きが何なのかも理解出来てたし……ホントに凄いよ!」
「……そんな事ない(この人、私を物凄く褒めてくる……!怖い……!)」
「そんな事ある!(私、やっぱりソニアちゃんを諦め切れない!)ねえソニアちゃん!」
「は、はい……(何……?)」
「ソニアちゃん、私とパーティ組んで!私みたいなそそっかしい奴には、ソニアちゃんの冷静な目と魔法が必要だよ!」
「え、でも……(そんな……本当に私でいいの……?)」
「……もしかして、パーティ組めない理由とかあったりする?」
「無い!でも……本当に私で良いの……?」
「ソニアちゃんがいい!ね、お願い!」
「…………うん、分かった(うわーーーー!?!?初めてパーティのお誘い受けちゃった!!!!)」
「やったーーーー!!」
何とタルタさんのトーク力のお陰で、ソニアさんに頼もしい冒険者仲間が出来た。慎重なソニアさんに行動力のあるタルタさんが加われば、ちょうど良いパーティになりそうだ。
「ありがとうソニアちゃん!!」
「……別に、どうって事ない……(私、お礼言われる程の事してない……!)」
「私にとってはビッグイベントだよ!ありがとうソニアちゃん!」
「…………あの」
「ん?」
「……こちらこそ……ありがとうございます……」
「どういたしまして!ソニアちゃん、これから宜しくね!」
「はい(やった……!初めて冒険者仲間が出来た……!)」
ちょっとつつきすぎたかもって思ったけど、お喋り上手なタルタさんのお陰で無事にソニアさんに仲間が出来た。
『(ポジティブなタルタさんとの相性も良さそう!これは将来が楽しみ!)』
そして探索の帰りにて……
「(さっきの私、物凄く失礼だったかも……何でタルタさんにあんな事言ったんだろう……明日謝った方がいいかな……でも、昨日の事を謝罪しても相手は困るかな……)」
タルタさんと別れた後。超ネガティブに戻ってしまったソニアさんは、帰りの道を歩きながら今日の行動をずっと反省し続けていたのだった……
『(でも、超ポジティブなタルタさんと一緒に居れば、ソニアさんの自己肯定感も少しずつ上がっていきそうな気がする……)』




