第40話 わたし、皆が大好き! もーポイポイ出来ないよぉ!
「どうして私は、こんな子供達に、薄汚い皇帝の血族に負けるんだぁぁ!」
体内で暴れ狂うエネルギーが炸裂する直前、カルラは思った。
どうしてヒトの姿を失ってまでも戦った自分が負けなければならないのか。
そんな時、カルラの耳にある言葉が聞こえた。
「愛を知らない哀れなカルラ。愛は偉大なのよ」
愛、愛とは一体何なのか?
早くから母から引き離されたカルラには分からない。
腕が使えない中、口を使ってでも娘の為に攻撃をしてきた女。
ボロボロになってまで自分に立ち塞がる少年。
そして、眩しいまでに愛を叫びながら突っ込んできた少女を。
「愛とは……」
ふとカルラは父の言葉を思い出した。
「お前の母は我が妻だ。あんな薄汚れた原始人なぞは用済みなのだ!」
また使用人の言葉も思い出した。
「お坊ちゃまって可哀想よね。実の母親から早くに引き離されて。そういえば、その母親は?」
「大金詰まれたのに納得しなかったから、御貴族様に逆らったということで……」
「そうか、母は、母さんは私を捨てたんじゃない、父に殺されたから迎えに来てくれなかったんだ。かあさん……」
そしてカルラは光に包まれて消滅した。
最後の瞬間、カルラは母が自分を迎えに来たように思った。
そして理解した、愛の強さを。
◆ ◇ ◆ ◇
「いたいのぉぉ!」
「しょうがないだろ。無茶しすぎなんだよ!」
「そうねぇ、でも家族揃って入院ってのもいいかもしれないわ」
「僕も一緒ってのは、なんだろうねぇ」
「らーら、みんな、いっしょ!」
ここは市内の総合病院。
6人部屋を借り切って、わたし達家族全員が入院をしている。
「メイちゃん、わたし聞いたよ。後遺症覚悟で無茶したって!」
「ごめんねぇ、カナエちゃん。あの時は、この方法しか思いつかなかったのぉ!」
「勝ったし、そこまで酷い怪我にならなかったから良いけど、もう少し考えて行動しろ、メイ!」
「おにーちゃんもごめんねぇ!」
今日はカナエちゃんがお見舞いに来てくれている。
どうして全員入院になったかというと、全員カルラにやられたからだ。
「でも、おとーさんも戦っていたんだぁ」
「だって、僕だけ後ろで観客なんてやってられないさ。戦う力くらい僕にもあるんだよ!」
何回か助けてくれた大型ライフルでの狙撃、あれがお父さんの攻撃だった。
後から聞いて、とってもびっくりしたの。
「おとーさん、あのビーム喰らってよく無事だったよね。わたし達みたいに防御フィールドあるんじゃないのに?」
「タカコさん経由でフィールドチョッキ貰っていたんだ。だから、このくらいで済んだんだよ」
お父さんは包帯でぐるぐる巻きにされて吊るされている脚を、これまたミイラみたいに包帯で巻かれた腕で示す。
「お母様は両腕骨折って聞きましたが、痛みますか?」
「カナエちゃん、ありがとうね。どっちかというと肋骨の方が痛いわ」
お母さんは、カルラの攻撃から身を守る為に刀の他に両腕も使ったそうだ。
それでもコンクリート壁へぶつかった衝撃は打ち消せず、肋骨も数本骨折している。
「まったく誰も彼も無茶しすぎだよ」
「そういう、あーちゃんもボロボロじゃないの!」
お兄ちゃんも到るところが裂傷、更に肋骨もかなり折れている。
「みんな、かっこいいの!」
「ラーラちゃんは元気だね」
「うん、カナエ!」
もはや隠すつもりも無い猫耳を晒したままのラーラちゃん。
ラーラちゃんも肋骨にヒビは入っているし、手足の筋をだいぶ痛めている。
「ほんと、皆怪我しても生きてて良かったの。ホント良かったのぉ…うわーん」
カナエちゃんは感極まって泣き出してしまう。
「ちょ、カナエちゃん。わたし達皆動けないから、涙拭いて上げられないのぉ!」
「だって、だってぇぇ。動画見てても怖かったんだよ。それをメイちゃん達はあんなバケモノ目の前にして戦ったんだよぉ!」
おいおいと泣くカナエちゃん。
「かなえ、なかないで。らーら、かなしくなるの」
比較的軽症で動けるラーラちゃんが、泣き止まないカナエちゃんの背中を擦ってティッシュペーパーで涙を拭う。
「ら、ラーラちゃぁぁぁん!!」
「うんうん!」
ラーラちゃんに抱きつき、泣くカナエちゃん。
……うむ。巨乳の女の子同士が抱き合うと、こーなるんだぁ。
わたしは上げていた頭を枕に戻す。
……いたいのぉぉ!
わたしの怪我は前回同様、各筋肉の肉離れに亀裂骨折。
思ったほど負担は少なかったのか、攻撃の威力程の被害はなかった。
……後半のカナエちゃん達の応援が無かったら危なかったかもね。
神楽本部長が見舞いに来た時に聞いたけど、あの時の声援はファンクラブの人が頑張ってわたし達の正体を隠しながら生配信してくれたかららしい。
全国、いや世界からわたしに向けて沢山の声援が飛んで来た。
そして最終局面にわたしに送ってくれたんだとか。
……怖い顔しているけど、神楽おじさんには感謝しなきゃね。
そういえば、師匠はカルラに蹴られた時、塞がりかけていた傷が割けたんだって。
なので、わたし達同様に再入院中。
流石にお孫さんからも、こっぴどく怒られたと、映像通信で少し嬉しそうに話していた。
「おにーちゃん……」
お兄ちゃんの事、わたしはまだお母さんにもお兄ちゃん本人にも聞いていない。
カルラの言った事が本当なら、お兄ちゃんは異世界帝国の皇帝の血族、わたしとは一切血のつながりが無い事になる。
「逆に結婚には問題ないけどね」
従兄同士でも結婚は出来るけど、他人ならもっと問題ない。
それに異世界帝国の皇帝は元々日本人、更に問題は無い。
「おかーさん、異世界人拾うの二回目って言ってたのは、こういう事なのね」
わたしは、なんとなく事情を理解した。
「まー、おにーちゃんは、おにーちゃんだもん!」
何があろうとも、お兄ちゃんはわたしが大好きなお兄ちゃんなのだから。
「なに、さっきからブツブツ言っているんだ、メイ?」
「お兄ちゃんがだーいすきって話しだよ!」
「ちょ、他人が居る前でそんな事言うなよ!」
顔を真っ赤にするお兄ちゃん。
「メイちゃん、ひゅーひゅー!」
カナエちゃんも顔を赤くしながらもわたし達を茶化す。
「ちょ、やめてよぉ!!」
病室に大きな笑い声が響く。
こんな幸せな家族に愛されて、わたしとっても幸せ。
他の人々も同じように幸せでいて欲しいの。
ぜったい、この幸せを守るんだ!
なおこの後、わたし達は看護士やら婦長さんやら、お医者様にこっぴどく怒られましたとさ。
◆ ◇ ◆ ◇
「カルラにガンダルヴァが、ああも簡単にやられるとは」
「ふん、あいつらは28部衆でも最弱。我が行っておれば、ああもはならないぞ」
「まあ、そうも言うな。あのフィールド合成技は興味深いぞ」
「確かに違う属性のフィールドを合わせるのは面白い」
「なあ、あのボウズの顔、見覚えないか?」
「お前もそう思うか」
「おい! 皇帝の御前だぞ! 静かにしろ!」
28部衆の頂点に立つ鎧武者ヴァジュラは、謁見室に集まった28部衆に注意を促す。
「陛下のおなりだぞ! 控えおろう!」
「はっ!」
皇太子アミターヴァが掛け声をして、玉座が床から浮き上がる。
そこには虚ろな眼をした皇帝タタガータ1世がいた。
「第一章 完」
「作者殿、お疲れ様でした。10万字でちゃんと纏めるとは腕を上げたのじゃ!」
はい、なんとか形に出来ました。
最後の方は、勢いに任せて書きなぐった感じでテクニックも何も無かったような気はします。
「まあ、それでも形にできたのは重畳なのじゃ! で、次はどうするのじゃ?」
今の予定ですと「異世界CSI」の方を書く予定です。
お正月SSは書いたので、その続き。
タケ君が捜査室に入る前、リーヤちゃんが捜査室に加入したばかりの話を書こうかなと思ってます。
このまま最終章ってのには少し早いですしね。
「それの方が良いのじゃ。ワシの仕込みもあるでのぉ」
チエちゃん、一体何をやっているんですか?
「そこは内緒なのじゃ! では、皆の衆。リーヤ殿の話でまた会うのじゃ!」
メイちゃんの話は一旦ここで終わり。
けど、せっかく設定作ったのでいずれ続き書きたいので応援宜しくです。
では、応援ありがとうございました!!




