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朱色  作者: 脱兎田 米筆
3/20

「久しぶり。」


 ピンポーン

 間抜けなチャイムの音が鳴る。

 田舎 民家 で画像検索すれば出てくるような見てくれの家。俺の家。

 しきりに汗を拭いながら、中から人が出てくるのを待つ。

 久しぶりの自分の家をまじまじと観察する。あの駅ほどではないものの古くなった木造の平屋、庭に植わっている琵琶の木、玄関の横に置かれている植物の植わっていない鉢植え、五年前と殆ど変わっていない、唯一変っているものと言えば琵琶の木が成長したぐらいだ。

 ガラガラガラ

 扉が勢いよく開く。

 「どちらさ――あら、あんた遅かったわね」

 俺の肩程の身長の女性、俺の母親。

 「電話では話したけど、久しぶり」

 「そうね、久しぶり。取り敢えず中に入りなさい」

 母は踵を返し家の中へと帰っていく。……久しぶりに息子を見るのに少し冷たくないだろうか? こんなものなのだろうか。

 少し寂しかったがこの高気温から一刻も早く逃げたかったので、とっとと中に入ることにする。

 ああ、懐かしい廊下、懐かしい匂い。なんだか、駅に降りてからずっと懐かしいとばっかり思っている気がする。

 靴を脱ぎ、今まで転がしていたキャリーバッグを持ち上げて、居間へと向かう。玄関に入ってすぐ右にあるトイレの扉を通り過ぎその奥にある、所々茶色いシミのある襖を開ける。

 襖を開け、眼に入ってくるのは色褪せた畳、その上に座椅子に座る禿頭の男。俺の親父。母の姿は無かった台所にお茶でも入れに行っているのだろう。

 親父は、テレビを見ていたが首をこちらに回し俺を見る。俺は口を開く。

 「久しぶり、親父。ただいま」

 親父はムスッとした顔のまま、口を開く。一言だけ。

 「お帰り」

 

読んでいただきありがとうございます。

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