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感傷
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黒く風化した木造の壁に青々とした植物のツタが覆いかぶさった駅、知らずに見れば廃墟としか思わない見てくれ。
俺はそこを出て、これから少しの間お世話になる実家を目指して歩き出す。
道脇を流れる透明な水、鼻腔をくすぐる植物の青臭さ、遮るものが無く直接身を焼く太陽の光、時々視界に移る蝶の羽ばたき、すべてが懐かしい。
ここに帰ってくるのは五年ぶりか、五年しかたってないのに涙が出そうだ。鼻がつーんと痛くなる。
……それにしても暑い、喉が渇いた。
何処かに自動販売機でもないだろうかと辺りを見渡す、が、開けた視界にそんなものは無かった。こんな事なら水筒の一つでも持ってくればよかった。少しだけ後悔する。実家に着くまでの辛抱か。
俺はズボンのポケットからハンカチを出し顔の汗を拭う。
もう少しで家に着く。
自分の足音、セミの鳴き声、キャリーバッグの車輪の音、それらを聴きながら身を焼く陽射しから逃げるように俺は歩を進めた。
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