過去からの依頼人(その9)
二番目の犯行現場に二人は到着した。
ミツオとエリーがたたずむのは人々が行き交う駅前ロータリー。
もう夜も遅い時間だが、家に帰りたくない者たちが、楽しそうにはしゃいでいる。
ミツオは一瞬ほほえみながら、そんな人を見た後、ここにいる現実と向き合うことにする。犯行現場である列車のホームを見上げた。発着ホームは地上30メートルに整備されている。ホームに到着する列車は空を飛んでいるのでレールは無い。停車ホーム上空から、垂直の上下運動で離発着を行っている。
「こんなところで犯行が行われたのですか」
エリーは驚きを隠せない。
「そうだ。被害者山田太一 50歳。絞殺。送りつけられたビデオテープに映っていたのは首にロープが巻かれた状態の被害者。ロッカー状の箱におしこめられているようだった」 ミツオは自分の心の痛みをごまかすためにタバコに火を点ける。
「一気にロープを締めてはいない。徐々に被害者の上方向へとロープが引き上げられていた」
ミツオはなんと説明したら良いのかと黙り込んでしまった。
沈黙に耐えきれなくエリーが口を開く。
「この場所とどう関係があるのですか」
「列車にロープが結わえてあり、そのロープの先に被害者がいた」
おどろいたエリーは言葉を失う。ミツオは先を続ける。
「被害者が拘束されていたロッカーは列車と一緒に空を飛んでいた。犯行時刻は終電間際だったので、暗闇にまぎれて誰もそんなものがくっついているとは気付かなかった。ドローン棺桶だな。列車とほぼ等間隔で飛行するようにプログラムされていた。ただし時間と共に少しずつ列車との間隔を広げるように飛んでいた。結果、ロープは引っ張られて絞殺された」
「そのドローンは当然、鑑識で捜査したのですね」
「ああ、ねじ一本に至るまで分解したよ。ただし、すべての部品はゴミ捨て場から拾ってきたジャンクパーツで出来ていた。結果、何の証拠も見つけられなかった」
ミツオはくわえたタバコを深く吸った。




