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第60話 制限時間

 





「よう!サキ!」

「おっさんとみんなじゃん」

「その言い草じゃ、俺だけ仲間外れみたいじゃねえか・・・」


 新しいキャンプ地で私に声をかけたのは『金獅子の牙』を引き連れたブラディオだった。


「みんなもダンジョン並ぶの?」

「その予定だったが、こうも長い列になってるとな・・・」


 ブラディオは行列の方を見やり、手を頭に当てる。シーフのクロードが口を開く。


「せっかくだから今日はこの近くにいる強い魔獣を調伏しに行かないかってことになってさ」

「ライラのペットが増えて餌代も馬鹿にならないのにね」


 そう肩をすくめるのはエルネスタだ。


「馬鹿を言え。私は魔獣を維持することに命を懸けている。餌代ぐらい私の稼ぎで賄えているぞ」

「だからそれをケチって占いにお金を使うべきよ」

「悪いが強い魔獣が居る場所以外に興味はない」

「今回の魔獣はギルドに討伐依頼が出されているアビスドラゴンという強力な種だ。ベヒーモスの巣が近くにあるらしく、縄張り争いで生態系がおかしくなっているそうだ。ついでにペットになりそうならライラの戦力も上がるしな」

「魔獣・・・動物みたいなもんだよね。ちょっとモフりたいかも」

「おお、サキも魔獣の魅力に目覚めたのか!一緒に行こう!」

「おーけー」


 私はタバコに火を点け、みんなと同じ方向へ歩き出した。







 もしも死んだ人間を生き返らせることが出来るなら。


「・・・」


 ずっと頭の中に引っかかっていた。もし、○○が生きていたらどうだっただろうかって。


「まあ、考えても始まらねえわな」


 なんせ亡くなってから随分な月日が経つ。この世界じゃ蘇生するのにも3日という制限があるはずだ。時間が経てば経つほど成功率は下がるという。


「取り敢えず、俺にとっての真実の愛を探さなきゃな」


 目下の課題はこれだ。それが最終的な目的だというつもりは毛頭ないが、追求した過程で得られた点と別の点が線で結びつくことは稀にある話だ。それが人生の羅針盤になる。


「その、男で良いのか・・・?」


 ダンディが遠慮がちに俺に話しかける。


「な、なんだよ。そんなよそよそしかったら逆に気まずいだろ・・・」

「あ、ああ、すまない・・・」

「今はそうとしか思えないんだよな。いや、思ってるっていうか考えてるっていうか」

「恐らく論理性の話だろう」

「そう、それだよ」


 ダンディは考える素振りを見せ俺にこういった。


「だったら今度、街に行ったときにゲイのコミュニティを見学させてもらうというのはどうだろう。もちろん冷やかしはNGだが」

「ええ!?ダンディも興味あるのかよ!?」


 バンド内は恋愛禁止のはずだ。俺はダンディと適切な距離を保った。


「いや、個人的な興味は無いが、リョーマは一度それらを間近で見なければ実際の肌感が分からないはずだ。あくまで俺の予想に過ぎないが、今のお前はロジカルに考えすぎている」

「まあ、そうだな。俺も分かんねえことばっかだし。だけどアテはあるのか?」

「聖都は『ダスク・エヴァンジェル』にとっては庭のようなものだろう。聖職者にも少なくない同性愛者がいると話には聞く」

「絶対それ面白がって盛られた話だろ・・・」


 まあ、冷やかしに行くつもりはない。雰囲気を味わって、話を聞いて帰れればいいかなと思っている。


「空振りに終わってもいい。行ってみるか。そんなすぐにソウルメイトが見つかるとも思えないしな・・・」

「界隈の噂は俺が探っておこう」

「ああ、助かる」


 この後、『第七特殊迷宮攻略分隊』のみんなと合流して並んでダンジョンに入ったが、エナとはギクシャクしたままだった。








「待ちくたびれたぞ!」

「待ち時間30分ってとこか」


 我々『アーケイン・ナブラ』はダンジョンに入る最前列に到達してついに突入権を得た。

 入り口の階段を降り、操作盤のようなものにリリカが触れる。ここまではルルイエのダンジョンと変わりない。


「このあたりに活性と非活性を繰り返すダンジョンは無いからこのダンジョンもクリアされれば消滅するタイプかもな」

「じゃあ急がないとね・・・」


 あたしはお金を払ってまで順番を買ったボロゾが正しかったのではないかという認識に達しそうになったが踏みとどまった。一層への扉が開いたので潜る。


 “制限時間は1時間です。1層の目標。ワープゾーンに到達すること。”


「え、このダンジョン喋るの?」


 あたしの耳には機械音が聞こえたように感じた。


「そのようだな・・・このタイプは初めてだ」

「リリカ様はルルイエのダンジョンが初めてでございますから、アブ殿とそれほど経験の差はございませんよ」

「魔力量と知識は圧倒的だ!」

「はいはい、そこは勝てないから負けで良いです」


 周囲は曲がりくねった壁というか衝立みたいな障害物が多く視界が悪い。


「制限時間があるようなので速度アップをかけるぞ『スピードブースト』『エアリーウイング』『フローティングエッジ』」


 リリカがいつものお決まり移動魔法セットを唱える。


「浮かないな。どうやら浮遊は無効の様だ」


 あたしは『疾風のパラディドル』をかける。


「戦闘中は移動速度が元に戻っちゃうから気を付けてね」

「戦わずに逃げればよかろう」

「『ストラタムディテクト』やはりこの層は未攻略なので解析できませんね」


 グラントが解析に失敗する。


「敵が近くにいます。壁を挟んで反対側です。左壁沿いに進んでみましょう」


 ドオン!


 ロズホーンが魔法盾を壁に叩きつける。


「破壊不能なタイプだな」

「みんなちゃんとそういう抜け穴みたいなの最初は探すんだね・・・」

「当たり前だ。低層は敵が弱すぎて素材もショボイと相場が決まっておる。敵も無視して駆け抜けるぞ。さっき発見した敵も無視だ」

「え、でもこのまま進むと正面なんじゃ・・・」

「横をすり抜けろ」


 リリカはそう言うと前方に居たグレイウルフを跳び箱の要領で頭上から超えて先に進んでしまった。


「ま、待って!」


 あたしもリリカに頭を抑えつけられたのでリリカの方に気が行っているグレイウルフと横並びに並走しながら追いつこうとした。仲良く並走している風を装っていたが、グレイウルフはあたしの方を2度見し、襲い掛かってきた。


「うわっと!」


 あたしは体をねじり、噛みつき攻撃を避けてそのままリリカの方へ走って行った。攻撃で速度を下げてしまったグレイウルフはもう追いつけないと分かったのかすごすごと踵を返していった。


「お、あれがワープゾーンだな」


 我々6人全員がワープゾーンに乗る。視界がぐにゃりと曲がり、次のフロアへ到達する。


 “2層の目標。仲間外れの敵を倒せ。”


「なんだなんだ。間違い探しをしろというのか?」

「上等じゃない。こう見えてウォーリーを探すの得意だったんだから」


 通路から広場に出てみると、ゴブリンの群れが居た。ざっと30匹は居そうだ。


「えっとえっと、あの奥!右!1匹だけモヒカンの奴いる!」

「ん?どこだ・・・?分からんぞ・・・」


 リリカは目を細め遠くを探すがあたしの指を差している場所辺りには他にもゴブリンが居るのでどれか分からないらしい。


「キヒー!」

「ギャッギャッ!」


 近くのゴブリンが襲い掛かってきたのでロズホーンとバラックが叩き伏せる。


「ええい、だいたいあの辺という事が分かればこちらのものよ。『サンダーボール』!」


 リリカは電球のような浮遊物体を勢いよくモヒカンゴブリンの居るあたりに叩き込み、地面に触れた瞬間、その電球は範囲を拡大し、他のゴブリンを巻き込んでバチバチと音を立てながらゴブリンを感電死させた。


 “条件達成。次のフロアへ進みます”


「ほう、だんだんルールが飲み込めてきたぞ」


 “3層の目標。6つのスイッチを同時に押せ”


「まずはスイッチを探すぞ!『テレパス』『スピードブースト』」

「『疾風のパラディドル』」


『テレパス』は念話の魔法だ。いずれはこの魔法を覚えなきゃいけない。スイッチらしきものはすぐに見つかった。壁に張り付いた赤色のボタンだ。


「う~む、あれがスイッチだと思うが敵が邪魔だの」

「倒してしまいましょう」

「『シールドタックル』!」

「『リープエッジ』!」


 ロズホーンとバラックが苦も無く。ポイズンスパイダーとポイズンクロウラーを始末する。


「ではそこはアブが立っておれ」

「あたし?おっけー!」

「我々は他を探すぞ!」


 そう言うとみんなは見えなくなった。念話で声だけが聞こえる。


「2個目発見。敵は居ないぞ。俺が待機する」

「3つ目発見。ここはグラントへ譲る」

「4つ目発見だぜうぇーい」

「リベリアだ。5つ目のボタンの前で待機している」

「6つ目到着だ、せーので押すぞ。せーの!」

「あ、リリカ様サーセン!最初のせーので押しちまったっス」

「バラックか・・・まあ過ぎたことを言っても仕方がない」

「タイミングが合わなかったから恐らくもう一度押せるようになるまで待機だの」

「ん?」


 するとあたしの近くにモンスターの気配が。でかい猪が音を立てて迫ってくる。


「ワイルドボア来ちゃった!」

「アブ、言霊だ。燃費は考えるな。当てることを第一に考えろ」


 考えている時間はない。


「猪や 猛進転じて 生き急ぐ 無数の罠は 黄泉への切符」


 あたしは即座に短歌を詠んだ。即席なので出来は良くないが、縛りが評価されたのか、トラバサミで猪の動きが止まり、床は落とし穴になり、穴の中から槍で串刺しにされた挙句上から棘付きの鉄球が落ちてきてワイルドボアに止めを刺した。全ては5秒ほどの出来事だった。罠は消え、穴は塞がり、ズタボロになったワイルドボアの死体は床の上に押し出された。


「素材採ってる暇はないか」

「そんな安い素材など要らん。捨て置け」

「お、ボタンもう押せるみたいだぜ」

「次も2回目のせーので行くぞ。せーの」


 ポチ


 “条件達成。次のフロアへ進みます”


「よし4層だ」

「これ1時間耐久レースするのか・・・しんどい・・・」


 コツを掴んだ我々は60分で15層まで進み、時間切れで退出した。





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