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1 覚醒 (sideルシア)


「お、お嬢様がお目覚めに!!」

 侍女ビビのそんな叫び声が、とある日の朝響いた。

 いや、お目覚めって。毎日普通に起きてたよね? なんて思っていた私です。

 


 ごきげんよう。半年前に15歳になり、魔法が使えるようになったルシアです。

 いやぁ、驚いたのなんのって。誕生日の朝に足元に転がっている封印魔法具に目を丸めていたら、ビビが朝っぱらから屋敷中に響くくらい大声で「お嬢様が!」なんてを言うから。

 ビビの叫びに、すわルシアになにがあった!?と屋敷中の人間がすっ飛んできたんだもん、驚くなって方が難しいよ。

 私が封印魔法具を見せると、不安そうな顔が驚きと嬉しさに変って、屋敷中にお祝いムードが伝播していったほど。

 誕生日ってこともあって、元々お祝いをしようと準備をしてくれていたけれど、誕生日の他にも覚醒記念が加わって盛大に祝われました。

 そんな、賑やかで温かな毎日を送っている私ですが、今とにかく夢中なのが魔法剣術。

 元々体を動かすのが好きだったから、屋敷の護衛役の訓練に参加していたんだけど、魔法が使えるようになって、さらに好きになった感じ。

 だって斬るだけじゃないんだもん。

 今まで魔法認知訓練や魔法知識を増やしていった結果、光魔法を使える私は難なく「魔断(まだん)(つるぎ)」を習得しました! 

 ちなみに別名「破魔(はま)(つるぎ)」とも言うそうです。

 その名の通り、魔を絶つ剣で魔物を斬ると再生させないほか、そこを浄化していくようです。

 ごく最近のこと。家族で領地へ行った時、偶然魔物と遭遇し、思わず護衛達と一緒に参戦して魔物を斬ったら、切り口がキラキラ光って浄化されていったことで判明しました!

 魔物は再生能力が高く、普通に斬ってもすぐに再生するので、魔物退治には光属性加工された魔法石を組み込んだ剣でしか倒せないんだとか。

 ちなみに、普通の魔法石は採掘で採れるけど、光属性は自然発生しないので加工するしかなく、しかも光属性は人数が少ない上、加工された魔法石は教会が管理しているということで希少。

 ということで、よくラノベとかゲームで見るダンジョン冒険者は、この世界ではいないのですよ。

 魔物退治はその領地が所有している騎士団と、魔物退治専門のギルドがあって、そこに所属している人たちが、魔物退治の依頼を受けて駆除していくシステムになっているんだとか。

 魔物退治ギルドの仕事の内容は、増える魔物の間引き。

 それと、魔物も普通に街道に出るとかはなく、魔の森を中心に発生しているので、そこを通る人が護衛につけるくらい。

 ロマンがないな~なんて思っていたけれど、実際生活してみると、道端に魔物がいなくよかったと心底思う。

 あんなものがホイホイ出るなんて、想像しただけでも背筋が震えるから。

 

「ルシア、現実逃避から帰ってきなさい」


 義父様の呼びかけに、思考の底から現実に引き戻され、私はムスッと頬を膨らませた。

 家族が揃うリビングは、いつもなら賑やかで楽しい空間なのに、今に限っては少し重い空気が漂っている。私だけじゃなく、義姉のフリージアも表情は硬い。

 それもそのはず、今年の建国祭に私たちの「聖女候補のお披露目」が決定されたと聞かされたから。

 昨年、王が代替わりしたので今年の建国祭は、大規模なものになるらしいとは初めは聞かされていた。

 でも今回はそれだけじゃなく、私の力が解放されたこともあって、お披露目も兼ねてしまおうということになったという。

 はっきりいって、気に入らないのだ。私もフリージアも。

 なにせ中央の空気は既に聖女(・・・・)が決定した(・・・・)といった雰囲気がある。

 ガーナ子爵家の養女になったという少女が頭角を現し、教会の試練を受ける前に聖女とみなされているからだ。

 まだ正式じゃないとはいえ、既に聖女が決まっているのにお披露目するなんて、ただの王家の見栄だ。

 候補者の私たちからすれば、見せしめの場だ。

 争わずして決したことで、貴族の衆目の的になることは確実で、そうなればあることないこと面白く囁かれるに決まっている。それにゲームにもそんな場面はなかった。

 そんな最悪な場所に誰が好き好んで行きたいというんだろうか。

 無言を貫く私たちに、義母様は困ったように眉を下げ言った。


「決まったことは仕方がないのだから、腹を決め参加しなさい。

大丈夫よ。誰が何を言おうと、あなた達二人は私たちの自慢の娘なのだから。

周りの人間に、それがどうしたと堂々とした姿を見せなさい。そうすれば、誰も中傷なんてしてこないわ。今まで頑張って来たことは、無駄じゃないのだから」

「そうだね。常に胸を張って微笑んでいれば、余裕を持っているように見えるから、面白おかしく言う輩は少ないだろう」


 義母様の言葉に続き、義父様も頷く。

 年をとっても可愛らしい義母様と、凛々しく精悍な義父様は、私たちの憧れであり自慢の両親だ。

 その二人が胸を張って行って来いと励ましてくれ、私は渋々頷き了承した。

 二人が言うから行くんだから。王家の見栄のために行くんじゃないんだからと呟きながら。

 フリージアも同じ思いなのだろう。

 頷くと「黙らせてまいります」となんだか不穏なことを言っていた。





 

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