第7話 気持ち
「美蘭ちゃんって隆二くんのこと好きでしょ。」
私はこう言われた瞬間何も言えなかった。
同時にすぐに否定の言葉が咄嗟に浮かんできてそのまま口に出した。
「いやいやいや、なんで…」
「だって、あれだけ乙女の顔で見つめてたら分かるよ。それとも違った?」
「う、うう…。そ、そうだよ、好きだよ、悪い?」
「ううん。全然。むしろまだ付き合ってる訳じゃなかったんだって思ってさ。いっその事告白しなよー。」
「え!無理無理無理!」
「だって好きなんでしょ?告白したいとかないの?」
「あ、あるけどさ…。」
私は俯いて自信なさげに言った。
「だって怖いんだもん。私なんか好かれてるわけないし…。」
「何言ってるの!可愛いよ。大丈夫だって、このままだと一緒進歩しないよ?美蘭ちゃんはこのままでいいの?」
「嫌だ…けど…。」
「じゃあさ、今日告白してみなよ。いい雰囲気の時にさ。最悪明後日の休みの日でもいいしさ。ね?」
「う…うん、分かった。が、頑張ってみる。」
「そそ、その調子だよ!」
菜優ちゃんに背中を押された気分だった。
この日私は1つの戦いを終わらせる事を決意した。この感情をあの人に伝えなくちゃ。
私は表に戻ると、隆二くんがぼーっとしていた。
「隆二くん?話し終わったけど。」
話しかけてもまだぼーっとしていた。
「ねぇねぇ。隆二くんっばー。」
体を揺らしながらすこし大きめな声で呼ぶとやって気づいてくれた。
「あ、美蘭ちゃん。話は終わった?」
「う、うん。ついさっきね。あの…さ、今日の帰りに話したいことがあるんだけど、時間あるかな…。」
「う、うーん、電車の待ち時間とかは暇だと思うけど、そういうことじゃない?」
「あー。その時間でいいよ、うん。」
隆二くんと話しているうちに、菜優ちゃんが着替えて表に出てきた。
「よーし、じゃあ2人とも。あとひと踏ん張りがんばりましょ。」
と菜優ちゃんは私たちの肩をぽんと叩いてた。
菜優ちゃんが来た時の店の回りは早くて、4時になる前と比べると時間が早く感じる。
気づいた時にはもう時間はバイトの終わりの時間を過ぎていて、久瑠美さんに「まだ上がらないの?」と声をかけられた。
私たちは急いで更衣室に行き着替えて店を出た。
そこから走って駅に行ったのだけれど、昨日に乗った電車には間に合わなくて20分位電車を待つことになった。
駅のホームにある椅子に座ってひと休憩しているうちに私は緊張して話し出せなかった。
「で、美蘭ちゃん。話って何?」
隆二くんから聞いてきた。内心言うことが定まらずあたふたしてしまい、にもはもないことを口にしてしまう。
「え、えっと、その。う、うーんと。」
流石に動揺し過ぎな気がした。でもその位私にとっては大事なこと。
「や、やっぱり今度の休みでいいかな…?」
「あー、水曜日ね。いいよ。」
「あ、ありがとう。」
先延ばしにするほど緊張するなんて分かってることなのに、どうしても後一歩が出ない。
そんな気持ちでシーンと電車を待っていた。
そんな中隆二くんが口を開いた。
「それじゃあさ、また水曜日どこか言ってから話す?」
「あ、それいいかも!そうしたいな。」
「りょーかい。じゃあ、水曜日は空けておくね。」
「うん。お願いね。」
少し雰囲気が和らいだところで電車が来た。時間が時間なのか人が混んでおり、キツかった。そこでも隆二くんは優しくて私をこの前みたいに守ってくれた。
あぁ…。好きだな。この気持ち気づいてくれないかな…。
そんな雰囲気の中電車はその雰囲気を無視するように進んでゆく。
駅に着くと、やっぱり外はもう真っ暗で隆二くんとの雰囲気もまさにそんな感じだった。
そのまま家に帰ってもやもやしたままその日はゆっくり休んだ。
日は少し進み水曜日。
今日は隆二くんとの2回目のお出かけ。
昨日バイトに行った時に菜優ちゃんに「昨日は上手く言えたの?」て聞かれたんだけど、私が黙って俯いてたから何かを察したみたいに「そっか…。じゃあ明日頑張りなよ!」と言ってくれた。
今日は午前8時には朝ごはんを済ませて、今現在午前8時半では服装で迷ってる。
9時には隆二くんが来るからそれまでに服を選ばないと。
私は今回は隆二くんが来る前に家の前に出てようと8時50分には家の玄関を出た。
するともう隆二くんは外にいた。
「りゅ、隆二くん!?早くない!?」
「え、僕この時間にはここに居るよ〜。」
「え。私これでも早く来たつもりだったんだけどな。」
「うーん、なんか女の子を待たすのは違うかなって。それじゃ、行こっか。」
隆二くんは私の手を引きゆっくりと歩き出す。私はその歩くペースに合わせるように歩き出した。なんかつい前のお出かけを思い出すなぁ。
初めに隆二くんが連れていってくれたところは…。
電車に乗っていると観覧車が見えてきた。その時に隆二くんが
「次降りるからね。着いてきてよ?」
と言ったので返事をしてから少し身構えていた。何故かって?人が多いから…。
駅を降りて道を歩いて行くとそこは…。
「着いたよ美蘭ちゃん。」
「ん?水の泡水族館?」
「うん、そうだよ。水族館。ダメかな?」
「え、ううん!いいよ!」
明らかに遊園地に行くと踏んでいた私はびっくりした。
中に入るとまずその部屋は暗くて、水の上から光が差し込んで居る部屋だった。
「なんか幻想的だね。」
「そうだな。言葉では言い表しにくいけど、それくらい綺麗だよな。」
「そうだね。」
水面から光が入って来るのが見えるその部屋は綺麗だった。もちろん水槽の中にいる魚も可愛かったけれど。
少し歩いて回っていると時間が経つのは結構早くて11時ももうすぐ終わるところだった。
「隆二くん、そろそろ何か食べない?」
「そうだな。じゃあ、あそこ行こっか。」
と隆二くんが連れて行ってくれたのは、海鮮丼がメインのお店だった。
この時のお金は隆二くんが払うと聞かなくておまかせした。
ご飯を食べたすぐにイルカショーが1時半からあるのを思い出した。
「隆二くん!イルカショー見に行こ!」
「いいよ。めっちゃ元気になるやん(笑)」
「だって、イルカ可愛いんだもん。」
私はイルカが大好きだからテンションが上がった。
イルカショーに行くとほぼ満席だった。
少しだけ空いてるところを見つけて2人で座った。
イルカが飛んだり、餌を食べたり、水槽の中を泳いだり、とにかく可愛くて可愛くて可愛かった。
途中でイルカが跳ねる時があって、前の方にいた私たちは軽く濡れた。
「ちょっと濡れちゃったね。」
「まあ、今の季節だったらこのくらいすぐ乾くと思うから大丈夫だと思うよ。」
「そ、そうだね。」
と軽い話題で楽しく話せた気がする。
イルカショーが終わった時間は2時15分位だった。少し寂しい気持ちもあり、これから話すことへの緊張もあった。
「隆二くん、今度は私の行きたいところ行ってもいい?」
「もちろんいいよ。どこ行くの?」
「少し遠いけど海の方に言って砂浜を歩きたい。」
というわけで私達はまた電車にのり、2時間くらいかけて場所を移動した。
砂浜に着くと4時半を過ぎていた。
「ね、隆二くん。夕日綺麗だね。」
「ああ。綺麗だな。海に夕日が反射していて丸で海が大きくて綺麗な鏡みたいだ。」
「夕日が見られる時間と海に来る時間がちょうど重なって良かったね。」
と少し余談を話しながら少しずつ緊張感が露になってくる。
「りゅ、隆二くん。話があるんだけど。」
「うん。どうしたの?」
「えっと、その。…、す…。だめ、やっぱりダメだ!」
私は隆二くんに背を向けて走り出した。そう、その場から立ち去ろうと逃げてしまった。
(ガシッ)
と隆二くんは追いかけてきて私の腕を掴む。
「美蘭ちゃん、どうしたのさ。最近おかしいよ?」
と言われて私は、気づいた時には目から涙が出てきた。
「私…、だって私は2回目性転換したおかしな子で、それでも隆二くんは私を見捨てなくて…、優しくて…だから私は…。」
泣きながら少しずつ話していた。
「だから私は…隆二くんが好きです。」
遂に言ってしまった。断られるそう思ってずっと言えなかった言葉。でも返って来た言葉は…。
「美蘭ちゃん、泣くほど辛かったんだね。もっと僕から早く言っていれば良かったよ…。僕も美蘭ちゃんが好きだよ。」
泣いていた涙以上の量の涙が溢れ出てきた。
「ほ…ほんと…に?わ、私で…いいの…?」
「もちろん。美蘭ちゃん大好きだよ。」
私は隆二くんに抱きついた。そして、ワンワン泣いていた。泣き止むまでずっと。泣き止んでから切り替えて、もう1回言葉を発す。
「じゃあ、私たち付き合うってことでいいんだよね?」
「美蘭ちゃんさえ良ければ、もちろん。」
私は今度は嬉しさのあまり隆二くんに飛びついた。そしてまた、水滴ほどの涙が出てきた。本当に嬉しかった。
そうこの日、私達は恋人となった。




