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それでは恋を始めましょう。  作者: 紫野 月
12/22

12 佐藤洸太

結花の弟君登場。

 最近、姉ちゃんの様子がオカシイ。

 今までオシャレに全く興味の無かった姉ちゃんが、大学に行くのに完璧にメイクして可愛い服を着て行く。

 今まで勉強一筋で参考書しか買ってこなかったのに、なんかファッション雑誌を愛読している。

 些細なことで喧嘩になった時、今までならプロレスの絞め業をかけてきたのにそれもない。というか喧嘩しなくなった。いや違う。姉ちゃんが家にあまりいないから喧嘩の仕様が無いんだ。

 この頃は平日はモチロン土日もよく出かける。帰ってくるのは大体門限ギリだ。それどころか時々遅れて父さんにこっぴどく叱られている。

 珍しく家にいる時は母さんに付きまとって、今までなら面倒くさがってしてなかった家事を手伝ってる。まあ色々失敗していっつも叱られてるけどな(笑)



 俺が姉ちゃんの豹変振りを不思議がっていると、母さんは玄米茶をススリながら何気なく言った。

「彼氏が出来たね。あれは…」

「カレシ? …姉ちゃんに? そんな馬鹿な!」

 姉ちゃんは中学2年の時、突然『私はK大を目指す!』と宣言し勉強に集中した。それ以外のモノは目に入ってないんじゃないかと思うほど一心不乱で、偏差値が足りないから無理だといわれていた県下で有数の進学校に合格したうえ特進クラスに入った。大学に通い始めても勉強一筋だったあの姉ちゃんが…?

「大好きなお姉ちゃんに彼氏が出来てショックなんでしょ、洸ちゃん」

 母さんの一言に俺はうろたえる。

「洸ちゃんもシスコンを卒業して彼女を作っちゃいなさいよ」

 誰がシスコンだ! 失礼な。

「ああ、受験生の洸ちゃんは彼女を作ってる場合じゃないか」

 ちっ、嫌な事を思い出させる。

「まあ洸ちゃんは受験生だろうとなかろうと、彼女を作る甲斐性はないか」

 ムカッ!!

 これ以上母さんの話に付き合ってられないと、俺は自分の部屋に非難した。

 

 姉ちゃんに彼氏。確かにビックリだがショックと言うほどじゃない。

 断じて、俺はシスコンじゃないし。

 ただ、俺より四つも年上のクセに姉ちゃんはどこか抜けてて、おまけに世間知らずだ。昔から『姉ちゃんは俺が守る!』なんて思ってたしな。

 もし相手の野郎が相応しくない男だったら、俺が二人の仲をぶっ壊してやる。

 まずはどんな奴か見てみなければ。




 その機会は案外早くやってきた。

 母さんが姉ちゃんに単刀直入に言ったのだ。

「毎回、門限の延長をするのに嘘の理由を考えるのは手間でしょ。相手の人を連れて来なさいよ。それとも紹介出来ないような人と付き合ってるの?」

 ということで、姉ちゃんの彼氏が家に挨拶しにやって来た。

 そいつは非の打ち所の無い最高級品な男だった。

『どうして貴方様のような御方が姉と付き合っていらっしゃるのでしょうか?』と、怪しげな敬語で話しかけなきゃいけないような雰囲気を持っていた(実際には一言もしゃべれなかったけどな)

 そいつが家にいたのは一時間程度。奴が玄関から出て行って、やっと俺、父さん、母さんは肩の力を抜くことが出来た。なんだか俺達の方が面接を受けていたような気分だ。


 俺:「なんか、スゴイ人だった」

 父:「ああ。そうだな」

 母:「世の中にはあんな人が本当にいるんだねぇ」

 父:「そうだな。いるんだな」

 母:「もしも、このまま旨くいって“結婚したいの”なんて言い出したらどうします? お父さん」

 父:「天地がひっくり返ってもそれはないだろう」

 俺:「今の世の中、信じられない事が起こるけどな」

 母:「そうね。結花の彼氏がアノ西園寺一族の御子息なんて… もう、すでに、天地がひっくり返ってる気がする」

 俺:「なんだよ、その西園寺一族って?」

 

 それから俺は、父さんと母さんから西園寺一族について説明を受けるハメになった。

 室町あたりから続く名門でこのあたりの名士。地位、名誉、富、それら全てを手にしている雲の上の存在。

 あの男西園寺貴文はその一族の分家の筆頭、東の西園寺の跡取り息子らしい。

「なんでそんなに詳しいの?」

 俺の疑問に返ってきた答えに驚いた。

「何言ってるの洸ちゃん。お父さんが勤めている銀行は西園寺の持ち物なのよ」

 銀行を傘下に持つというのはきっと途轍もない金持ちなんだろう。中学生の俺でもなんとなく理解した。


 俺:「ところで、姉ちゃんは彼氏がそんなスゴイ一族の人だって知ってるのかな?」

 母:「知らないんじゃない。多分」

 俺:「知ってたら、絶対付き合ってないよな… ていうか、知ったらビックリし過ぎて倒れるかも」

 父:「とにかく、今は静かに見守ろう」

 母:「だね」

 俺:「だな」

 あいつの持つ上流階級オーラに緊張し心身ともに疲れ果てた俺達は、その後無言で茶を飲み続けた。




 土曜日の朝。

 少し寝坊して遅めの朝食を取っている俺の側で、姉ちゃんが楽しそうにデートに行く準備をしている。

 あいつと一緒にいられるのが心底嬉しいようだ。

 そんな姉ちゃんを見ていて俺は複雑な気分になる。

 いつか姉ちゃんはあいつの正体(大袈裟?)を知るだろう。そしたら姉ちゃんはスゴク悩むと思う。あいつを好きな分だけ、受けるダメージも大きくなる。

 その時は俺が姉ちゃんを支える。

 やっぱり姉ちゃんを守れるのは俺しかいない!

 そう固く心に誓った。

彼は今中3で受験生。

大抵の男の子は難しいお年頃で、家族とほとんど口をきかない時期だよね。

それなのにお姉ちゃんのコトになると一生懸命って… やっぱり彼は重度のシスコン?

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