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きづいてしまった。

それから何度かまたループをした。あの時以後、制御のきかない光と、それによって引き起こされた頭痛には襲われていない。ただ、アカリに心配され、死んではいるが。


 目が覚めた。今回は長机の上に寝そべっている状態だった。

 おれの精神状態は限界が近かった。終わりの見えない無限ループに疲れ切っていた。

 またコウににやつきながら見られてるし、はっきり言って、ダサイ体勢で目覚めたが、その事は気にしない。

「目覚めたかい、ユウキ」

 コウに声をかけられたが、軽くあしらって、長机から下り、適当な椅子に座る。

 もうこんな無限ループはごめんだ。他人の心理の動きが自分の生死に関わるなんて、やりきれないだろ。どうしたらこの無限ループを抜け出せる。どうしたら終わりを迎えられる。考えろ。考えろ。

 両肘を長机に置き、両手を組んで、それに額を乗せる。

 この無限ループはこの部屋の中で起こっている。一番手っ取り早くこのループから抜け出すには、この部屋から脱出すればいい。でも、ドアが開かないことは最初に確認して、それ以降も、開けることはできなかった。窓から外に出ることも考えた。これもだめだ。窓から見える景色から言って三階以上の高さがある。窓から脱出を図っても、飛び降り自殺になるだけだ。脱出できても、生きていなければ意味がない。

 いままで何度同じことを考えて来ただろうか、答えを全く見いだせないことに、いら立ちが募る。

 おーい、ユウキ、とかけられた軽い声に、いら立ちが爆発してしまった。

「おい、てめえ、お前はなんで死なないんだよ! おれは何度死んだと思ってる!?」

 九回だね、という冷静な返答が、余計、火に油を注ぐことになった。おれは椅子をひっくり返して、コウの胸倉をつかんでいた。

「この世界はなんなんだ! 生死の境目? 構造の大きな世界? 意味がわからないんだよ! 早く元の世界におれを戻せ!」

 暴力はいけないよ、とコウは強引に胸倉を掴んだおれの手を払った。その力はすざましかった。

 その力に驚き、コウの顔をみる。コウがコウではなくなった。目の焦点があっていない。いつも笑っていた表情も、いっさいなくなった。

「この世界の存在意義が君にはわからないのかい。そもそも、この世界は何なのか、君には本当にわからないのかい?」

 コウは無表情のまま、こっちを見ている。いや、焦点があっていない目で、おれを確り捉えられているのか? 

「どうせ、夢だろ! これはおれの見ている夢だ! ただの悪夢だ!」

「そうだよ、ユウキ。わかってるじゃないか。でもね、この夢は脳内の記憶整理のための夢とは違うんだよ。第一、君には記憶がないじゃないか」

 コウは何かに取り憑かれたかのように、ふらふらと歩きだした。

「この夢はね。君自身が望んで見ている夢なんだよ。そんなこと言っても今の君にはわからないだろうけどね。それにね、別にこの世界が、君の夢とわかったところで、どうしようもないんだよ」

 長机を挟んで反対側にいたコウが、一歩、また一歩とおれに近づいてくる。

「ど、どうゆうことだ」

「君はどうやって夢から覚めるんだい? 目覚ましなんかは君をこの夢から呼び戻してはくれないよ?」

 ついにコウはおれの目の前まで来た。ゆらゆらと体をゆらし、焦点のあってない目はおれの顔の方を向いている。あまりの不気味さに、身体が言うことを聞かない。

「君は、また大切な事を忘れているね。君はなにか平沢朱里にやらなければ、しなければいけないことがあったんじゃないのかい? それを思い出す努力をせずに、この夢から抜け出すことばかり考えていた」

「そんなこといっても、おれは、あいつのせいで何度も死ぬはめに……死なないためには……」

「なあ、ユウキ。君が心臓麻痺になるきっかけは平沢朱里がどうしたときだった?」

 それは……、と呟くが、コウの言葉がそれを打ち消す。

「全部、君を心配したときだったよね。つまり、君は平沢朱里に心配させてはいけなかったんだ。君は平沢朱里の名前はないに等しい記憶のなかにもあった。元の世界で、君と平沢朱里との間でなにかあったんじゃないか?」

 おれとアカリの間に何があったのか、これを思い出せば……!

「ここまで言えば全部わかるよね。これが最後のチャンスだよ。……でも、遅かったみたいだ」

 その一言に、おれの中で絶望感が芽生える。

「関くん、仲村くんに言われて来たんだけど、どうしたの?」

 アカリだ。

タイムリミットだった。絶望感がどんどん大きくなる、おれすべてを飲み込んでしまうほどに。

 まだ何も思い出せていない。おれとアカリのことを何も。

 涙がこぼれた。

それを見てアカリが駆け寄ってきた。



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